作品タイトル不明
163:一日遊び明かした
眠りから覚めたリゼルは、ぼんやりとした思考で枕へと顔を埋める。
恐らく時間はいつもに比べれば早めだろう。まだ眠いが、起きれそうな気もした。
どうしようかと悩みながらサラサラの枕へと擦り寄ると、ふといつもと感触が違う事に気付く。薄めで、少し硬め。しかし寝心地が悪いという事はなく、もそりと頭を持ち上げた。
「……」
薄っすらと目を開いて枕を見下ろし、うとうとと数秒。
シーツへ向かって流れる髪に視界を遮られながらも窓の方へと視線を動かせば、そちらにあるのは空いたベッドが一つと少し離れた場所にある扉。自分がどちらを向いて寝ていたのか一瞬分からなくなりながらも、ようやく覚醒してきた思考が正しい答えに辿り着いた。
「(サルス、だ)」
昨日の夕方、というよりは夜の直前。
無事に門が閉まる前にサルスへと辿り着いたのだった。入国するのに、不本意ながらいつも通りの誤解を抱かれて多少足止めがあったものの、無事に足を踏み入れる事が出来た。
その時にはすっかりと辺りが暗くなっており、ならばと宿に直行したので観光は全く出来ていない。
「ん……」
上体を起こし、顔を覆う髪を耳へとかける。
周りを見渡し、いつもの習慣で降りようとした足をベッドの逆へ。立ち上がり、小さく身震いした。サルスの朝は肌寒い。
リゼルは早く着替えてしまおうと手早く身支度を整え始めた。
「(二人は……出かけたのかな)」
借りているのは三人部屋。
一人部屋の方が楽とはいえ、三人部屋を忌避している訳でもない。案内された部屋を三人は特に何を思うでもなく受け入れた。もう互いに、共に過ごして気が休まらないという仲でもなければ、受け入れた他者をいちいち気にする質でもないのだから。
王都で過ごす普段着に、少し考えて薄手の上着を羽織って部屋を出る。部屋は階段から遠い方、他の客が泊まっているだろう部屋の扉を通り過ぎて階段へ。
「あら、早いのねぇ。おはよう」
「お早うございます、お婆様」
刻まれた皺を深め、優しい顔で笑う老婦人へとリゼルは微笑んだ。
彼女こそこの宿の女将。そして 王都(パルテダ) の女将の実母でもある。その伝手で宿を紹介され、話を通してくれていたお陰で昨晩もスムーズに宿を借りる事が出来たのだ。
「朝食にしましょうか。昨日は軽く食べただけだもの、お腹が空いたでしょう?」
「是非お願いします」
「すぐに用意するわね」
可笑しげに目を細めたリゼルに、彼女は肩で切りそろえられた少し癖のある白髪を揺らして笑う。年相応に少しだけ曲がった腰と華奢な体、しかしこちらに背を向けて去っていく足取りは老いを感じさせない。
不思議とその後ろ姿は王都の女将に似ていて、やはり親子だなとリゼルは口元を綻ばせながら食堂の扉を開けた。
昨晩は色々と疲れていたので軽食で済ませた為、あまりしっかりとは見なかったが小さな食堂だ。この宿は客室は二つ、それに合わせてテーブルも二つだけ。
しかし大きな窓が閉塞感を抱かせず、不思議と落ち着くような空間だった。部屋の隅に今は使われていない暖炉を見付け、冬は随分と冷え込むのかもしれないと何となくその傍の窓際に座る。
そして、実は先程から気になっていた窓の外。中庭らしい場所を見下ろした。ちなみにここは二階だ。
「ハッハァ! あの時のガキが期待通りの成長しやがって‼」
「弱くなったな、クソ爺」
「いや強ッ、ジジィ普通に強っっよ‼」
剣を振り回すいかにも歴戦といった隻腕のご老輩と戦う愛すべきパーティメンバーの姿。
互いに本気ではないのだろう。ジルとイレヴンも受け止められる速度でしか剣を振るっていない。それでも二人を相手にし続け、酷く楽しそうに笑って長剣を振るう老輩は何者なのか。
「朝から元気ねぇ」
「ご主人ですか?」
「あらあら、紹介していなかったわね。そうなの、年寄りなのに元気でしょう?」
くすくすと、控えめに笑う老婦人が持っていたトレーをリゼルの前に置いた。
肌寒い朝に嬉しい温かなポタージュ、豆の練り込まれたパン、酢漬けにされた魚とタマネギのマリネ。ふわりと届くパンの香りは、王都で嗅いでいたものと同じもの。
「王都の女将さんも、このパンを出してくれました」
「ふふ、嬉しいわ。私が教えたの」
頬に手を当てて微笑む老婦人に、リゼルもほのほのと笑う。
ガラス窓一枚へだてた外界では色々と物騒な音が響いているが、二人の間にある空気は至って穏やかだった。
