軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

147話 転移

青髪の探索者……シーニィはダンジョンコアに手を当てる。

「管理No.ኦሩ፩፮፫፲より、権限の解放を申請。情報をアップロードします」

ごめん待って何。

全然状況がわかってないんだけど。

ダンジョンコアで権限の解放とやらができるの?なんで?そんな機能知らないが?

「アップロード完了。回答を受信します」

それに、なんで俺はここに連れてこられたんだ?

俺が居ないとここまで来れないようには見えなかった。一瞬だったし、ダンジョンマスターの手を掴むことでそいつのダンジョンのコアまで飛べるなら、イギリスで奈那さんが話しかけた時に俺を連れてこいと言う筈だ。

「あぁ、やはり……回答を確認しました。ኖኩሺሩ様が町田様にお会いしたいとおっしゃられています。転移を受け入れますか?」

状況が飲み込めないまま、目の前に<はい>と<いいえ>の選択肢が現れる。

これが出たのはダンジョンマスターになるかどうかを選んだ時以来だ。

「転移って、どこに」

「ጾኹኣሩናでございます」

どぅあ……なんだろう。さっきからちょいちょいわからない単語がある。聞き取れない訳じゃないから、ここに居たのが奈那さんだったらわかったんだろうか。

「向こうは俺に会ってどうしたいの?」

「お答えできません」

「これ受け入れなかったらどうなる?」

「どうにもなりません。断ればこの話は終わりです。なお、権限は解放されていますのでご安心ください。このままでも最低限の話をする事は可能です」

権限とやらを解放して最低限か……

単語はわからなかったけど、文脈から察するに、向こうの人が何故か俺と会いたがっているんだろう。だから、たぶん転移先は向こうになる。

急に異世界転移の話か。全く現実味がないな。初めて声を聞いた時もあんまり現実味無かったけど。

「もし受け入れて転移した後、最終的にここに帰ってこれる?」

「はい。可能です」

「技術的に可能かって話じゃなくて、俺を無事に帰す意思があるのかって確認なんだけど」

「お答えできません」

……人型でもあんまり融通が効かないのかよ。声だけじゃなくて、性格もそっくりか。

「なら、確認してもらえる?」

「かしこまりました」

するとまた情報をアップロードしますと言って固まった。

このまま待つ。

「回答を確認しました。“町田様が帰りたいと思ったタイミングでお帰りください”との事です」

まぁ、来て欲しいんだったら都合の良いことは言うよな。

冷静に考えて、安全を取るなら<いいえ>だろう。

でも、ここで<いいえ>を選べる性格ならダンジョンマスターになるかどうかでも<いいえ>を選んでいただろう。

選択肢が目の前に現れた時点で俺の答えはほぼほぼ決まっていた。

シーニィに確認してもらったのは、念の為の保険にすぎない。

俺は<はい>を押し、意識がブラックアウトした。

目が覚めると白い空間にいた。ダンジョンコアがある部屋と似た雰囲気で、コア部屋よりかなり広い。

そして……

「ዮኡኮሦ 若島蒼斗ሣመ

ዋሬዋሬ ኖ ሤካኢ ኒ

ኪቴ ኢታጻኪ ካንሺሻ ሺመሡ」

目の前には柔らかい笑みを浮かべた銀髪の男がいた。身長は俺より少し高い。

自分の名前を呼ばれたことはわかるが、それ以外は何を言っているのかさっぱりだ。

「ኣሬጓ……ኣኻ ሺጹሬኢ

“ጼኺኣሮሩ”……これで通じますか?」

わかるけど、待って。今気づいた。視界にダンジョンの管理画面を開くマークがない。

俺今ダンジョンの管理できないし様子も見れない感じ?

「……わかりますけど、今のは」

とりあえずAIに話しかけたいが……この状況でしていいものなのかわからない。

何もわからない今は流れに身を任せるしかないか。

「意思疎通魔法です。改めまして若島蒼斗様。我々の世界に来ていただき感謝します」

「いえ、俺も知りたいことがあったので」

「ここではゆっくり話せないでしょう。場所を変えましょうか」

そう言われ、思わず辺りを見渡す。そして俺の背後にあったモノに気づいた。

直径3mほどの紅い石が部屋の真ん中に一つ。壁一面には1mほどの大きさの紅い石がずらりと並んでいる。パッと見で何個かわからないが、少なくとも100以上ある。たまに空いている空間があるのはそういうことなのか?

「これって……」

「えぇ。ダンジョンコアです。この場所はダンジョンコアを管理する部屋でして、ここには全部で500個あります」

「俺の世界にあるダンジョンコアと同じものなんですか?ここのが壊れたらこっちの壊れます?」

「同じ存在だとも違う存在であるとも言えますね。ここにあるコアは一つ一つにグランディオル様による守護の魔法がかかっています。壊れる事はないのでご安心ください」

誰だよ。グランディオル様。壊れないから安心してって言われても出来るわけないんだけど。

「もし壊れたら?」

「そんな状況、天地がひっくり返ってもあり得ません。しかしこの言葉では納得できないのもわかります。あの壁には貴方のダンジョンコアと繋がっているものもありますからね。

仮にこちらのダンジョンコアが壊れても、そちらにあるダンジョンコアが壊れる訳ではありません。しかしこちらとの繋がりは絶たれ、ダンジョン運営システムの更新が出来なくなります」

ダンジョン運営システムの更新……元日にあった仕様変更のことか。あとは、AIにお願いして追加してもらった部屋の形や環境変化の床も含まれるかな?

とりあえず即死ではないと知って安心した。

追加の質問が無いと察したのか、目の前の男は“では行きましょう”と言い、歩き出した。

それについていく。

白い階段を体感で3階分くらい登り、広い廊下に出た。やはり白を基調とした作りで、どことなく神殿のような雰囲気を感じる。壁も窓も普通にあるが。

窓から見えるのは噴水とベンチだ。中庭かな。

「そういえば私の自己紹介はまだでしたね。私はノクシル。この国で政務官をやっています」

「俺をここに呼んだのも貴方ですか?」

「はい。そちらにいる 錬魔機人(れんまきじん) を通じればそのままでも会話はできますが、時間がかかりますので」

「錬魔機人?」

「最先端の錬成魔術で作られた人型の人形の事です。若島蒼斗様がここに来る直前、接触していた管理No.オル1638が該当します」

錬成魔術……奈那さんに見てもらった魔核を砕いた物体の説明欄に出て来た奴だな。

シーニィ、人間にしか見えなかったけど、作られた存在だったのか。

「本来でしたらあそこにあったダンジョンコアを管理するのも錬魔機人の仕事でしたが、若島蒼斗様をお迎えするにあたり、全員引き上げさせました。初めて来た場所に同じ顔をした物体がたくさんいたら驚かせるかと思いましたので」

「そうですね、驚いたと思います」

何体くらい居るのかわからないが、もし居たらもっと警戒していただろう。ノクシルの配慮は正解だ。

「もし興味があるなら、帰りに普段の様子を見せられますよ」

「あー、なら時間があったらお願いします」

どうせなら見れるものは全て見ておきたい。

「わかりました。……さて、着きました。お入りください」

ノクシルは止まり、ドアを開ける。

そこは円形の机が置かれており、天井まで続く大きな窓がある部屋だった。

その窓から見える景色を見て、思わず固まった。空に複数の島が浮かんでいる。大小様々な大きさで、どれも自然豊かで、建物も普通にあるように見える。

地球じゃあり得ない景色だ。

あんまり実感なかったけど……まじで異世界なんだな、ここ。