軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.あなたと一緒に(8)

◇ ◇ ◇

一方その頃、王城では緊急会議が招集され、緊迫した様子を見せていた。

「結界が急に消えるとは何事だ! ダリウスは何をしている!」

声を荒らげたのは国王だ。

「執務室には姿が見えず、地下の研究室にいないか部下に確認に向かわせました」

冷や汗をかきながら頭を下げるのは、魔法庁の幹部の一人だ。

「早く見つけ出すのだ! それと、今いる王宮魔術師を総動員して結界を修復せよ」

国王は強い口調で命令する。

「かしこまりました」

幹部の男は頭を下げると、慌てて出て行った。

国王は額に手を当て、背もたれに体を預ける。

都市を守るための大規模な結界が急に消えたのは三十分ほど前のこと。

最初に報告を受けたときは、誰もが冗談を言っていると半信半疑だった。しかし、魔獣が現れたという情報まで続けてきて、皆これは事実なのだと理解した。

ダリウスが大魔術師と称賛され強い権力を持つようになったのには、理由がある。圧倒的な魔法の技術と魔力量を誇る彼が現れたことにより、結界の性能が飛躍的に伸びて、魔獣による被害が急減したのだ。

国はその見返りに、ダリウスに魔法庁長官の地位を与えただけでなく、歴代長官とは比較にならないほど多くの権限を与えた。

例えば、私的な魔術師部隊を持ったり、王族に自由に会える権利などだ。

「一体どこに行った?」

そのとき、バシンとドアが開いて騎士が会議室に飛び込んできた。

「国王陛下にご報告申し上げます」

「今度はなんだ! 今、結界のことで取り込んでいるのがわからないのか!」

「それが……先ほど魔獣たちが暴れているあたりに謎の魔術師が現れ魔獣を一掃しました。それだけでなく、ひとりで結界を修復しました」

「なんだと! ダリウスではないのか!?」

「違います。まだ若い、青年です」

騎士は緊張の面持ちで答える。

「こうしてはおれん。お前達、至急事実確認を。それとお前、その謎の魔術師を連れてくるのだ! 必ずだ!」

国王は周囲に指示を出す。

もし騎士の言うことが事実ならば、その〝謎の魔術師〟はダリウスと同等の力を持っている。国王として、そんな才能をみすみす逃すことはできないと思った。

臣下達が慌てて事実確認に向かう。それと入れ替わるように、先ほどとは別の魔術師が現れた。

「国王陛下。ダリウス長官が見つかりました」

「おおっ!」

国王はこれで一安心だと喜色を浮かべる。しかし、魔術師の背後にいる人物を見て驚く。

そこには、第三王子のサファエルがいたのだ。それに、見知らぬ若い女、そして、中年の男も一緒だ。中年の男は、ボロボロになった服を着た人間を引きずっている。

「サファエル? お前がどうしてここに? それより、これは一体どういうことだ⁉」

第三王子のサファエルは病弱で、普段王宮の敷地内にある離宮に引きこもっている。舞踏会のときすら滅多に参加せず、用もなくこんなところに来る人物ではない。

「ダリウスを探しているとお聞きして、連れて参りました」

サファエルは視線で、中年の男が引きずっている男を指す。

引きずられる男がダリウスだと認識した国王は目を見開いた。

「お前はダリウス? こやつは一体どうしたのだ? 傷だらけだし、ひどく苦しんでいるように見える」

「フォシニでない者の魔力を取り込み、体内で魔力が暴走しているんです」

サファエルは感情の籠らない口調で答える。

「フォシニでないものの魔力を? どうしてそんなことを?」

「それは私が説明しましょう」

今度は、リディアが一歩前に出る。

「そなたは?」

「はじめまして。グリーン子爵家のリディア・グリーンと申します」

リディアは頭を下げ、既に縁を切った実家の家名を名乗った。

貴族であるかどうかは、周囲を信頼させるために重要な意味を持つ。そのため、大いに利用させてもらうことにしたのだ。

「グリーン子爵家か。魔術に長けた名家だな。しかし、そこの令嬢が一体どうして?」

国王は未だに解せない様子だ。

「はじまりは、今から二十二年前のことです──」