作品タイトル不明
8.あなたと一緒に(9)
リディアは、レイやカーティスの話からわかったことを、順を追って話した。
国王は眉間にしわを寄せたまま、話に聞き入る。
「──言っていることはわかった。しかし、すぐに信じろと言われても無理だ。アシュレイが生きていただと? しかも、こやつのフォシニとして?」
国王は混乱を隠さぬ様子で、額に手を当てる。
「はい。生きています」
「では、肝心のアッシュはどこに?」
「今、ここに向かっているはずです」
リディアは入り口に目を向ける。ちょうどそのとき、騎士が歩いてくるのが見えた。
「陛下! 謎の魔術師を連れて参りました」
そう言う騎士の後ろにいるのは、レイとカーティスだった。
「リディア!」
レイはリディアに気付くと、真っ直ぐに寄ってきてぎゅっと抱きしめる。
「俺、魔獣三匹やっつけて結界も元に戻したよ」
「うん、頑張ったね」
褒めてくれと言わんばかりの甘えん坊モードのレイに苦笑しつつも、リディアは頭を撫でてやる。
レイは嬉しそうに、目を細めた。
一方の国王は、レイを見て目を大きく見開いた。
「銀色の髪……。それに、サファエルとよく似ている……。しかも、アッシュが魔獣を倒して結界を再構築しただと?」
「はい。複数の目撃者がおりますので間違いありません」
レイを連れてきた騎士が答える。
「類まれなる大魔術師であるということは認めよう。だが、この者がアッシュであるという証拠はあるのか?」
国王はリディアに尋ねる。
リディアはチラッとカーティスを見た。
「はい。証拠はございます」
「バカな!」
カーティスの発言に驚いて声を上げたのは、未だに苦しみ続けているダリウスだ。
「陛下。この者達は嘘を言っています! 信じてはなりません!」
「黙れ! 嘘かどうかを判断するのはこの私だ!」
国王はダリウスを一喝する。
「それで、証拠とやらを見せてもらおうか」
国王は視線を鋭くする。カーティスは動揺する素振りもなく、堂々とした態度で周囲を見回した。
「魔力には人それぞれに特徴があり、通常、他者の魔力を自分の魔力として使用することはできません。しかし、フォシニの刻印を施した場合はこの魔力の違いを打ち消し、供給する側の意思に関わらず魔力を奪うことができます」
カーティスの説明に、その場にいた多くの人々は頷く。彼の言うことは、ごく一般的に知られている常識だ。
「しかし、このフォシニの刻印がなくても魔力を融通できる例外があります。それは、血のつながった血縁者です」
カーティスはレイとサファエルに目配せをした。ふたりが手を繋ぐ。
すると、鈍い光が発し、サファエルに魔力が移ってゆく。
「サファエル殿下。あなたは今、体に痛みや違和感を感じますか?」
カーティスは尋ねる。
「いいや、全く。むしろ、多くの魔力に溢れていつになく体が軽い」
サファエルは答えた。
カーティスは、満足げに口の端を上げる。
「間違いありません。レイさんは、アシュレイ殿下です。もしまだお疑いになるなら、今度は陛下と魔力の融通をすることも可能です」
その場にいた、誰もが息を呑んだ。
「……生きて、いたのか」
重臣たちのざわめきが大きくなる。
リディアは声を張り上げる。
「陛下。ダリウス・クロウウェルは、第二王子殿下をすり替え、死を偽装し、長年フォシニとして利用続けていました。証人は、ここにいる者たち全員です!」
国王の顔が、怒りに歪む。
「ダリウス・クロウウェル」
重い声が響く。
「王族誘拐、殺人、死の偽装、王族へのフォシニ契約……いずれも重罪である」
ダリウスは床に這いつくばったまま、苦しげに顔を歪める。
「この者を、拘束しろ。連れて行け」
あっと言う間に衛兵が現れ、ダリウスを引きずっていく。
その背中を、レイは黙って見ていた。リディアはそっと彼の手を握る。
「……終わったね。もう逃げなくて大丈夫だよ」
「うん。ありがとう、リディア」
レイは微笑む。その表情は、見ているリディアが清々しく感じるほど、すっきりしていた。
本当の意味で、レイが過去から解放された日だった。