軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十五話

アイスフェニックスってなんかすごそうだな。

あと、フェニックスって火のイメージはあるけど、氷のイメージはなかったなぁ。

「アイスフェニックスか! 準備を急げ!」

「私が行きます!」

ソファに座ったままの私に対し、第一王子と女子高生はガタッと音をさせて立ち上がった。

ザイラードさんも立ち上がり、まずは報告した騎士を労う。さらに、近くの村への伝達の依頼もしていた。

そして、たくさんの防寒着を持った騎士たちがやってきて、応接室にいた全員に配っていく。第一王子と女子高生、王宮騎士の分も用意できたようだ。

ザイラードさんは防寒着を羽織りながら、それぞれに指示を飛ばしていく。

そして、合間にふぅとため息を吐いた。

「レジェンドドラゴン、シルバーフェンリル、そして次はアイスフェニックスか……」

「強いんです?」

「ああ、伝説の魔物だ。なぜこんなにも短期間で……」

ザイラードさんの呟きに右肩と足元を見る。

レジェドとシルフェ。二人とも伝説の魔物だったが、私に手をかざされ、こんなにかわいくなった。

ということは――

「……私も、行きます」

一応。一応ね。

また手をかざせばOK! とは思っていないが、すくなくともシルフェやレジェドの力が役に立つかもしれない。

部屋に漂う緊迫した空気から感じるに、きっとよくないことが起きている。

過去、レジェドが国を滅ぼしたように。シルフェが地形を変動させたように。今回のアイスフェニックスがこの国や土地に被害を及ぼす可能性があるのだろう。

ようやく立ち上がった私は防寒着を羽織る。

すると、ザイラードさんは申し訳なさそうに眉を下げた。

「……あなたはいつも、俺たちを救ってくれるのだな」

「いやいや、一度も救ったつもりはないんですけどね」

本当に。まったく。

が、それはそれとして、アイスフェニックスにより騎士団や近隣の村に被害が出るのは困る。

村にはマリーゴさんやその親戚、家族、友人がいるのだ。

私はここの生活がとても好きだし、マリーゴさんにまたお菓子作りを教わりたい。

ならば、「えい」も「とう」もやろう。はたらこう私。

「では、みなで一致団結していくぞ!」

「はっ」

「指示はザイラードに任せる!」

「ああ」

第一王子が王宮騎士へ檄を飛ばし、そのまま権限をザイラードさんへと譲る。流れるような委譲。

「では、シルバーフェンリルと戦ったときのように、王宮騎士は魔力障壁を作ってくれ」

「はい!」

「第一王子と少女の護衛はこちらが引き受けよう」

今日の王宮騎士は五人。事件の報告でやってきたわけではなく、道の崩落と修繕を見るだけの予定だったから、突然のことで人数も武器も足りていないはずだ。

けれど、ザイラードさんの言葉に力強く頷く。

さすが第一王子付きの王宮騎士の人たちだ。精鋭なんだろう。そして、王子の無茶ぶりにも耐えているのも予想できる。

さすがだなぁ。

すばらしい働きぶりがまぶしすぎる。

そして、魔法が使える王宮騎士が力を発揮できるよう、また、地理や周囲との関係の調整ができる第七騎士団の騎士たちが護衛の仕事をするわけだ。

まぶしい。みんながまぶしい……。

思わず、目をしばしばさせていると、女子高生が一歩前へ出た。

そして――

「――私には護衛は必要ありません」

まさかの。当人の護衛拒否。

そんな女子高生をなだめるように、第一王子が手で制した。

「しかし、あなたは聖女だ。その身に危険なことがあっては困る」

「私には力があります。必ず、今度こそ……うまくやる……」

女子高生は手をぎゅっと握り込んだ。

「……私がやりますから!!」

そう言って、突然、扉に向かって走る。

咄嗟のことで、全員の体が動かなかった。

そんな中、ザイラードさんだけは素早く反応して――

「待て! 一人は危険だ!」

ザイラードさんの手が女子高生へ伸びる。

――これなら止められる。

そう思ったんだけど……。

「カッ!」

女子高生がキッとザイラードさんを睨む。そして、口から空気の破裂するような音がした。

その途端、ザイラードさんの動きが、ぎくしゃくと不自然に遅くなり……。

「私は……居場所を作る……! もう、消えない……!」

ザイラードさんの手をすり抜けていく女子高生。

その言葉を残し、応接室を飛び出していった。