その時、ふいに老婦人も窓へと近付いて庭を見下ろした。
「あの子、大きくなったわねぇ」
「ジルですか?」
「そう。名前を聞いただけじゃ気付かなかったわ」
老輩の言葉から、ジルと顔見知りなのだろうと当たりをつける。
そして、ふと思い至った。それは王都の騎士学校で聞いた言葉。騎士候補生からの質問で、今までで一番手強かった相手を聞かれた時のジルの答えが“とあるSランク”だった。
その後、気になったリゼルが聞いてみたところSランクという事以外は知らないという。だが、その存在を示す際に使われた“あの爺”という言葉と、年老いて尚ジル達と剣を合わせられる老輩を目の当たりすれば、結びつけてしまうのも仕方がないというもので。
「あの人、まだ冒険者でもなかったあの子に喧嘩を売ったのよ。大人げないでしょう?」
「いえ、ジルも随分と思い入れのある一戦だったみたいですよ」
「ふふ、なら良かったのかしら」
どちらが勝ったのかと、聞くのは野暮だろうとリゼルは問おうとはしなかった。
けれど先程叫ばれた老輩の言葉を思えば、その頃のジルの剣の腕は言うまでもなく。自然と綻ぶ口元をそのままに、リゼルはふと老婦人を見た。
「貴女も昔は冒険者を?」
「ええ、あの人と」
間違いなくSランクだ。大先輩が過ぎる。
喧嘩を売る気もないが勝てないかも、とリゼルはうふふと微笑む老婦人を見上げた。特にそれで態度を変えるつもりもないが、怒らせないようにはしようと思う。
よく見れば魔力量もとんでもなかった。魔法使いだったのかもしれない。
「(ご教授願いたい……は、失礼かな)」
それ程の魔力量を持ち、Sランクという功績があるならば隠居先など幾らでも選べただろう。それでも小さな宿を営んでいるのはきっと、これが本当に冒険者の次に彼女がやりたい事だったに違いない。
今更、昔の栄光に縋るような真似をしては困らせてしまう。リゼルは潔く諦めた。
「朝食、頂きますね」
「はい、お上がりなさい」
にこりと笑えば、目尻を深めて微笑まれる。
生涯をかけて様々な経験を積み、それら全てを受け入れてきた先達の笑みだった。憧れるなぁと、素直にそう思う。
そして彼女の後姿を見送り、朝食に手をつけていた時だ。
「何あのジジィ。ニィサンの知り合い?」
「元Sだぞ」
「はァ!?」
手合わせを切り上げたジル達が、賑やかに食堂へとやってくる。
そして当然のように同じテーブルについたのを見て、リゼルは食事の手を止めた。顔だけ洗ってきたのだろう、隣に座ったイレヴンの前髪が濡れて束になっている。
「お早うございます」
「ああ」
「リーダーおはよ」
向かいに座ったジルが剣をテーブルへと立てかけた。
眉に皺を寄せ、気難しそうな顔はしているが随分と。そう思いかけたリゼルの視線に気づいたのか、余計な事は言うなとばかりの鋭い視線に制される。
可笑しそうに笑い、隣からひょいっと冷えた紅茶のグラスを取っていくイレヴンを向いた。
「強かったですか?」
「ビビるくらい。や、流石に引退したジジィに負けはしねぇけどさァ」
つまり、全盛期だったら危なかったと思う程の相手。
珍しく相手を認めるような発言をするイレヴンは、どうやら本気で驚いたようだ。それもそうだろう、まさか宿の主人が歴戦の冒険者とは思いもしまい。
ドカドカと同じく宿に帰ってきた老輩も、何やら非常に機嫌が良さそうに己の妻の元へと向かったようだ。隣の部屋から壁越しに賑やかな声が聞こえる。
「で、ニィサン誰あれ」
「何年も前に一回顔合わせた」
「なんだァ」
ジルの返答はお気に召したものではなかったのだろう。
興味を失ったようなイレヴンを尻目に、リゼルはポタージュを掬いながら首を傾ける。
「宿、変えましょうか?」
「いらねぇ」
「そうですか」
ジルは他人を拒絶している訳ではない。好んで一人でいる事が多いが、話しかけてくる相手を面倒ごと以外で無視する事もない。
ならば今回も“敢えて避ける理由もない”というだけの事なのだろう。
「はい、お待ちどおさま」
すると、老婦人が二人の分も朝食を運んできた。
どうやら食事前の軽い運動として手合わせでも、と庭に出ていたようだ。そこに老輩が乱入してきたのだろう。
「あの人が随分とはしゃいじゃって、ごめんなさいね」
「別に」
「婆ちゃんも元S?」
「ええ、そうなのよ。今じゃすっかり、普通のお婆さんでしょう?」
呆れたようにグラスを呷ったジルと、有り得ない冗談を聞いたかのように唇を歪ませたイレヴンの反応を見れば、彼女の言葉の真意はお察しだ。
