作品タイトル不明
15 決意
帰郷して2週間。
ある程度覚悟はしていたけど、やっぱり離婚した貴族の女性を快く受け入れてくれるような仕事はなかった。平民であれば、それなりに受け入れてくれる所はあるけど、貴族ともなれば、色々と問題があるそうだ。
『そんなに急いで職を探さなくても、ゆっくりすれば良いよ』と、叔父と叔母は言ってくれるけど、私が“不安要素”になる前に何とかしたい。私がホランドに戻った事で、ホランド伯爵の座を狙っている──なんて噂にでもなったら、たまったもんじゃない。家門から外してもらう事も考えたけど、それは叔父と叔母に止められた。
『可愛い姪に、そんな仕打ちはできない!』
そう言ってくれるのは、本当に嬉しいけど、だからこそ迷惑を掛けたくない。
ーどうすれば良い?ー
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悩む日々を過ごして、更に2週間。
今日は、朝から庭園で来客の為の準備をしている。
ここにも、私専用のスペースがある。ここには、私が結婚するまでは私が植えて育てていた花が、今でも綺麗に咲いている。私が結婚して居なくなった後も、そのまま世話をしてくれていたそうだ。蝶もヒラヒラと飛んでいる。
ブレイザー家の私の庭園は、たった数日で奪われてしまったけど。
とにかく、今日はこのスペースの近くにあるガゼボで、来客とお茶をする予定だ。
「マリレーヌ様、お2人をお連れしました」
「ようこそいらっしゃいました」
「お久し振りです」
「お招き、ありがとうございます」
ノエラの案内で、このガゼボにやって来たのは、カロリーヌさんとリシューさん。
「お久し振りです。お元気そうで何よりです。そろそろ帰国すると聞いたので、会えて良かったです。あちらにお茶を用意しているので、どうぞ」
「「ありがとうございます」」
「もう、伯爵夫人でも、ブレイザー家の主治医でもないので、私の事は気軽に“マリレーヌ”と呼んでください。勿論、敬語もいりません」
「なら、マリレーヌも、あまり堅苦しくしないでちょうだい」
「ありがとうございます」
それから、お互いこの数日の事を話し合った。その話から、やっぱりこの国では、離婚した貴族女性が生活するには辛いものがある──という結論に至った。
「だから、もう一度提案させてもらうけど、一緒にスカレティアに来ない?ウチならすぐ採用だと思う」
「そのお話なんですけど、嬉しい話ですし、受け入れさせてもらいたいと思ったりもするんですけど……私、リシューさん自身の事も、何をしている人なのかも知らないので、二つ返事で受け入れるのも……」
勿論、カロリーヌさんの甥だから、悪い人じゃないだろうし、変な仕事をしている事はないんだろうとは思う。でも、仕事内容も分からないのに、簡単に「行きます」とは言えない。
「簡単に言うと、皇城付きの文官の父の補佐をしているんだ」
「皇城付き!?」
「うん。だから、変な仕事ではないし、きっちり給料も払うから、安心して来てくれたら良いよ。まぁ……研修期間は設けさせてもらうから、その間の給料は少し少ないけどね」
皇城付きの文官ともなれば、かなりの能力が求められるはず。私に務まるの?
「私は色眼鏡なしに、マリレーヌさんなら大丈夫だと思ったから声を掛けたんだ。だから、マリレーヌさんが本気で自立したいと思っているなら、試す価値はあると思う」
「私も、数年マリレーヌを見て来たけど、大丈夫だと思うわ」
アシュトンと結婚するまで、領地運営についての勉強をしていたし、結婚してからも微力ながら手伝いもしていたから、最低限の知識はあると思う。この国で働くのが難しいなら、スカレティアに行って試してみるのも良いかもしれない。
「私の知識がどれほど通用するかは分からないし、ひょっとしたらリシューさんに迷惑をかけてしまうかもしれないけど、私を一緒に連れて行ってもらえますか?」
「勿論だ!」
「ありがとうございます」
「こちらこそ礼を言う。ありがとう!」
「そうと決まれば、色々と手続きを始めないといけないわね。それと、不安材料は少しでも潰しておいた方が良いわよね……」
不安材料とは?潰すとは?
カロリーヌさんの言っている事がいまいち分からずに、首を傾げると、カロリーヌ様から、いくつかの“不安材料”を説明してもらい、リシューさんからは“潰す”意味を説明してもらった。それらの話は『なるほど……』と思うような、ある意味少し怖い話だった。
有り得ない話だとは思うけど『念には念を』という事で、叔父と叔母にも相談した結果、リシューさんの提案の通りにする事になった。
その提案を実行するのも、出国手続きにもかなりの時間がかかる──と思っていたのに、全ての手続きは1週間も掛からずに整い、お茶をしてから2週間後にはスカレティア皇国に向かう事になった。
ーこんなにも簡単にいって、大丈夫なの?ー
と、ある意味少し心配になってしまったけど、このまま前に進むしかない。
何故こんなにも早くスムーズに進んだのか──その理由は、スカレティア皇国に着いてすぐに知る事になった。