軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

152話 伝える

コアのある部屋で目を覚ました。

「おかえりなさいませ」

「俺が向こうに行ってから戻ってくるまでどれくらい時間経ったかわかる?」

「5分31秒です」

えっ、それしか経ってないの?

俺、向こうに数時間いたと思うけど。

時間の流れが違うのか、気を利かせてすぐの時間に戻してくれたのかどっちだろ。

……まぁいいや。もし数時間経ってたら3階層で待たせている人達への言い訳どうしようって思ってたけど、5分なら特に言い訳はいらないだろう。

「じゃあ早速隠し部屋に戻ろうと思うんだけど、俺が向こうに行っていたことって伏せれる?」

「可能です」

「じゃあ伏せといて。……もしかして俺次第で開示する情報変わったりする?」

「はい。町田様が望まなければ全てを話さない、ということも可能です」

俺のダンジョンで権限とやらを解放したから、俺次第になるのかな。

「とりあえず人類も地上で魔法が使えることは俺から最初に言うよ。地球が今どんな状況で、どうしてダンジョンができたのかはシーニィから言ってくれる?」

「承知しました」

話す方向性を決めたところで、3階層に戻ろう。

「シーニィの能力で3階層に戻れたりする?」

「いいえ。私が飛べるのはコアのある部屋のみです」

「俺いなくてもダンジョンのコアに飛べたりする?」

「それはできかねます。ダンジョンマスターがいないとコアの座標が捉えられません」

「……それ、逆に言うとダンジョンマスターさえいたらダンジョンの外でもコア部屋に飛べるってこと?」

「はい。可能です」

「まじかよ」

ってことはわざわざ政府の人にシーニィを日本に連れてきてもらわなくてもなんとかなったじゃん。

俺がイギリス一回行って帰ってきて、その後500万ポイントで買える空間転移の水晶で不法入国して帰りはシーニィに頼めばいいんだから。

もっと早く知りたかった。

……まぁいいか。今後のこと決めるなら政府の人間がいた方が都合がいいし。

魔法陣を使って3階層に戻る。

「お待たせしました」

「遅かったな」

向こうに行っていた時間まるまるカットされてるから、シーニィと話していた時間含めて10分も経っていないと思うが、待っている側からするとそれでも長いんだろう。

軽く謝って、着席した。

「では本題に入る前に、俺が伏せていた事を開示しますね。スキルとは別に魔法という概念が存在しています。スキルはダンジョン内のみ使えるという制限がかかっていますが、魔法は魔力を操れさえすればどこでも使えます」

「まっちー、それは……人類は地上で魔法を扱えるということか?」

「はい」

「待ってくれ、そんな……あり得ない」

人類が魔法を使えるという事実に、この場にいる全員驚いているようだった。

「事実です。魔法を使えるようになる流れを説明しますね」

もし、人類が地上で魔法を使えるようになったら、常に武器を持ち歩いているような状態になる。治安が悪くなる可能性が高い。

それを望んでいなかったから、奈那さんにさえ魔法のことは伏せてきた。

しかし、地球の魔力溜まりをなんとかする必要があるという話を聞いて考えが変わった。

現状、そう急ぐ必要もなさそうな雰囲気だったけど、のんびりしてたら急に次元が衝突するかもしれない。そうなった時、まずダンジョンのある仮の次元がぶつかるんだから、ダンジョンマスターの俺はたぶんその時に死ぬ。

なので、魔法を広めてもっと積極的に魔力を消費させていった方がいい。

その際、無闇矢鱈と広めるよりは、政治家にあらかじめ話しておいて、法整備を任せた方がいい。

全投げともいう。

俺の説明を八杉大臣はメモしながら聞いていた。

奈那さんはもちろん、護衛の人たちの耳にも当然入っている。

日本で魔法をどういう扱いにするのか。それが決まるまで広まらないといいね。もし先に広まっても俺は知らないから頑張れ。

魔法の説明が終わると今度はシーニィからの話だ。

当然のように異世界の存在について話されるが、こちらは案外みんな驚かずに聞けている。

魔法のことの方が衝撃的だったのかな。

「……まだ全てを理解したとは言えないが、事情はわかった」

「ふむ、いくつか気になることがあるのだが、質問してもいいだろうが?」

「どうぞ」

「では聞くが、そちらの世界に住む人間と直接やり取りすることは可能だろうか?」

「現状では不可能です」

「つまり、今後はできる可能性があると?」

「技術が発展すれば不可能ではないでしょう」

俺も向こうで似たようなことを聞いたな。

出来るかできないかでいったらすでにできる技術はある。しかし、素材の関係で向こうの技術をこっちで再現するのが難しいらしい。

電話って2つないと通話できないもんな。

裏技としてダンジョンのショップに通信機器を追加すればいけるらしいけど、それは断った。誰に託すのか決めるの面倒だし、異世界へと繋がる通信機器の存在でまた政治家達で揉められても困る。

その後も質疑応答は続いた。

奈那さんから質問は俺にない視点ばかりだったけど、ちょっと話す内容がニッチすぎてついていけなかった。

次元の広さは銀河何個分とか、次元と次元の間には何があるのかとか、次元の終わりには何があるのかとか、異なる次元の観測方法とか、宇宙の始まりや次元の始まりについてとか、地球の生態系との差異とか、重力とか時間についてとかまだまだある。