やっぱりか、とリゼルは何も言わずにポタージュを掬ったスプーンを傾ける。本人は謙遜している様子が全くないのだから、彼女の全盛期を想像せずにはいられない。
「あのジジィも宿やってんの?」
「いいえ、宿は私の趣味なの。あの人も手伝ってくれるけれど」
「宿って感じではねぇしな」
「ふふ、そうでしょう? あの人は剣術指南をしているのよ。ギルドだったり、子供たちだったり」
丸くなったわよね、と彼女は笑うが先程見た老輩は戦うのが楽しくて仕方がないといった風だった。
ジルは彼が子供をちぎっては投げちぎっては投げしている姿を想像したし、イレヴンはギルドで冒険者の屍の上に立つ姿を想像した。リゼルは唯一ほのぼの剣術教室を想像できたが、ほのぼのしすぎていて現実味はなかった。
疑問符を飛ばす三人に、老婦人は可笑しそうにくすくすと笑う。
「あなた達が来て、とても楽しそうにしてるのよ。退屈しているお年寄りに、時々付き合ってあげてちょうだいね」
そう告げて食堂から出ていく老婦人の後姿は可愛らしく、しかし“旦那は尻に敷かれてるんだろうな”と感じさせる何かがあった。
朝食を終え、部屋に戻った三人はさてと今日の予定を話し合う。
観光は決まっていた。そして寄りたい場所も一か所。後をどうしようかと、各々準備をしながら話していた。
「二人は行きたい場所とかありますか?」
「適当に歩きゃ良いだろ」
「じゃあギルドをちょっと覗いて」
「あ、俺あれ見たい。でかい剣」
「そういうのがあるんですか?」
ジルが私服の上から剣を身に付け、イレヴンも同じく。
リゼルも腰にポーチを巻き付けて準備が完了した。
「ここ朝寒くねぇ?」
「今までが快適すぎただけだろ」
「王都もアスタルニアも暖かかったですよね」
会話を交わしながら部屋を出る。
廊下を進んで階段を下り、足を止める事なく無人の玄関から外へ。遮るもののない日差しは強く、日の下ならば肌寒さを感じずには済みそうだった。
そこから更に石造りの狭い階段を下りる。宿屋はここの二階と三階、一階は独立しており宿を営む老夫婦の居住区となっているようだ。
そして通りに降り立てば、直ぐに目に入るのは狭めの水路だった。無数の水路が国中に張り巡らされているサルスならではの光景だろう。青空を映した水面を、三人の目の前で一隻の船が流れていく。
「人を乗せる用じゃないんですね」
「まぁ乗る必要もねぇし」
「移動手段にはしねぇだろ」
水路に沿うように狭いが道があるので、余程の事がなければ歩いた方が早いのだろう。
ひとまずギルドの方向へと歩く。並ぶように水路を進む小舟は見るからに荷の運搬用だった。積み込まれた木箱と、のんびりと座る船頭の姿。それらが流れるままに水路を跨ぐ小さな橋をくぐっていく。
遊覧も楽しそうなのに、とリゼルは角を曲がって消えていく小舟を見送った。
「魚いねぇの」
「どうでしょう」
「いたら何処でも釣りできんじゃん」
そんな事を話しながら時折水路を覗き込む男三人を、サルスの住人達は観光客かとちらちら窺っている。
ちなみにただの観光客とは思われていない。周囲は絶賛“護衛をつれたお忍び貴族の諸国漫遊をそっと見守るモード”真っ最中だ。全員お察しのような顔をしているが何も察せてはいない。
「魔法学院は首都にあるんですよね」
「知らねぇ」
「多分そう」
興味のなさが明らかな二人に苦笑し、リゼルは幾つ目かの橋へと足を踏み入れてみる。
緩くアーチを描いたそれは、手すりも何もない。というより、水路の何処にもそういったものは見えない。
夜は危ないのではと思うが、昨夜歩いた街並みは水路沿いを街灯がしっかりと照らしていた。夜に出歩く者は少ないし、慣れ親しんだ住人が落ちるような事もないのだろう。
「あっちが首都でしょうか」
「そうそう、この道ずーっと先」
短い橋は、すぐに渡りきってしまう。
進路とは逆方向を振り返って確認しながら、三人は再び水路沿いに歩き始めた。
「それで、ここが西都」
「南ぎりぎりだけどな。西と南と北」
「で、全部の根っこに首都」
成程、とリゼルは数度頷いた。
大橋のある西都、その大橋とは真反対に首都。そこを要として、扇状に北都と南都。サルスでは首都にいる国王をトップに、それぞれに独立した主導者がいるらしい。
そんな首都は行政機関が軒並み集まっているらしいので、唯一対岸と繋がる大橋から最も離れているというのは国防の点からしても納得だ。
