軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16 スカレティア皇国

サザリアン王国からスカレティア皇国までは、2つの国を越えて行かなければならず、正攻法で行くと1ヶ月はかかる。

「必要なものは向こうで買えば良いから、移動は転移魔法の使用で、3日で着くよ」

とんでもない事をサラッと言われた。

「リシューは、仕事馬鹿で魔力馬鹿なの」

と、カロリーヌさんは笑っていた。

ーリシューさんって、ものすごい人なのでは?ー

とにかく、リシューさんの言う通り、荷物は最低限にして、少し大きめのボストンバッグが1つだけ。リシューさんとカロリーヌさんも小さいバッグが1つだけだった。

「マリレーヌ、スカレティアに行っても元気でね。時間がある時は手紙を書いてちょうだいね」

「はい、叔母様。必ず手紙を書きますね」

「体に気を付けてな。無理はしないように。それと、向こうの人達にもよろしく伝えてくれ」

「分かりました。叔父様、ありがとうございました。ヒューバートにも、よろしくと伝えて下さい」

手続きが早く済んだ事もあり、仕事で留守にしているヒューバートには会う事なく、スカレティアに行く事になった。

「それでは、行ってきます」

「「いってらっしゃい」」

お別れの挨拶をすませると、リシューさんは早速魔法を展開させ、1度目の転移をした。

******

1度目の転移後に隣国に入国して、その国で1泊。2度目の転移で、その国の隣国に入国して1泊。3度目の転移でスカレティア皇国に入国した。

通って来た2つの国では、観光を楽しんだ。今迄、旅行らしい旅行をした事がなかったから、普通に楽しんでしまった。サザリアンとは違う料理が美味しかった。

「他に食べたい物はない?」

「この髪留め、マリレーヌに似合うわね」

と、カロリーヌさんとリシューさんが、私に色々と買ってくれたりもした。

そうして、目的地であるスカレティア皇国に到着すると、ここでは服を何着か買ってから、すぐにリシューさんの職場に向かう事になった。

「昨日の夜に、“挨拶がてらにお茶をしよう”と、父から魔法での連絡があったんだ」

と言われたから。まさか、スカレティアに到着したその日に、リシューさんの父に会うとは思わなかった。リシューさんの父という事は、私の雇い主になるかもしれない人だから、何とか良い印象を持ってもらえると良いけど。

ー結局、一体どんな仕事なのか聞いてなかったけど、大丈夫かな?ー

そうして、やって来たのは皇城だった。

確かに、リシューさんの父親が皇城付きの文官だと言っていたから、リシューさんの職場も皇城になる。だからと言って、お茶をするのに皇城で──とは、普通の文官ならあり得ない。でも、それがあり得ると言うなら……。

「まさか、こんな可愛らしい人だとは思わなかったわ。 我(・) が(・) ス(・) カ(・) レ(・) テ(・) ィ(・) ア(・) にようこそ!」

「本当に、遠くからの移動で疲れているところすまないね。 殿(・) 下(・) がどうしても、会ってみたいと仰るものだから……」

「いえ、そう言っていただいて、光栄です」

ーどうしてこうなったの!?ー

皇城に到着してから、すぐに案内されてやって来た部屋には、リシューさんの父親で、カロリーヌさんの兄のブレイデン=コペリオン伯爵と、スカレティア皇国の皇太女ビアンカ様が居た。

「ひょっとして、リシューの父親が、スカレティアの宰相だと聞いていなかった?」

「聞いてません!初耳です!!」

一緒に来てくれていたカロリーヌさんからの、まさかの真実に驚きでしかない。

確かに、宰相は皇城付きの文官だけど、“皇城付きの文官”と“宰相”とでは、意味が全く違ってくる。そもそも、リシューさんの父親が宰相だと知っていたら──

「私の父が宰相で、私がその宰相の補佐官だと言っていたら、マリレーヌさんは私の提案を断っていただろう?」

「勿論です!私なんかが一国の宰相の補佐官の補佐なんて!」

「だから、敢えて言わなかったんだ」

「故意犯ですか!?」

ー恐ろしい!流石は宰相補佐官と言うべきなのかしら?ー

「ぷっ………はははっ……」

そこで噴き出して笑い出したのは、ビアンカ皇太子殿下だった。

「しっ……失礼しました!」

慌てて謝ると、「違うわよ」と言いながら、ふるふると首を横に振った。

「他人にあまり興味を持たないリシューが、“他国の女性を連れ去って来る”と聞いて興味があって……しかも、騙して連れ帰って来たなんて……面白すぎるわ!」

「殿下……」

呆れた顔をするのは、宰相のコペリオン伯爵。ピンク色の髪と瞳で見た目は可愛らしいけど、ハキハキと思った事を口にして笑っている皇太子殿下。

ここに来たのは私の意思だけど、騙されたのは確かだ。

「連れ去ってはいません。騙した……事にはなるかもしれないが……悪い話ではないだろう?」

「それは……」

悪い話どころか、良い話なんだろう。サザリアンに居れば働く事もできず、修道院行きの可能性だってあった。それが、スカレティアでは皇城で働けるのだから、雲泥の差以上の差がある。ただし、私がここで使い物になればの話だけど。