作品タイトル不明
151話 見て回る
色々とノクシルに質問しまくった。
たまに濁されることはあったが、大体はちゃんと答えてくれ、中には要望を出したらその場で対応してくれたパターンもあった。
“ダンジョンマスターの願いはできるだけ叶えたい”という発言は嘘じゃなさそうだ。
「とりあえずは以上です。色々とありがとうございました。お陰で方向性が見えました」
「若島蒼斗様はダンジョンを発展させたいんですね」
「まぁ人がいっぱい来てくれたら嬉しいですから」
「地球の人がたくさん魔力を消費してくれるとこちらも助かります」
「システムさえ出来ればあっという間だと思うんですけど……とりあえず詳しくはまた今度で」
色々聞いていった中で、技術者の知り合いが居ると溢したら、ぜひ紹介してほしいと頼まれた。
最初の方に言っていた技術の交換のためだ。
ダンジョンマスターではない人は俺のようにこちらに来れないらしい。
というか俺も実際にここに居るとは言えない状況だ。
今の俺は精神だけこちらに来て仮の器に入っており、本体はダンジョンコアの近くにいるまま。ダンジョンマスターは体内にあるコアのおかげで帰る場所がわかり元に戻れるが、人類がやると精神が元の身体に戻れないらしい。
奈那さんは絶対こちらの世界に来たがっただろうから、このこと知ったら残念がるだろうな。
まぁでも、互いに魔力溜まりの件が解決したら、次元が安定するから、その後なら世界を行き来できる様なゲートが作れるかもしれないと言っていた。だいぶ先の話になるけど。
ということで、技術の交換といってもどちらかがどちらかの世界に行くことは今の所できないため、しばらくは錬魔機人を通じてのやり取りとなる。そのためには錬魔機人を特研に向かわせないといけないのだが……まぁなんとかなるだろう。
「では最後に、少し周辺を見て回りましょう」
「お願いします」
この世界の風景見るの、1番楽しみにしてた。
部屋を出て、まず案内されたのはここに来た時1番最初に見た噴水とベンチがある場所だ。
今日は休日だから人が居ないが、いつもなら休憩中の職員がいるらしい。
その後は一年中なんかしらの花が咲いているという庭園に連れて行かれ、王城だという白煉瓦造りのでかい建物を見た後、王城の隣にあった高い塔に連れて行かれた。
地の国で2番目に高い場所だそうだ。1番高い場所は王城の天辺だが、俺を王城に入れる訳にはいかないのでこっちで我慢してくれみたいなことを言われた。
階段をぐるぐると登る。
もう100段くらい登った気がするが、まだ終わりが見えない。
ノクシルは息を乱さず平然と登っているが、俺は流石に疲れてきたな……身体強化スキルを使いたい。けど今はスキルは使えない。今の俺はダンジョンコアを持っていないからだ。
あーでも、使えないのはスキルだけで、魔法は使えるのか?
使えたとしても俺ができるのは水を出したり、火を出したりと簡単なことだけだ。そもそも身体強化って魔法で発動できるのか?