しかし、それにしては。
「王都からここまで、一直線に来れるんですよね」
ふと路地を見れば、家と家を繋ぐように張り巡らされたロープに干された洗濯物。
宿にあった中庭も数軒の民家に囲まれた共通の庭のようだったし、やはり土地の余裕があまりないのだろう。だが狭い路地から見上げる切り取られたような青空は美しかった。
「元はパルテダールの属国で、ずっと前に独立したって本で読んだんですけど」
「俺も知ってんのはそれだけだな」
「歴史はなァ、リーダーのが詳しそう」
「はっきりとした理由は書いてなくて」
とはいえ、大橋が王都を向いているなら穏やかならざる理由ではなさそうだ。
大侵攻の件で、劇的な国交悪化とはならなかった時点で予想はしていたが。後ろ暗いもののない友好国はとても希少、とリゼルはしみじみ思う。
「あ」
「おっ」
ふいに強まった風に、路地から何かが飛び出してきた。
同時に絶望的な悲鳴も。イレヴンが咄嗟に腕を伸ばし、水路に向かおうとするその何かをキャッチする。
「スカートですね」
「これ持ってる俺が変態みてぇじゃん、リーダー持って」
「俺でも同じじゃないですか? ジルに」
「俺は致命的だろ」
戯れながら待っていれば、先程の悲鳴の主だろう。
洗濯物のたなびくロープの下にある扉を勢いよく開き、一人の女性が飛び出してきた。
「すみませーん! 私のです、すみませーーん!」
「はい」
「水に落ちずに何よりでした」
「……? ……??」
女性はイレヴンから真っ白なスカートを受け取り、そしてリゼルを見て自分の身に何が起こっているのか分からないという顔をしていた。
だが悲しいかな、見慣れた反応でもある。三人は何事もなかったかのように歩みを再開させた。
「ギルドは大橋の近くですよね。昨日は見逃しましたけど」
「まぁ分かりづらいよな」
数秒遅れで後ろから投げかけられた礼の言葉に、リゼルは歩みを緩める事なく微笑ましそうに笑う。アスタルニアで宿主も潮風に洗濯物を攫われる度にああいう悲鳴を上げていた。
「ちょい面倒ッスよね、迷宮行くのに橋渡んの」
「混みそうです」
「あんだけでかけりゃ詰まるって事もなさそうだけどな」
サルスの外周のそこかしこに船着き場はあるが、ギルドに寄ってから向かおうと思うと近くの大橋を利用するのが一番早い。朝は随分と賑やかそうだ。
「お、観光客さんかねー、木の実食べる?」
「食べる」
ふいに水路にのんびりと浮かんでいた小舟から声がかかり、イレヴンが足を止めた。
麦藁帽子の似合う老爺が、果物の入った木箱に囲まれて座っている。差し出される不思議な色をした木の実をしゃがんで受け取っているイレヴンに、リゼルは成程と頷いた。
サルス風屋台、と言ったところか。布を張っただけの小さな屋根から値札が吊り下げられている。
「凄ぇ色してんな」
「あ、美味い」
「何ていう木の実ですか?」
「さぁー、水ん中から拾ってくんのよ」
「木の実じゃねぇじゃん」
ぺろりと平らげたイレヴンが、伸ばされた老爺の手に銅貨を落とした。
そして立ち上がる。歩みを再開させた三人に、「また来てなぁ」というしわがれた声がかけられた。
「ああいうの、見て回るのも楽しそうですね」
「どっかに固まってるとこあんじゃねぇの」
「マルケイドの広場みたいにですか?」
「あー、あった気もする。どこだっけ」
以前に一度来たことがあるというジルだが、相変わらず宿とギルド以外に寄りつこうとはしなかったのだろう。逆に何度か訪れてぶらついた事のあるイレヴンはそこそこ覚えていた。
とはいえ、二人共それはリゼルと出会う前のこと。記憶に残るほどに何かを感じた事もなければ、記憶に残しておく意味もなかったのだから色々と曖昧だ。
「食べ物以外もあるんでしょうか、あの……」
「物売り船か」
「そういうんですか?」
「知らねぇよ」
「好きに呼びゃ良いんスよ」
あっさりと適当な事を言うジルと、カラカラと笑うイレヴンにリゼルは微笑む。
「後で探しに行きましょうか」
「お、良いッスね」
「の前にギルド行くんだろ」
ふいにジルが歩調を緩め、ん、と先にある一つの建物を指さした。
通りに並ぶ他の家々と特に代わり映えしないが、意識して眺めてみればしっかりとギルドの看板がかけられている。成程、夜道で気付けない筈だと三人は扉の前で足を止めた。
扉は全開のまま壁のフックに留められている。少しだけガタがきている蝶番が、いまにも外れてしまいそうなのが印象的だった。
