軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25 調査隊の報告

25 調査隊の報告

「戻ったぞ!」

バタンッ!と、ギルドの分厚い扉が勢いよく撥ね退けられた。

先頭にいた斥候役の冒険者が、砂埃を払うように肩を叩きながら中へ入って来る。

騒がしかったロビーが、一瞬で静まり返る。次の瞬間、冒険者たちが一斉に顔を上げた。

「おっ、帰って来たか」

「どうだった?」

「生きてるな」

「当たり前だ」

笑い声が広がる。

わたしはカウンターから身を乗り出した。

「おかえりなさい。どうでした?」

調査隊の中心にいたベテラン斥候が、喉を鳴らして水を飲む。

それから、大きく息を吐いた。

「中は、とりあえず安心だ」

その言葉に、周囲の空気が少し緩む。

「どうも、あの入り口は水害のせいだな。山崩れと水の流れで、事故で穴が開いたようだ」

「自然に空いたんですね」

「あぁ。正規の入り口じゃねぇ」

斥候は椅子へ腰を下ろしながら続けた。

「中へ入ると、長い通路が左右へ分かれていた」

ギルドマスターが腕を組む。

「空気は?」

「流れてた。右から左へな。だから、先に左を調べた」

「左を先に調べたのか」

「あぁ、奥に繋がってる気配がしたんでな」

「なるほど」

わたしはうなずいた。

周囲の冒険者たちも真面目な顔で聞いている。

「それで左は?」

「行き止まりだった」

ロビーがざわめいた。

「行き止まり?」

「広い部屋もなかったのか?」

「ない。行き止まり」

斥候は机の上へ簡単な地図を書き始める。

「問題は右だ」

その言葉に、ギルドの空気が変わった。

「長い通路が続いてる。分岐も多い。かなり深いぞ、あれは」

「魔獣は?」

「気配はある」

冒険者たちの顔が引き締まる。

「たぶん奥にいる。ただ、通路までは出て来ない」

誰かが言った「礼儀正しいな」の言葉に笑いが出る。

ギルドマスターが、主にわたしへ説明するように言った。

「普通のダンジョンなら、正規の入り口から順番に進んでいく。浅い階層で腕を鳴らし、少しずつ潜度を深めていくのが定石だ」

「そうですね」と、わたしは頭の中に構造図を描きながらうなずく。

「だが、今回は崩落した横穴……いわば『勝手口』から入っている。本来の進行ルートを大幅にショートカットしている可能性がある」

斥候がにやりと笑い、無骨な指で地図の先を叩いた。

「下手すりゃ、いきなり中層か深層へお目見えだ」

「……っ!」

途端、ロビーに野太い歓声が上がった。

「いきなり強いやつと戦えるってわけか!」

「安全な通路を歩いて、好きな獲物を選び放題ってことか?」

「うわぁ」と嬉しそうな声が聞こえた。

冒険者たちが笑いあっていた。

わたしは、机の上の地図を見つめた。

行き止まりと長い通路と分岐。

そして、正規ではない侵入口。

「これは、調査隊を入れても大丈夫ということですね」

わたしがそう言うと、ギルドマスターが渋い顔でうなずいた。

「そうだな」

口では認めている。

けれど、その顔には警戒が残っていた。

それくらいわかる。完全な安全はない。

だからこそ慎重になる。

わたしは少し考えてから、口を開いた。

「調査の前に、正規の入り口を探してもらえますか?」

「理由は?」

「場所の確認をしておきたいんです」

わたしは地図を指差した。

「場所を確定したいです。本来の入り口がどこにあるかで、この場所の『資産価値』と管理方法が変わってきますので」

「さすがだな」

ギルドマスターが目を細める。

周囲の冒険者たちが「なるほど」とうなずいた。

ギルドマスターは、しばらく黙っていた。

それから、ゆっくりうなずく。

「そうだな」

低い声だった。

「どこに頼むかは、こちらに任せてくれ」

「お願いします」

わたしが頭を下げると、ギルドマスターは地図へ視線を落としたまま言った。

「さて」

その声に、ロビーの空気がまた変わる。

「本格的に忙しくなるぞ。調査が終わるまでちゃんと待て。それまでは入っちゃいかんぞ」

冒険者たちの顔に、笑みが浮かんだが、納得してない。

これだから、実体を知るのが大事なのだ。こんなに冒険者が乗り気になるとは予想してなかった。

そして、わたし自身も。

「なんで、わたしまでわくわくしてるんでしょうね」

隣で聞いていたマイクが吹き出した。

「もう立派な冒険者だからだろ」

「嫌な自覚ですねぇ」

そう言いながらも、わたしの視線は、机の上の地図から離れなかった。

これからわたしは王宮に行って入り口を押さえる準備をしなくては。

わたしの冒険は王宮から始まる。