作品タイトル不明
18 楽しい日々
「執務に関しての勉強がスムーズにいくように、研修期間の3ヶ月はコペリオン邸で過ごしてもらいたい」
“家でもしっかり勉強してもらう。休む暇はない”
と言う事なのか?それは、ありがたい事よね?リシューさんも仕事で大変だろうに、家に帰って来ても私に指導してくれるという事だから。たったの3ヶ月しかないのだから、その提案は素直に受け入れた。
そうして、いざコペリオン邸にやって来ると、数多くの使用人達に出迎えられ、部屋も日当たりの良い豪華な部屋に案内された。
その翌日からは、カロリーヌさんと街へ出かけて必要な物や服などの買い物をした。買い物ついでに、スカレティアの料理も堪能した。1週間街を歩き回って気付いた事は、働いている女性が多いという事。オーナーが若い女性という店もあった。ズボンを履いている女性も居た。サザリアンでは考えられない事だった。
この1週間は、サザリアンとスカレティアの違いを知るには、十分な時間だった。
「この1週間で、サザリアンとの違いを思い知らされました」
「サザリアンに帰りたくなった?」
「まさか!その逆です!スカレティアには、女性の居場所があるんだなぁ……と。カロリーヌさん、この1週間ありがとうございました。私、これから頑張ります!私も、この国で自分の力で自分の居場所を作ります!」
「マリレーヌならできるわ」
その翌日は、カロリーヌさんとリシューさんと3人でナルターレル侯爵家に挨拶に行く事になった。
ーリシューさんは必要?ー
と思ったけど『雇い主だから……ね』と、カロリーヌさんに言われて、『それもそうか?』と思いつつ3人でやって来た。伯父と伯母に会うのは、私とアシュトンの結婚式以来だ。
「まぁ!マリレーヌ!少し痩せたんじゃない!?あんのクズ!!」
「リズ……」
「あら、ごめんなさい」
久し振りの再会に暴言を吐いたのは伯母で、窘めたのは伯父だった。この伯父が母の実の兄のオレール=ナルターレル侯爵。
「オレール伯父様、リゼット伯母様今回は、ナルターレルの籍に入れていただき、ありがとうございます」
「何を言っているの!?貴方はアレッサの大切なひとり娘なのよ!?ナルターレルの人間なのだから、お礼なんて言う必要はないわ」
ブレイザー家では、色々辛い思いをしたけど、私を思ってくれる人がたくさん居る。それは、とても幸せな事だ。
「さぁ、立ち話はこれで終わりにして、中に入ってゆっくり話そう」
伯父の言葉で、私達は邸の中に入って行った。
案内されたサロンには、従兄妹のアイロスとニネットも居て、昔話により一層花が咲いた。こんなにも楽しい時間を過ごしたのは、本当に久し振りだった。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎた。
「また、いつでも遊びに来てね」
「ありがとうございます」
「リシュー殿、マリレーヌの事、よろしくお願いします」
「彼女の事は、安心してお任せ下さい」
伯父の言葉に、胸に手を当てて礼をするリシューさん。その姿に少し驚いた様子の伯父と、「ふふっ」と笑う伯母とカロリーヌさん。
ー何か面白い事でもあった?ー
「マリレーヌ、気を付けなさい」
「は……い……??」
何故か、伯父から意味の分からない忠告を受けた。
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*その頃のブレイザー家(アシュトン視点)*
マリレーヌと離婚してから2ヶ月程経ち、ラヴィーが無事に出産した。生まれた子は私と同じ金髪に青色の瞳の男の子で“ディラン”と名付けた。
「アシューによく似て可愛らしい子ね」
と、母も可愛がってくれている。マリレーヌさんとは4年も で(・) き(・) な(・) か(・) っ(・) た(・) のに。未だに記憶はあやふやだけど、ラヴィーと出会えて良かったと思う。
「庭園の手入れを怠っているんでしょう!?」
「いいえ、手入れはちゃんとしているのですが、 こ(・) の(・) 辺(・) り(・) だ(・) け(・) 、どうしてもこうなってしまうんです」
子供が寝ている間に気分転換にと、久し振りに庭園奥のガゼボにやって来ると、綺麗に咲いていた花が枯れていたのだ。このガゼボ周辺の花だけが。以前は、綺麗な蝶も飛んでいたのに。庭師が世話を怠っていたのでは?とラヴィーが言うと、庭師からそんな返答が返って来た。確かに、このガゼボ周辺以外の花は綺麗に咲いている。
「ラヴィー、落ち着いて。ここは残念だけど、他の所の花は綺麗だから、あっちでお茶をしよう」
「アシューがそう言うなら……また綺麗に咲かせておいて」
「承知しました」
ーこの場所は日当たりは良いのにー
そう言えば、領地の収穫が少し減っているという報告があった。マリレーヌさんと一緒になって改良を重ねて、ここ数年は上手くいっていた──そうだけど。とは言え、今すぐに困るという事にはならないだろう。提出された報告書を見ても、いまいちよく分からない。記憶が戻れば分かるんだろうけど、戻らないから仕方ない。
ーアンセルに任せるしかないー
そう思いながら、私はラヴィーと庭園でのティータイムを楽しんだ。