八杉大臣はそんな奈那さんの勢いに押されながらも、なんとか最低限の質問をした感じだ。

この事実を他の人間にも広めてよいのかとか、次元衝突までのタイムリミットとかだ。

この質疑応答は大体4時間くらい続いた。

八杉大臣が止めなければまだまだ奈那さんは質問を続けただろう。

「少し不服だが、今日はこれくらいにしておこう。シーニィさんはしばらくはイギリスに帰らないんだったな」

「というより、今後の予定は未定となっております」

「あ、それなんだけど、シーニィをダンジョンの素材を扱っている技術者に会わせるのって可能ですか?技術が発展すれば向こうとの通信ができるようになるなら、会わせておいたほうがいいと思うんです」

「それは一理あるな。八杉さん、どうだろうか」

「会わせるならできれば俺と関わりがある特殊研究所だと嬉しいです。融通が効くので」

「検討してみるよ」

検討するは断り文句でもあるけど、ここで研究者に会わせないという選択肢はないだろう。国は情報を得たいからここにシーニィを連れてきた。シーニィと技術者を合わせて通信ができるようになるなら、もっと情報を得られるようになる。

会わせる相手が特研になるかはわかんないけどね。

奈那さんに誘導を頼んでおこうかな。

とりあえずこの場は解散となり、また話し合いの場を求めるか聞かれた。

聞きたいことは向こうで聞けたし、俺にはAIがいる。何か気になったらこっちに聞けばいい。

もしシーニィに聞きたいことが出来たら、奈那さんを通じて連絡するからあとは勝手にやってくれと伝えた。

八杉大臣とシーニィ、護衛達は黒い車に乗って帰っていった。

「奈那さんは一緒に帰らなくていいんですか?」

「あぁ。まだまっちーに聞きたいことがあるからな」

「奇遇ですね。俺も奈那さんに聞きたいことがあります」

ということで、2人で隠し部屋に戻ってきた。

シーニィ達を帰す時に探索者の注目を浴びたので、今度は隠遁者スキルを使って騒ぎが落ち着いてから部屋に入った。

「奈那さんからお先にどうぞ」

「では遠慮なく。シーニィさんの権限を解放しこの部屋に戻ってくるまでの間で、まっちーはいったい何を知ったんだ?」

「何をと言われても困りますね。漠然とし過ぎてて」

「まっちーはシーニィさんの話に何一つ驚いていなかった。その後の質問タイムでもまっちーは1つも質問することはなかった。もしかして、まっちーはすでにあの時、知りたいことはすでに知れた状態だったんじゃないだろうか?権限の解放がすぐ終わっていたとしても、私たちの待ち時間はせいぜい10分ほど。その間に何を知って満足したのか非常に気になる」

別に奈那さん相手には隠そうと思ってない。なんならむしろ伝えるつもりでいた。

でも違和感に気づかれるとは。流石だな。

「あの時間、俺は向こうの世界にお邪魔してました。で、帰ってくると5分しか経ってなかったんです。向こうで散々質問したから、こっちで追加で質問する必要なかったんですよね」

「なに!」

奈那さんは勢いよく立ち上がった。

魔法のこと聞いた時でも座り続けていたのに。

「それはつまり向こうの世界をその目で直接見たという事か?」

「見ました。いや、直接というと違うのかな?向こうに行ったのは精神だけだったので」

「待ってくれ。聞きたいことがありすぎてどう質問したらいいのかまとまらない」

言葉に詰まるとは珍しい。

「えーと、じゃあ状況を1から説明しますね」

シーニィの権限を解放した後、向こうからこっちにきてほしいと頼まれて、了承したら向こうに行ったところから、コアがたくさんある部屋から移動した先の部屋で向こうの事情を聞いて、こちらからたくさん質問をして、最後は軽く見て回って帰ってきたと伝えた。

見た光景については詳しく説明したし、シーニィは人ではなく錬魔機人という機械であるということや、向こうで聞いた固有名詞なんかも言っている。

「……私も向こうの世界に行けるか?」

「互いの世界の魔力溜まりが解消し次元が安定したらあるいは、って言ってましたね」

「そうか。すぐには無理なのか……蒼斗くんがまた向こうに行くことはできるのか?」

「不可能じゃないと思いますけど、もう一回行く用事がないです。再訪の約束も特にしていません」

「なんて勿体無いことを」

「改めて言いますけど、会えたのはノクシルという人物だけ。住民の姿は一切見れず、逆に国のトップに自分は見られているかも知れないって状況だったんですよ。地球にはない美しい景色を見られて良かったとは思いましたけど、また行きたいかと言われるとちょっと……」

もし俺に瑛士くらいのコミュ力があったら、もっとグイグイいってプライベートの話もしてノクシルと仲良くなれたかもしれない。そしたらまた会う約束もしただろうが、残念ながら俺は仲良くなれなかった。

ノクシルは良い人だとは思うけど、あくまでも交渉相手の範囲を超えることはなかった。

俺からの質問に全てが全てちゃんと答えてくれた訳でもなかったし。

「奈那さんが向こうの世界を見たいなら、まずは地球の魔力溜まりをなんとかしないとですね」

「そうするしかないのか」

向こうで感じた気になることや疑問を奈那さんに相談したかったが、今からそれをやると長くなる。

それに相談している途中で奈那さんの調子が戻って、追加でどんどん質問されるかもしれない。もしそうなったら俺が聞きたいことが聞けずに終わる。

それは困るので、奈那さんの調子が戻る前に俺の要件を済ませておこう。

「次は俺から奈那さんへ質問いいですか?」

「かまわない」

「ありがとうございます。さっきの話と少し繋がってるんですけど、向こうで色々話を聞いてやりたいことが出来たんですよ。とある事業を始めるために起業したいんですけど……会社の作り方を教えてくれませんか?」