作品タイトル不明
150話 要望
次元同士の衝突によって魔力が歪んだ。歪んだ魔力は消費できないから大きな魔力溜まりとなっている。これを解消するのはすぐには難しい。だから、地球がある次元との衝突を防ぐには地球側の魔力をなんとかするしかないって感じか。
「地球にダンジョンが配置されたなら、もう次元の衝突は起こらないって思っていいんでしょうか」
「今のペースで我々は歪んだ魔力の浄化を、地球は溜まった魔力の消費を行えば衝突は起こらないと予想しています。ただ、あくまでも予想です。
外れる可能性はありますし、そもそもダンジョンは地球の魔力を消費しますが、規模で考えたらダンジョン一つにつき地球の海の水をバケツ一杯すくった程度にすぎません。いずれ魔力溜まりは解消されますが、それには何百年もかかるでしょう」
「なるほど」
どんだけ地球に魔力溜まってるんだよ。
「現時点で何か質問はありますか?」
「気になるところは色々ありますが、とりあえずは大丈夫です」
「では本題に入りましょう」
「未来を決めるってヤツですか?」
「えぇ。次元の衝突を起こさないためという理由はありますが、話す相手がわからないからと我々は勝手にダンジョンを配置させました。でも今は交渉人の若島蒼斗様がいらっしゃいます」
交渉人に勝手にさせられたんだけどな。俺は望んでいない。
「次元の衝突を起こさないためにはどうしたら良いのか。
この先も我々に任せるというならそれでいいでしょう。引き続きダンジョンの管理はこちらで行います。もしかしたらダンジョンの数が増えるかもしれませんが、基本的には今まで通りに暮らせるはずです。
地球に魔法の存在を広めるというのならお任せします。もしかしたら魔法という技術が広がって新たに争いが生まれるかもしれませんが、魔力が消費されることには違いありませんから。
ただ、我々としては技術の交換ができたらと考えています。ダンジョンに設定してあった制限を破った機械がこんな短期間で作れるとは思ってもみませんでした。もしかしたら地球の技術ならもっと良い方法で歪んだ魔力を処理できるようになるのかもしれません。
他にもこうしたいというお考えがあるならもちろんお聞きします」
マジで俺に聞かないでほしい。
俺は自分の好きなようにダンジョンを運営できればそれでいいんだからさ。
技術の交換もしたいならすれば良いと思う。ダンジョンであれだけ揉めてたんだから、技術の交換も誰がやって誰が利益を得るのかで揉めるだろうが、とりあえず技術を教え合うこと自体はできるだろう。政府を介さず特研あたりに声をかければすぐだ。
あーでも……
「仮に地球からダンジョンを無くしてほしいって言った場合、おそらく不可能じゃないと思いますが、その場合ダンジョンマスターは人類に戻れるんですか?」
「いえ。残念ながら一度変質した肉体は元には戻りません。歪んだ魔力を戻せないのと一緒です。しかし、もしダンジョンを地球上から無くすとしたら、仮設の空間を切り離すだけですので、ダンジョンマスターが死ぬことはありません」
「なら、今後ダンジョンを無くせって言う人が現れても、それには応じないでほしいですね。ダンジョンがない状態で老化しない人間がいても浮くだけですし。今更ダンジョンが無くなったところで俺がダンジョンマスターって知ってる人は知ってるんで。だったらダンジョンマスターとしての地位を守っておきたいです」
「わかりました。何があっても現存しているダンジョンは無くさないようにします」
「そんな簡単に了承していいんですか?魔法広めてやるからダンジョンは無くせって言ってくる人いるかもしれないですよ」
「1番最初にドゥアルナに来た特権だと思ってください。それに、ダンジョンマスターの願いはできるだけ叶えたいと思っています」
思い返すと、今まで質問は答えられないって何度も断られてきたけど、四角以外の部屋が欲しいとか、階層の一部分だけ環境変化を加えたいとか、要望は叶えてくれていたな。
「ダンジョンマスター同士で正反対の要望を出す可能性もありますが」
「意見が割れたら内容を精査してどちらの意見を採用するか決めますが、今回の若島蒼斗様の願いに関して反対意見が出ることはないでしょう。ダンジョンマスターの中でダンジョンを無くしてほしいと願う者が居るとは思えません」
1人居そうなんだよなぁ……無くなってほしいと願いそうなダンジョンマスター。
でもここに来るには錬魔機人と出会う必要がありそうだし、あいつには無理か。
「そうですね……それよりも、できるだけ叶えたいってことは人類よりダンジョンマスターの願いが優先されるって考えていいんですか?」
「はい。叶えられる範囲は限られますが」
「なんでダンジョンマスター優先なんですか?」
「それは……ダンジョンシステムは今回のために初めて作り、運営しているものです。もしシステムに不備があったら、最初に気づくのはダンジョンマスターでしょう。AIを通じて我々とやり取りできるのもダンジョンマスターだけです。だからですよ」
……一瞬納得しかけたけど、ダンジョンマスターの願いを優先させる理由になってない気がするのは俺だけか?