魔法を発動させるには最低限、属性・質量・形状・座標の4つの情報が必要である。
質量は俺の身体くらい、形状は俺の身体に沿って、座標は俺だとして、属性はいったい何になるんだろう。創作でよくあるのは無とかだけど、ここで無を選んだら何も変化が起こらない気がする。
身体強化……筋力を上げる……どちらかというと回復魔法に近いのかな。
「若島蒼斗様、大丈夫でしょうか?」
「えっ、はい。別に大丈夫ですけど」
「そうですか。呼びかけても反応が薄かったので、お疲れになったのかと」
「疲れはしましたが、まだ平気です」
「あと少しなので頑張ってくださいね」
その言葉通り、十数段登ると終わりが見えた。
塔の最上部の真ん中には大きな鐘があった。
周囲に壁はなく、柱と屋根だけの開放的な造りで、あたりを一望できる。
「……すごい」
崖というか、今いる場所から一段下がったところに、建物が敷き詰められていた。全て白い建物で、高さのある建物も多い。
その上には無数の浮島がある。
意外にも地上より浮島の方が自然豊かに見える。
また、地上と浮島の間を気球のようなものが行き来していた。魔法のある世界なんだし、人が飛んでると思ったが、全然そんなことないな。
あとは……
「たまにシャボン玉みたいなのが上に上がっていますが、あれはなんですか?」
「地形の都合上、地の国は空気が溜まりやすく、天の国は空気が薄いので、あぁやって空気を運んでいます」
運んだ空気は魔法でなんとかして天の国に定着させるのかな。たぶん王の力とかで。
「では、一段上になっているこちら側……ここからだと街がある反対側は森ばかりで全く建物が無いのはどうしてですか?」
「木が生えている土地はすでに浄化済みなので、誰かが住んでも問題ない筈なのですが、長い間歪んだ魔力があった場所です。気持ち的に嫌がる人が多いのでしょう。国をあげて居住区を作れば住む人も現れるでしょうけど、それを行う理由は今の所ありません」
「なるほど」
「他にも何か気になることはありますか?この後は若島蒼斗様を地球にお返ししなければなりませんので、質問するなら今のうちですよ」
結局、ここまでノクシル以外の人には会えなかった。一応休日だから人が居ないとは言っていたけど、にしてもまったく会えないのは異常だ。下に見える街にすら人の気配を感じない。
気になっていることといえばそれしかないが、未だ距離感は掴めておらず、どうしてなのかと質問していいのかわからない。
うーん……一回聞いてみるか。
「貴方以外の人物を全く見かけないのはどうしてですか?」
「現在、若島蒼斗様を人の目につかないようにしています。その影響で若島蒼斗様側からも目につかないようになってしまっております」
「別に隠される必要性を感じてないのですが」
「えぇ、そうでしょうね。ですが必要なことです」
あ、これは詳しく説明する気がないパターンだ。さっきの部屋で散々質問しまくったからわかる。
「人の目につかないようになってるとのことですが、偉大なる2人の王からも見えないようになってます?」
「いいえ。偉大なる2人の王は全てを把握しておられます」
へぇ。今も俺を見ているなら、ここで手を振ったら振り返してくれんのかな。
やんないけど。
気になることはさっきの部屋でほとんど質問している。
もう一回景色をぐるりと見渡してから、特に追加の質問が思い浮かばなかったので、塔を降りた。
またノクシルについていき、最初俺が目覚めた場所。ダンジョンコアがいっぱいある部屋へと戻ってきた。
最初とは違って、錬魔機人が10人ほどいる。
事前に知らなければ、普通に人間だと思っていただろう。
ただ、シーニィと同じ顔が何人かおり、他にも顔が被っている個体がいくつもいた。
彼らはダンジョンコアに手をついては他のコアへ行きまた触るという行為を繰り返している。
「あれ何してるんですか?」
「ダンジョンの情報を確認しています。どういう階層を作ってどんなモンスターを配置して何人の人類が訪れ、どれくらいの魔力を消費したのかなど細かく記録を取り、今後に活かすためです。その際、何か異常がないかも確認して緊急事態に備えています」
「そうなんですね」
「他に質問がなければいよいよお返しする準備を行いますが、いかがでしょうか」
「大丈夫です。お願いします」
俺がそう言うと、ノクシルはたくさんあるダンジョンコアの中から迷わずひとつのコアに行き、手を置いた。
「では、いきます。若島蒼斗様。地球への帰還を了承しますか?」
目の前に<はい>と<いいえ>の選択肢が現れる。
「これもしここで<いいえ>を選んだらどうなるんですか?」
「特に何も起こりません。若島蒼斗様の精神がここに残るだけです。そうなってももう一度私から問いかけられますので、<いいえ>を選んでも問題ありませんよ」
「あー、いえ。ちょっと気になっただけなので選ばないです。今日は質問にたくさん回答していただきありがとうございました」
「こちらこそ、この世界に来てくださりありがとうございました」
俺は<はい>を選んで、やっぱり意識がブラックアウトした。