乱暴な開け閉めが多いのだろうと、リゼルは感心しながらギルドへ足を踏み入れる。
「サルスの冒険者も他と変わらないですね」
「サルスにいるっつっても何処の冒険者かなんて分かんねぇからな」
「出身気にする奴とか見た事ねぇなァ」
「俺達もそうですしね」
そんな雑談を交わしながら現れた三人に、ギルド内が騒めいた。
この感じも久しぶりだ、とリゼル達は慣れたようにそれを流す。いや、リゼルだけは微妙に釈然としないものを感じているが。なにせ上等な依頼人を見る目で見られている。
「おかしいです」
「諦めろ」
リゼルの言いたい事を全て汲み取り、ジルは間髪入れず突っ込んだ。
だが諦めきれなかったのだろう。はっとしたようなリゼルが自らを見下ろす。
「あ、俺も君達も装備じゃないから」
何やら一人で釈明し始めたリゼルに、ジルとイレヴンは「関係ねぇよ」と思ったが今度は口には出さなかった。夢を見るのは自由だ。たとえ叶わないものだとしても。
同情どころか面白がる二人にそんな事を思われている事などつゆ知らず、リゼルは依頼ボードへと歩いていく。前に立っていたパーティがさっと避けた。
「お忍びでギルドかよ」
「依頼か?」
ひそひそと囁かれるそれに、聞こえたイレヴンが小さく吹き出しながらリゼルへと続いた。
その後ろをジルも歩く。護衛か、あれってもしかして、密かに囁かれるそれらを気にする事もない。
「面白そうなのあった? リーダー」
「水路の掃除とかありますよ」
「俺ぜってぇやんねぇ」
「俺も」
何故か嬉しそうなリゼルに、二人は嫌そうに顔を顰めた。
そもそもジルもイレヴンも雑用はあまり好きではない。リゼルと一緒でなければ絶対に受けないだろう。一緒ならば“まぁやっても良いか”と“行く行く面白そー”になる事もあるのだが。
とはいえ掃除は嫌だ。正直言えば二人はリゼルにもやって欲しくない。
「やっぱり魔石関係の依頼が多いでしょうか……あ、これなんて迷宮まで指定されてます」
「何か違うんスかね」
「それを調べんじゃねぇの」
「あー、そゆこと」
依頼人には研究者も多い。魔道具発明が盛んだからか魔石の依頼も多い。
そんな事を話しながら和気藹々と三人が依頼ボードを眺めていた時だった。
「あのぉ、すみませぇーん。依頼人の方ですかぁ?」
ふと依頼受付から書類を抱えて駆け寄ってくる、満面の笑顔の女性が一人。
可愛らしい顔をした彼女だが、制服を見る限り職員に間違いないだろう。女性職員など珍しい事だ、それにしても声が異常に高いなと思いながら三人がそちらへ顔を向ける。
何やら勘違いされているらしい。私服だから、と頷いているリゼルをジル達が無言で眺める。
「依頼の受付はこちらでぇす、ご案内させて頂きまぁ……っぉ」
その時、ふいに職員が何もないところで躓いた。
最も反応できるだろうジルとイレヴンがただそれを眺める中、リゼルは極々自然な紳士精神で受け止めようと手を伸ばす。だが、それは届かなかった。
他ならぬ職員本人が、空中で明らかに無理な体勢になりながらそれを避けたからだ。盛大に書類をばらまきながら、彼女は肩から床へと落ちた。途轍もなく痛そうな音がした。
「だいじょう」
ぶですか、と手を差し伸べかけたリゼルの言葉は続かない。
床の上でもぞりと起き上がろうとした職員が、直後こぶしを床に叩き付ける。
「仕事でのドジは公害だっつってんだろうがぁ! いい加減にしろクソが!」
第一印象で甲高さの目立った声が、非常にドスの利いた低音へと変わり果てていた。
リゼルがぱちりと目を瞬かせ、イレヴンが何かを察したのかススッとその後ろに避難する。ジルは取り敢えずリゼルが伸ばしかけていた腕を掴んで下ろしてやった。
無言で一連の流れを見守っていた三人に、ふいに床に蹲って息を荒らげていた彼女がゆっくりと顔を上げた。乱れた髪が盛大にかかる顔、血走った眼がにっこりと先程の満面の笑みを取り戻す。
「お怪我、ありませんでしたぁ?」
声の高さも戻った。
それにジルとイレヴンが盛大に引くなか、リゼルはにこりと微笑んでみせる。
「大丈夫ですよ。貴女こそお怪我は?」
「勿論大丈夫ですぅ、顔面が割れても自業自得なのでぇ。お手を煩わせずに済んで何よりでしたぁ」
うふふ、と笑う姿に若干の狂気を感じる。
甲高い声で物騒な事を告げる彼女に、リゼルの後ろに半分避難していたイレヴンが引き攣った口元を動かした。