確かにダンジョンの運営に関する願いはダンジョンマスターを優先させるのはおかしくない。けど、今俺が質問したのダンジョン運営に限った話じゃない。次元の衝突をどうにかする上での話だ。
話の流れ的にダンジョンに限った話だと勘違いしてもおかしくないけど……できるだけダンジョンマスターの願いは叶えたいと言い出したのはノクシルの方だ。
俺の質問の仕方が悪かったのか、それともわかっていてあえて回答をずらしたのか。
相手の話が嘘か真実かわかるようなスキル取っておけば良かった。取っていてもここで使えたかわかんないけど。
もう少しこの辺りを追及するか迷って、俺は聞かないことにした。
隠したいことを無理に尋ねて機嫌を損ねたくない。
いったん納得するふりをして、ダンジョンさえ無くならなければ、今の所未来がどうなろうとあんまり興味ないと伝えておく。
「そうですか。若島蒼斗様のお気持ちはわかりました。では、ダンジョンに絞ったらどうでしょう?何かこうしてほしいなど、意見はありますか?」
「なんでもいいんですか?」
「えぇ。なんでも大丈夫です」
本当に何言ってもいいんだとしたら、色々と聞きたいことというか、要望に出したいことがある。
次いつこんな機会があるかわからないから、今のうちに色々言ってしまおう。
「まずひとつ目なんですけど、現状、次の階層にいく魔法陣には条件設定できないようになってるじゃないですか。あれってなんでですか?」
「一個下の階層に飛ぶ、という条件で固定されているからですね。魔法陣は一度条件を決めたら追加で条件設定ができない仕様となっています。もし自由に条件設定できるようにしてしまうと下に行く筈のものが他の階層に飛ばすこともできてしまいます。それはフェアではありませんので」
なるほど。確かにそれもそうだ。
面倒だけど、今後も階層に条件設定したいなら下に行く魔法陣は別で分けないといけないな。
「理解できました。では次なんですけど、マスタールーム用に買える料理の中で、そちらの世界……ドゥアルナでしたっけ。の料理がありますよね?」
「ドゥアルナで合っています。せっかくなのでこちらの料理もご用意いたしました」
「ホルグボルグという料理いただきました。とても美味しかったです」
「そう言っていただけて嬉しいです。ホルグボルグはこちらでは一般的な家庭料理でして、ダンジョンで買えるものは王宮料理人が作ったホルグボルグを再現したものなんです」
いるんだ、王宮料理人。そしてあれって再現メニューだったんだ。
「そのホルグボルグなんですけど、魔法陣の条件設定に組み込むことができてしまいまして。こちらとしては都合が良いのですが、ホルグボルグが無いと先に進めないっていうのは大丈夫なのでしょうか」
「あぁ、そういうこともあるんですね。ですが地球の食材を使った場合でもホルグボルグになれば条件をクリアできるので大丈夫です」
いいんだ。
ならこれからもどんどんそういう罠使おうかな。出来るかどうかは置いておいて、食材を用意して料理してもらうのとか面白そう。
あ、いや、どうせなら今聞けばいいのか。
こういうのやりたいけどできるかって聞けば出来るかどうかは判断してくれるだろうし、無理なやつでもできるようにしてくれるかもしれない。