軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

140話 追いかける

奈那さんに電話する。

ワンコールで出た。たぶんスマホを触ってたんだろうな。

「奈那さん、寧音から連絡ありました?瑛士にメッセージ送ってるのに返信なくて」

『ちょうど私もその事で電話しようと思っていた。予定では17時には向こうを出る筈だったが“情報を持っていそうな人に会ってから帰る”ときてから連絡がつかなくなった』

「向こうで何かあったんですかね?酒木にも通じないです」

『その可能性は高い。現地に行きたいがこの距離だからな……』

「今からでも電車で小樽まで行けそうですけど、4時間かかりますね……どうします?」

『……仕方がない。小田切さんを頼ろう。彼の部下は小樽にも居る筈だ。私から連絡するから、蒼斗くんは瑛士くんとの連絡を試みてくれ』

「わかりました」

奈那さんとは一度電話を切り、瑛士にメッセージを送りまくる。

ついでに酒木にも送っているが、どちらも反応がない。

情報持ってそうな人と話が盛り上がっていて気付いてないとかならいいけど、瑛士はあり得ても寧音の方が奈那さんからの連絡に気づかないっていうのはあり得なさそうなんだよな。

何かあったとしたら情報持ってそうな人絡みだと思うけど……その人と別れた後にって可能性も全然あるか。

とにかくメッセージを送っていると電話がかかってきた。相手は瑛士って、

「瑛士!?」

急いで電話に出る。

「もしもし、お前今まで何してたんだよ」

『どうしよー!寧音ちゃんがいない!』

「はぐれたのか?」

『違うよ!起きたらいなくなってたんだ!』

「起きたら?状況がわからない……居なくなったのは寧音だけで、酒木は今近くに居るのか?」

『うん。がっくんはいるよ!』

なら酒木から詳しく話を聞いた方が早いか。

瑛士に電話を変わってもらい、改めて詳しく話を聞く。

小樽で食べ歩きをしていたらナカタという動画投稿者に声をかけられ、瑛士に奢る代わりにとコラボ動画を撮ってほしいとお願いされたらしい。それを了承した瑛士は寿司を奢ってもらい、動画を撮って食べ終わったらその場で別れた。

その後おたる水族館に向かっている途中で電話がかかってきて、役に立ちそうな情報を持っているかもしれないからもう一度会ってほしいと言われ、それを了承。水族館を巡った後にナカタと合流したが、挨拶をする間もなくスキルで眠らせられた。

起きた時にはもう寧音とナカタの姿は無かった。ついでに停めた場所に車も無かったとのことだ。

スキルを使ったということは、ナカタは確実にダンジョンマスターだ。

タイミングがタイミングだし、奏多を並び替えたらナカタになるし、シンプルにこいつが富良野ダンジョンマスターと考えて良さそう。

野々山奏多は18時過ぎにはもう家にいたが、距離の問題はスキルでどうにでもなる。そもそもあそこにいた奴は偽物だった。

つまり瑛士達の方にいた人物が本物で、そいつに寧音は誘拐された?

「わかった。とりあえず情報を奈那さんに共有する。お前らはその場で待っとけ。たぶん小田切さんの部下が保護してくれると思う」

『りょーかい』

電話を切り、もう一度奈那さんに電話をかけようとしたところ、着信が入った。

ただ、相手は奈那さんではなく蓮見だ。一応連絡先を交換していたけど初めて電話がきた気がする。

「どうした?」

『あー、もしもし?奈那が焦った様子で部屋を出て行ったんだけど、これアンタに教えてあげた方が良いかと思って』

「は?奈那さんが?」

『そーだよ。小田切に電話した後、スマホでなんか見て急に出て行った。奈那がオレに声かける事なく急いで出ていくなんて普通じゃないじゃん?』

「それ何分前の話だ?」

『本当についさっき。5分も経ってないかも』

「出て行った時、奈那さんスマホ持ってたか?」

『持ってたよ』

「わかった。なら俺から連絡してみる。蓮見は部屋でゆっくりしとけ」

『はーい』

部屋を出る準備をしながら奈那さんに電話をかける。

いつもなら比較的すぐ出るが、今回は繋がらない。

奈那さんが焦って出ていく理由なんて寧音くらいしか思いつかない。その寧音は姿を消している。

もし富良野のダンジョンマスターが寧音を誘拐したとして、捕まっている寧音の写真が送られてくれば、奈那さんもそりゃ焦って出ていく。おそらく写真と一緒に〇〇に来い、みたいな文章が書いていた筈だ。

