作品タイトル不明
256話 続 屋台の準備をしよう 再
揚げ骨せんべいは、賄いとソードのツマミにすることにする。
量がなかった。
揚げ豆は、フリッターのような感じで、シードルで味付けかつ軽い食感を目指す。
「エールかシードルを入れると軽い味わいになるが、なければないでいい。……そうだな、ただ、こういう食べられる海藻があるだろう?」
子供たちが顔をしかめた。
好きじゃないらしい。
「うん? 好きじゃないって顔をしているな」
「……だって、そればっかり出てくるんだもん」
「だが、海藻は身体に良いものなのでなるべく食べなさい。で、だ。これを、細かく砕く。あと、こういう小魚の干した物、これも砕く」
石臼を作ってゴリゴリやらせた。
「これを粉に混ぜて豆に絡めて油で煮るのだ。なるべくいじらないようにな。くっついてしまうから」
子供たちがいつの間にやらジーッと見ている。
いや、聖女と高飛車男もジーッと見ているぞ。
「色づいたら、揺する。最初は軽くな。……あぁ、言い忘れていたが、常に弱い火でやるのがコツだ。燃え盛る炎は強すぎる。時間がかかるだろうが、失敗しにくいのは、弱い火で、ゆっくりと作るのだ」
「ふーん……」
少年が感心したようにうなった。
「興味があるか?」
うなずく。
「……どうしてこんなに簡単に料理を教えてくれるの?」
「お前たちが弱く小さいからだな。まぁ、大人にも教えたことがあるが。弱く小さい者は、私がこれを教えたところで私の利益の妨げにならないからな」
「ふーん……そうなんだー」
わかっていなさそう。
ではなく、わかっていないね。断定。
「……でも、他のお店の人は、怒ったりするよ?」
「それは、人それぞれだろう。私には私の考えがあり、お前にはお前の考えがあり、お前を怒った人にはその人の考えがある。人が違えば立場も違う。それは当たり前だ。怒られたら素直に謝れ。特に、職人や商人はそれで食ってるのだから、技術を盗まれたら下手すると死ぬことになる」
「えっそうなんだ!? わかった、ちゃんと謝る!」
そこまでだと思っていなかったらしく、子供たちが慌てた。
ソードが呆れた。
「お前……脅すなよ。そこまででもないだろう?」
「この世界は詳しくないがな、アマト氏に聞いてみろ。アマト氏がいた世界は、技術は〝特許〟という法で守られているが、それでも盗みや真似が後を絶たないし、借金をしてまで新技術を開発したのに盗まれ出し抜かれて借金を返せず一家で自殺、とかもあるぞ」
「あ、そうなの……」
真顔で伝えたら、ソードがシュンとしてしまった。
「この世界は、技術で切磋琢磨していないからそこまで発展しない。……がな? 例えば子供にこの料理を教える。子供たちはこの料理を覚え、努力し、より安価な材料且つ良い料理に変えて屋台で売り出す。新技術で作りだした料理だ、あっという間に話題をさらい、爆発的に売れ、孤児院あるいは教会のもうけの要となる。
ところが目を付けた商人もしくは店の者がその技術を盗む、もしくは子供たちから聞き出し、金を掛けてより良い材料をそろえ、あるいはコネを使いさらに安価で材料を仕入れて作って売り出す。商売慣れしてる者の方が売り出し方を知っているだろうからな、あっと言う間にそちらが人気をさらう。そうなると当然、子供たちの作って売っているものが売れなくなる。その金を当てにしていたのに売り上げが出なくなり、困窮する。こういう図式は簡単に描けるぞ」
私の説明を聞いたソード、子供たちの肩に手を置いて、
「いいか、ここで習ったものは、簡単に教えるなよ? その、怒った店の連中がなんで怒ったか、身を以て知ることになるからな。絶対教えるなよ?」
真剣に諭しているよ。
例えだ、例え。
でも、子供たちも怖くなったのか真剣にうなずいた。
説教を続ける。
「技術というものを軽く考えすぎだ。私が教えてるのは、『初心者用』、この程度なら真似されても痛くもかゆくもない程度の入り口だ。私が天才で大魔術師の大魔導師であるから、この上はまねできないだろうと教えてるのだ。トイレにしろ、私の編み出す技術は表面だけまねてもダメなのだ。その先があってこその入り口だ。だからこそ簡単に教えているのであって、そうでなければ誰が無料で教えるか。これでも私だって試行錯誤しているし、金や時間を掛けて研究しているのだ」
シーン。
わかったようなわかっていないような子供たち。
「つまり、私の強さも、この料理も、努力の成果なのだ。私は、あの子くらいの小さな頃から誰よりも早く起きて剣を振り、トレーニングをし、魔術とは何かもわからず魔術の訓練を続けた。料理も、料理人に頼み、試行錯誤し研究し失敗してもなお挑戦し続けた。食材の味を知り、それをどう組み合わせ、どう作り出すかを研究していたのだ。現状に甘えず悲観せず、鍛錬をしなさい。私もそれなりに悲惨な幼少時代だったが、鍛錬したからこそ今、ここでこうしているのだ」
「「「「「はーい!」」」」」
元気よく返事された。
鍛錬するのはわかったのね。