軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十六話

待て待て待て待て。どうした女子高生。

私のテンションと全然違う感じの、シリアスな言葉来ちゃったけど!?

異世界でスローライフいえーい! って生きていこうとしてた私に対し、彼女はもしや、かなりの意気込みだったのか…?

うん。そういえばそうだった……。

異世界初日から彼女は聖女であると主張し、すぐさま祈り、私を敵視していた。

仕事に疲れすぎていた私は心が死んでいたため、気にしていなかったが、初日からそんなのができるっておかしいよな……。

すごい入れ込んでたしな……。

というか、さっきザイラードさんの様子が変だった。

「ザイラードさん大丈夫ですか」

「……ああ。体が一瞬、動かなかった。とにかく追う」

ザイラードさんはすでに女子高生を追うために走り出そうとしている。体の調子を見るために、手や肩を動かしているが、大丈夫そうだ。

ザイラードさんを追って、私も走る。

室内を走るのは行儀が良くないが、今はしかたないね。

そうして、外へ出てみると……。

「さむっ」

寒い。私が外でうろうろしていたよりもさらに寒くなっている。そして、雪が膝まで積もっている。

こわい、雪国。ほんの一時でこの積雪。

吹雪ではないが、しんしんと降り積もり、すべてを白で覆いつくしている……。

「アイスフェニックス……!」

積雪の多さに気を取られ、足を止める。

すると、一緒に走ってきた騎士のだれかが声を上げた。

釣られて空を見上げれば、そこには水色の大きな鳥。地上から20mぐらいのところかな。

「わぁ……大きい……。あと、きれい……」

降ってくる雪が邪魔で、はっきりと姿は見えないが、大きさ的には小型ジェットぐらいある。

大きかったころのレジェドやシルフェに比べれば二回りぐらい小さいが、それでもあんな巨大な生物が空を飛ぶなんてびっくりだ。

そして、とてもきれいだ。

羽? がクリスタルみたいな感じで、透明できらきらと光っている。それが光の屈折で私には水色に見えているんだと思う。

伝説の魔物と言われたら、たしかにそうだ。こんな美しい姿を見たら、呆然としちゃう。

そんな中、女子高生は――

「祈ってる……」

祈ってるわ。こんな雪の中。

女子高生が進んだらしき道が降り積もる雪に線を走らせている。

膝まで積もった雪を走っていくのは大変だっただろうが、まだ降り始めで、雪が硬くないから大丈夫だったのだろう。

女子高生はアイスフェニックスの斜め下のあたりで、手を組み、一身に祈っていた。

きらきらと輝く美しいアイスフェニックスと美人な女子高生。降り積もる雪が一枚の絵のように幻想的だ。

ただ……。

「ア?」

――全然、効果がない!

なにも……なにも起きている気がしない。むしろ、アイスフェニックスの目つきが鋭くなった気がする。

そして、ビュウッと風が吹き、雪が舞った。

「……っ魔法障壁を!」

「はいっ!」

ザイラードさんの指示で、アイスフェニックスと女子高生との間に、青いシールドが張られる。

瞬間、そこに向かって、アイスフェニックスが羽ばたいた。

バキンと壊れていくシールドと、突き刺さっている、透ける羽。

どうやら、アイスフェニックスは羽を飛ばして、攻撃したようだ。

すごいスピードでまっすぐに突き刺さったから、あれはもはや投げナイフのようなものなのでは……? あれが直接当たったら、普通に危なくない……?

大量のナイフが一気に投げてこられることを想像し、背筋が冷たくなる。

「危ないよ! こっちに……っ!」

思わず、大きな声が出た。

そして、雪の中を走る。ただ、雪が深くて、全然、スピードがでない。ほぼ徒歩。

そんな私の隣をザイラードさんが雪を舞い上げながら、走り抜けていって――

「もういい、やめろ!」

「い、いや……! 私は……私はできるの……! できないと……、だって……!」

ザイラードさんは女子高生の元まで走ると、その背に女子高生を庇った。

けれど、女子高生はザイラードさんの前に出ようと、もがくように雪を蹴る。

「そこをどいて!」

「今は個人の願いを叶えている場合じゃない! 死ぬぞ!」

「……っ、私なんかどうせ……!」

後ろに下がらせようとするザイラードさんと、それでも前へ出ようとする女子高生。

そして、雪をうまく走れない私。

アイスフェニックスがそれを鋭い目で見降ろしていて――

ああ――もうっ!

「レジェド、力を!」

「オウッ!」

防寒着の胸元にすっぽりと挟まっていたレジェドがうれしそうな声を出す。

その途端、私の体がきらきらと光った。

目測、よし! 力加減、このぐらい!

「『とう』」

息を吸って、息を吐く!

すると、私の口からまっすぐの光線が伸び、ちょうど女子高生とザイラードさんまで伸びた。そして、そこの雪がジュッと溶ける。

さすが私。無駄な才能! ブレスの吐き方がうまい!

ばっちりと除雪された道を一気に走っていく。

「シルフェ、力を!」

「ウンッ!」

私のうしろを走ってくるシルフェに声をかける。

その途端、私の体がきらきらと光った。

「ザイラードさん! 吹き飛ばします!」

「っ、わかった!」

私の言葉を合図にザイラードさんが女子高生から体を離す。

女子高生はなんのことだかわかっていないようで、驚いたように私を見つめた。

私は女子高生とアイスフェニックスの間に滑り込み――

「『えい』」

触れたのは、女子高生の胸元あたりの空気。

ここを圧縮させて……そのまま解放!

すると――

「えっ――わぁ!?」

女子高生の体が騎士団の建物に向かって、飛んでいった。

「受け止めてあげてください!」

「は、はいっ!」

体をくの字に曲げて、後ろ向きに飛んでいった女子高生を騎士の一人が受け止めてくれる。

女子高生にケガはないようで、ただ目を開いたまま私を見ていた。

さすが私。コツをつかむのが早い! 圧縮による空気の力を活用することもできちゃう!

「そのまま、危なくないようにお願いします!」

騎士に女子高生を捕まえていてもらおう。

というわけで。

「あとは君だけ!」

見上げれば、そこには美しい水色の鳳。

レジェドやシルフェに力を借りてもいいけれど、やっぱりあれだよね!

アイスフェニックスの美しい金色の目と見つめ合う。

アイスフェニックスはこくんと頷いたように見えた。

「よし!」

光れ、右手!!

「かわいくなぁれ!」

上空のアイスフェニックスに右手をかざす。

すると、水色の巨体がきらきらと光って――

「ホーン、コンナ気分ナンヤネ」

――みるみると体が小さくなる。

そして、ゆっくりと地上に降りたアイスフェニックスは物珍しそうに自分の体を見つめた。

「ナンヤ、ケッタイナ体ヤナ。モウコレ、飛ベヘンノトチャウカ?」

……? ん? 関西弁……?

さらにこの体は……?

「ペンギンじゃん」

ペンギンじゃん。水色の。