軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

318話 愚図ったときは飴ちゃんを渡そう

リーンを囲んでいる魔族たちは、泣き出しはしなかった。よかった。

「そんなことはない、きっと立派な理由があるはずなのだ。人間の言うことなど信じるな。魔王様への謁見を取り付けよう。きっと、理由を教えてくださる」

そう言いながら心配そうな顔をしてリーンを必死に慰めているのを見て、私はうなずいた。

うん、やっぱり甘やかし甘やかされてるぞー!

慰める美形魔族たちと、泣きじゃくる美形リーン。を、撮影した。

「スカーレット嬢に送ろうっと。きっと興奮するぞー」

私が独り言を言ったらソードが私を見た。

「え? なんで?」

ソードが聞いてきちゃったぞ? ……しかたない、教えてやるか。

「スカーレット嬢は、そういう性癖なのだ。男と男が睦み合う話が好きなのだ。特に美形だと思わしき男性同士が仲睦まじいのはとっても喜ぶはずだ。これをおかずにご飯三杯は食べられるはずだ」

「げ」

ソード、がく然。

そんなソードを尻目に、私はスカーレット嬢に送った。

『魔王国ナウ 話してたら泣いちゃった魔族と、それを慰める魔族たちの図』

スカーレット嬢、即レス。

『尊いーーーー! 尊すぎるーーーー!』

ソードが私のタブレットをのぞき込んで読み、眉根を寄せ顔を上げて困惑した。

「意味がわからねーんだけど」

「とっても好みの写真です、という意味だな」

スカーレット嬢へのイメージがガラガラと崩れているソードと、魔王様に会えるのでワクワクしている私と、泣きやませるため渡したペロペロキャンデーをペロペロなめているリーンとで魔王様への謁見待ち。

泣きやんだリーンを横目に見て、私は言った。

「子どもが愚図ったら飴を与えるのはどこでも共通だな!」

「お前が作ったお菓子で泣きやまないやつはいねーよ。それに、共通も何も普通に売ってねーから。ベンの店で高値で売ってるだけしか存在してねーだろうがよ。そんなん受け取って泣きやまないワケねーよ」

ソードが呆れたように言う。……そういえばそうだったな。

私は、いじけながらペロペロしているリーンをなでた。

「もう泣くな。誰がどう利用しようともいいじゃないか。お前が選んだ選択だろう? 人間を滅ぼそうとお前が決めたのなら、他の連中がどんな理由であろうとも滅ぼせばいいだろうが。泣いたって変わらないぞ?」

リーンが小さくうなずく。そして、小さくつぶやいた。

「……俺は、絶対に人間に勝てない。こんな強い生物に勝てる魔族などいない。滅ぼせるわけが無かった」

とか言ってるんですけど……。まだ戦っていないのに、強さなんてわからないじゃないか。

「まぁ、確かに私は強いが、お前が強いか弱いかはわからない。戦ってみてから考えてもいいんじゃないか? ソードは魔族と互角だったらしいし、そのソードと私は互角のはずだから、お前も強いかも知れないぞ?」

私の言葉にリーンが首を振った。

「……先代の勇者は、歴代随一の強さと謳われていて、ドラゴンのテイマーだったのだ。だから、砂漠越えも容易だったし、一気に攻められた。でも、普通の勇者は砂漠は越えられないし、私も先代ほど強くない」

むぅううう~。そんなこと言われると、先代の魔族勇者とやらが気になってくるじゃないか。

「……先代勇者は戻ってきてるのか? ちょっと戦ってみたい」

リーンは私の問いに首を横に振って答えた。

「てっきり人間に倒されたのかと思っていた。……それでなくても、勇者の寿命は短いのだ。力が強ければ強いほど寿命は短い」

あらら。それはかわいそう。

じゃあ、もう死んでいるかもしれないのか。

それに、また王都を攻めてきていないということは、もう攻める気はないし短い余生をゆったり過ごしたいと考えてもおかしくはないな。

私は腕を組んで鼻から息を吐く。

「ふーむ、そうか。ではきっと、そのテイムしているかわいいドラゴンと一緒に短い余生を閑雅に過ごしているのかもしれないな。なるほど、その気持ちはわかるぞ。私もソードが死んだらこの星を滅ぼした後に浮島でリョークたちと一緒に余生を閑雅に過ごす予定だからな!」

リーンが私を見て、目をパチクリさせた。

「……この星を滅ぼす、と言ったか? 魔王国だけではなく、星を滅ぼす気、なのか?」

リーンに向かって私はうなずいた。

「私はこの星に住む人間が大嫌いなのだ! なぜこの星に生まれてきたのかと後悔するほどにな! 死んだ後、またこの星に転生したら嫌なのだ。そうならないためにはこの星を滅ぼすしかないだろう? 禁呪の大魔術で生き物を根絶やしにする予定だな! いたい!」

ソードに拳固をもらった。

「リーンが本気にするだろうが」

何を言う。私は本気だ。

むぅ、と口をとがらせて言い連ねようとしたが、ソードはリーンに軽く手を振って言った。

「コイツ、口じゃこんなこと言ってるけどぜったいに無理無理。屋敷で慕ってくるメイドすら突き放せないで言いなりになってるレベルのお人よしなんだ。――インドラ。お前、屋敷にいるかわいいエルフとドワーフを、禁呪の大魔術で滅ぼすとか出来るのか? 屋敷で飼ってるチャージカウの黒太やアサシンスパイダーの式部たちを滅ぼせるのか?」

う。ソードにそんなことを言われてしまい、私はたじろいだ。