「その、声が高くなんの何」
「これですかぁ? ご不快でしたら大変申し訳ございませぇん。地声が低いのでこうなるんですぅ。あ、お気になさらずぅ」
散らばった書類を集めるのを手伝おうとしたリゼルを手で制し、彼女はせっせとそれらを集めていく。手持ち無沙汰だなとリゼルがギルドを見渡せば、周囲は彼女の奇行に特に注目してはいなかった。いつもの事なのだろうか。
「低いと駄目なんですか?」
「陰気よりは陽気な方が冒険者さん達も接しやすいかと思いましてぇ」
プロ根性だ。
とはいえ声が低いだけで陰気とは思わないが、とリゼルが不思議に思っていると、同じくイレヴンも気になったのだろう。大分慣れてきたのかリゼルの後ろから出てきながら問いかける。
「ちょい地声で話してみて」
「えぇ、そうですねぇ。 こうですかね」
「ひっく」
「真顔やめろ」
表情まで消えた。
確かに朝から接するなら真顔よりも笑顔が良い。ギルド職員に愛想など求める者はいないが、それはそれだ。選べるならそちらを選びたい。
一般的な冒険者にとっても、真顔の彼女にはスタッドとは別種の近寄りがたさがある。
「……その中間ねぇの?」
「皆さんはぁ、オンオフしかない魔道具に調整機能求めますかぁ?」
自身を魔道具に例えるあたりが世知辛い。
調整機能などついてはいない、あるいはぶっ壊れていると堂々宣言した彼女。それでも冒険者の事を思い、体力と精神力を削りながらオン状態を続ける彼女のプロ根性に幸あれ。
仕事モードってそういうとこある、とリゼルだけは微笑ましげに頷いている。
「ところでぇ、依頼方法について説明させて頂きたいんですがぁ」
「あ、大丈夫ですよ。何度も受けてるので」
「受……? いえ、依頼の申し込みについてぇ」
「こいつ冒険者」
「俺らパーティ」
「冒険者が依頼を出すっていうのも面白そうですけど」
職員は真顔になった。ついでに聞いていた周囲も真顔になった。
リゼルはポーチを漁り、駄目押しとばかりにギルドカードを出してみせる。輝くギルドカードはBランクの色。もしや護衛の冒険者のものを使っているのではと、いっそ決死の表情を向けられたジルとイレヴンも各々のギルドカードを出してひらりと振ってみせた。
そしてギルド内にいる誰もが固まる中、目の前の彼女がにっこりと完璧な笑顔を作り上げる。
「大変失礼致しました」
「低い低い」
「バグらせんなよ」
「俺の所為じゃないです」
「お前の所為だろ」
可愛らしい笑顔から零された低音に、なかった筈の調整機能をバグった状態で引き出したリゼルへとジルがすかさず突っ込んだ。不貞腐れようと百パーセントリゼルの所為なのだから仕方ない。
「なので、また依頼を受けに来ますね」
「……お待ちしておりまぁす!」
そしてリゼル達は、無事に笑顔と高音を取り戻した職員に見送られながらギルドを出たのだった。
三人は再びサルスの街並みを歩く。
来た道をやや戻り、そして路地を何度も抜けながら北の方へ。魔道具の工房や、冒険者ご用達の武器防具などの工房などが集まる場所だ。
ちゃぽん、と時折聞こえる水音に耳を傾けながら周りを見渡せば、家々の間に路地とも呼べない隙間を数多く見つける事ができる。人とすれ違えないような狭さだが、時々子供が飛び出してきたり、大人も当たり前のように潜っていくのを目撃した。
「向こう側から誰か来たらどうすんだろ」
「どっちかが下がんだろ」
やってみたいものだ、そうでもない、などと話す三人が今通っている路地も決して広くはない。
向かいから誰かがやってくる度に端に寄り、水路に出て、それに沿うように歩いて見つけた小さな橋を渡り、再び路地へ。
「ん、曲がると戻っちゃいますよ」
「マジで、どっちだっけ」
「おい」
「だってさァ」
入り組んだ町並みは、土地勘がない者にはやや分かりにくい。
分かれ道でどちらに行くかと話していれば、ふいにカタリと後ろから音がした。振り返ればすぐ隣の建物の一階、その窓から葉巻を咥えた男がのんびりと顔を出したところだった。
「聞いてこよ」
「お願いします」
「おっさーん」
フットワークの軽いイレヴンが直ぐに声をかけに歩み寄る。
白髪の混ざり始めた立派な眉を片方上げ、煙をくゆらせていた男がちらりと彼を見た。
「だーれがおっさんじゃ」
「おっきい剣飾ってあるとこ行きたいんだけど」
「そっちで合っとる。彫刻工房んとこ右曲がれ」
「お、りょーかい」
軽く手を上げたイレヴンに鼻を鳴らし、ふと男が少し離れて待つリゼル達の姿を捉えた。
見開かれた目は咳払いと共に取り繕われ、踵を返しかけたイレヴンをちょいちょいと指で呼ぶ。そして潜めた掠れ声で告げた。
「何だ、お忍びか? 北は礼儀を気にするような奴は少ねぇぞ」
「俺のご主人サマはそーゆーの気にしねぇの」
にんまりと笑うイレヴンに、男はぱちぱちと目を瞬かせる。
そして去っていく鮮やかな赤を呆然と見送っていた男の目が、ふいに視線を上げたリゼルの瞳を捉えた。礼を告げるようにゆるりと微笑まれ、そして去っていく姿に男は取り落としそうになった葉巻を慌てて支えた。
「あんた! 洗濯物に匂いがつくから止めてって言ってるでしょうが!」
「ちょっとぐらいえぇだろうが!」
そんな会話が交わされていた時には既に、リゼル達はあっちだあっちだと歩き出していた。
三人は聞いた通りに路地を進み、見つけた彫刻工房を右へ。
ちなみに少しだけ覗いた彫刻工房では、黙々と魔物の彫像を彫る職人の姿があった。
人魚などの見栄えの良い像ではない。いや、芸術的な観点を除いて考えるのならある意味見栄えは良い。これでもかという程のフリルを身に纏う“レディマリオネット”、そのレースへこだわりの全てを注ぎ込んでいる姿だ。
「需要あんのか」
「技量を示す、っていうのなら」
「いやあれ完全趣味っしょ」
世の中には色々な人がいるな、と話しながら歩いていれば、目的地にたどり着く。
金槌を振り下ろす音、煙突から立ち上る煙、金属系の工房が集まっている場所に憩いの空間として設えられただろう広場だ。ところどころに休憩している職人、あるいは魔道具工房を覗きに来た研究者の姿も見える。
「おっ、あれあれ!」
「でかいっつうより長いな」
「どうやって作ったんでしょうね」
その広場の片隅に、何本もの支えに掲げられているような巨大な剣があった。
速足になったイレヴンにリゼル達も続く。遠くから見れば確かに細長いが、近付いてみれば幅や厚みも一般的なバスターソード並みの立派さだ。
これは確かに凄い、とリゼルはまじまじとそれを見下ろす。
「鈍らじゃねぇか」
「置きっぱだし。研げば使えんじゃん?」
「つっても質も大したもんじゃ」
剣談義を始めたジル達を余所に、リゼルは剣の柄の方に石碑を見付ける。
石碑といっても、適当な石に適当に文字が彫り込まれているだけのものだ。この剣の成り立ちでも書いてあるのかと近付いて覗き込んでみれば、刻まれているのは一文のみ。
【使いこなせる奴がいるなら持ってけ 武具工房一同】
成程、と頷いて姿勢を戻す。
サルスの工房が協力して作り上げた一本なのだろう。何の為に作ったのかは分からないが。恐らくただ作ってみたかったのか、それとも限界を求め続けて収拾がつかなくなったのか。
リゼルは刀身の長さに相応しい、太い柄を両手で握り込んでみた。
「んっ」
「……リーダー何してんの?」
「使えれば貰えるみたいなので」
「欲しいのか」
「いえ、試すだけなら自由かなと」
リゼルも男だ。選ばれし者しか使えない剣というのに若干の憧れはある。
とはいえ当然のように巨大な剣はぴくりとも動かず、残念そうに手を離した。
同じく試す者は多いのだろう。“またやってら”と笑いながら眺めていた職人たちは、その姿をしっかりと見るや否や無言で二度見していたが。
「そうそう、だからニィサン連れてきたかったんスよ」
「あ?」
「持って」
「いらねぇよ」
「えー」
「いらねぇ」
ジルは密かに剣のコレクターではあるが実用性重視だ。
いつもは腰の剣を使うが、必要であればそれら集めた剣も時々使っている。だからこそ、いかにも実用性を度外視されている目の前の剣には惹かれないのだろう。
なにせ長すぎて使える場所が酷く限られる。隙だらけになる。空間魔法を持っていなければどうやって持ち運ぶのかさえ不明な代物だ。
「持ってみるだけで良いからさァ」
「見世物になれって?」
「うん」
「てめぇがなってろ」
「俺ムリだし」
イレヴンから助力を求めるような視線がちらりと向くも、リゼルは苦笑を返すに留めた。
確かにジルが持ち上げる姿は見たいが、剣士としてリゼルには分からないこだわりがあるのだろう。そこに口を挟む事はできない。いや、ただただ嫌なだけかもしれないが。
リゼルが動く気がないと察したのだろう。イレヴンが不貞腐れたように口を開く。
「これ持ってるニィサン爆笑する為に来たのに……」
「うるせぇ」
「痛って!」
引っ叩かれた頭を押さえ、叩かれた叩かれたと言いつけてくるイレヴンをリゼルはよしよしと撫でてやった。
そして昼時を少し過ぎた頃。
リゼルは昼食にと入った店で、にこにことジルとイレヴンを眺めていた。
「美味しいですか?」
「美味い」
「うっま」
二人はじわじわと油の弾ける音を奏でる肉の塊を、大振りに切っては口に入れていく。
選んだ店はアイン達から聞いていたもの。アイン達が入っただけあって決して敷居の高い店ではなく、むしろリゼルが入店した瞬間に肉が焼ける音以外が消えるような店なのだが、三人は気にせず腰を落ち着けていた。
テーブルに埋め込まれた鉄板の上に、厨房である程度焼き上げられた肉が運ばれてくる。鉄板の下に火の魔石でも仕込んでいるのだろうか、面白い仕組みだなとリゼルも一切れ皿にとった。
「おかわりー」
「おう!」
「やべぇ夜の分なくなんぞ!」
厚いステーキをぺろりと平らげ、イレヴンが何度目かの注文を叫んだ。
先程からバタつきっぱなしの店員たちに、さもありなんとリゼルは頷く。ちらりと見れば、唇についた肉汁を舐めとるジルと目が合った。
「何だよ」
「何でも。たくさん食べてくださいね」
「ああ」
なにせ、ジルがイレヴンと同じペースで食べている。止まらない。
随分と気に入ってくれたのだろう。教えてくれたアイン達に感謝しなければと思いながら、リゼルも皿に確保したステーキを更に切り分けながら口へと運んだ。
「本当に美味しいですね」
「ね、食べた事ねぇ味」
店で一番良い肉を頼んでいるというのもあるが、とにかく美味しい。肉の味がしっかりとあるお陰で、ガツンとしたスパイスにも負けずに他にはない味になっている。
ちなみにジルとイレヴンは肉を一口食べて、すぐさま酒を頼んでいた。
「エールもおかわりー」
「待ってろ! ちょっと待ってろ!」
「俺も」
「やっぱ二つー。リーダーは?」
「飲ませんな」
「俺は大丈夫です」
鉄板の熱で火照る頬を冷ますように水を飲み、リゼルは着ていた薄手の上着に手をかけた。暑くなってきた。
もぞもぞと脱ぎ、向かいから手を伸ばしてくれたジルに鉄板を迂回するように渡す。空いた席に適当に放ってくれたそれに礼を告げ、両手に何皿もの肉を載せて運んできてくれた店員を見上げた。
「有難うございます」
「おっ…………はっ、いえいえいえいえ」
一瞬固まられた。
そして鉄板に肉を並べていく端から平らげるジル達に半泣きになっている店員へ、少しばかり申し訳なく思いながらもリゼルはやはりにこにことその姿を眺める。なにせ大事な大事なパーティメンバーが非常に機嫌が良さそうなのだ。
「リーダー嬉しそー」
「嬉しいです」
「おら、お前も食え」
「それ俺のじゃん!」
「てめぇのではねぇ」
ジルが一切れ分けてくれるも、リゼルはそろそろお腹がいっぱいだ。
だが美味しいから頑張ろう、とナイフとフォークを構える。隣に立つ店員はもはやリゼル達の席専属になる事を決めたらしく、注文してもいないのに続々と肉を運んでくる事にしたらしい。
焼き上がり次第持ってくる。むしろ生から持ってくる。いっそ単純作業。彼の目は何故か一種の使命感を帯びている。きっと彼はイレヴン達がストップを告げるまで焼き続けるに違いない。
「はいレア!」
「俺食うー」
「ミディアム!」
「食う」
「ウェルダン!」
「美味いけどこれは生焼けのが好き」
「生焼けとは違うんですよ、イレヴン」
「はい次レア!」
「食う」
「だから俺のだって!」
「なら名前でも書いとけ」
ぎゃんぎゃんと肉だけをひたすら食らい続ける二人を、その後もリゼルは止める事なく最後まで眺め続けた。最終的に店の肉を食べつくしたが、店員には力強い拍手で送り出されたので出禁にされる事はないだろう。
そして店を出る頃には、それなりの時間が経っていて。
「おい、上着」
「あ、有難うございます。ん、匂いが」
「俺らぜってぇ肉臭ぇー」
イレヴンがけらけらと笑いながら、鮮やかな赤を持ち上げて匂いを嗅ぐ。
リゼルもジルの肩口に鼻を寄せてみれば、確かにいつもと違う香りがした。可笑しそうに笑みを零せば、ジルも近付いたリゼルの髪に顔を寄せて笑ってみせる。
「お肉と油の匂いがします」
「お前もな」
「長居したし。次どこ行く?」
「ちょっと歩きたいです」
リゼルの腹は限界を迎えつつある。腹ごなししたかった。
そして三人はぱたぱたと服を振るいながら歩き出し、一日丸っとサルスを満喫したのだった。