肝心のその場所は……自宅は難しいだろうし、慣れてるダンジョンに連れていくんじゃないだろうか。

他に部屋とか持っていたらわからないけど、とりあえず可能性が高い富良野ダンジョンに向かおう。

顔は変化させたままで、雑面はいいや。奈那に連絡が行ったって事はたぶんステータスは見られている。名前とか数値とかを変えれば少しくらい油断してくれるかな。

あ、待って電話繋がった。

「やっと繋がった。奈那さん今どこですか?」

『ちょっと緊急事態が起きてな。小田切さんと今まで電話していた。今はダンジョンの近くだ』

「寧音のことですよね?瑛士達から居なくなったと聞きました。俺も近くまで来てるので待っててください」

『そうか。彼らは無事だったか』

「声的には元気そうでした。スキルで3人まとめて眠らされて寧音だけ連れていかれたみたいです。2人はダンジョンマスターだから置いて行ったんでしょう」

もし連れて行っても自分のダンジョンに帰還すれば逃げられるからな。なら最初から連れていかない方がマシだ。3人も運ぶのは大変だろうし。

『私と寧音が姉妹だとバレているんだろう。人質なんてとらなくても無条件で会いに行ったのにな』

「そんな人類が居るなんて普通は思わないですよ。2人にその場で待機してるように伝えているんで、小田切さんに回収してもらうよう頼んで貰っても良いですか?」

「わかった」

「ならいったん切ります。あと1分くらいで着きます」

スマホをポケットにしまって、引き続き駆け足でダンジョンに向かう。

もうダンジョンが見える距離だ。

宣言通り、1分くらいで到着した。

奈那さんなら1人でなんとかなりそうな雰囲気もあるが、ダンジョンマスター相手ならダンジョンマスターがいた方が良いだろう。

軽く作戦会議をしてから一緒にダンジョンの中に入り、詳しく奈那さんの方の状況を聞く。

「寧音のアカウントから写真が届いたんだ。どこかの車内で目隠しをされ手を拘束された寧音の写真だ。そしてすぐに妹に会いたければ0時までに今日進まなかった21階層の魔法陣に乗れとメッセージが来た。時間はまだ余裕があるが、のんびりしてるよりはさっさと行った方が不意をつけそうだろう?」

「まぁギリギリに行くよりは良いと思います。1人で来いみたいなことは言われなかったんですか?」

「特にそういうのは無かったな。何人で来られても対処する自信があるのか、複数人で来させる事が目的なのか……」

「偽物を自宅に居させたり、かと思えば誘拐して呼び出したり、警戒心が高いのか大胆なのかわからない相手ですね」

「どちらの性質も持っているんだろうな。次は瑛士くん達から聞いた内容を教えてくれ」

俺はさっき酒木から聞いたことをそのまま話した。

瑛士か酒木にステータスを鑑定できるスキルを覚えさせるべきだったなと今なら思う。そしたら近づかれても何かしらの対処できたのに。

「……眠らされたのが17時前なら自宅に居た彼が撃たれる前の出来事だな。あの事が関係ないのなら、最初から寧音を誘拐するつもりで接触。油断している2度目で実行したのか。ずいぶんと手慣れている犯行だ。過去に何人も誘拐してきてるだけある」

「酒木が言うには 強制睡眠(フォールスリープ) ってスキルを使われたらしいです。範囲内で目が合っている相手を強制的に眠らせるスキルで、異常状態耐性スキルを持ってたり、スキル名を唱えている間に目を逸らしたりすれば弾くこともできるんですけど、油断してたらほぼ確実に眠らされます。他にも様々なスキルを駆使してるんでしょう」

「そうだろうな。1度目の接触で見たスキルはサイレント、拘束、隠遁者に隠蔽と誘拐に役立ちそうなモノが並んでいた」

それぞれ別の理由で取ったけど、拘束も隠遁者も隠蔽も持ってる俺からするとなんか微妙な気持ちになるな。

スキルを悪用しないでほしい。

あ、そうだ。一応異常状態耐性スキルを今のうちに取っておくか。

「奈那さん異常状態耐性スキル持ってます?」

「持っている」

「なら 強制睡眠(フォールスリープ) には引っかからないですね」

俺だけさっさと取ろう。

人質を取って呼び出して、何が目的かまだわからない。

眠らせた時点で3人とも殺せた筈なのに殺さなかったから、殺戮が目当てじゃなさそうだけど、今日は襲われてるし何が起こってもおかしくないからな。警戒するに越したことはない。

「そういえば、小田切さんとは何を?」

「現時点でわかっている野々山奏多の情報を聞いていた」

「あー。何か目ぼしい情報ありました?」

「そうだな……歳は19でキミと同学年。幼い頃事故で両親を亡くしてそれからずっと祖父母と一緒に暮らしている、くらいだろうか」

「こっちは祖父母を人質に取る……なんてことをしても無駄ですかねぇ」

「どうだろうな。とにかく本人と話してみるしかない」

「そうですね。危機察知スキルは?」

「相変わらず反応している」

奈那さんと話している間に21階層の例の魔法陣の前に辿り着いた。

スキルが反応してるなら行った先には確実に何かある。

今日の夕方は1階層の探索じゃなくて魔法陣の実験をすれば良かったな。

0時までにまだ時間はあるとは言え、ここで止まって実験なんてやり出したら寧音が害される可能性がある。迂闊なことはできない。

覚悟を決めてもう魔法陣に乗るしかないな。

「最大限の警戒をしていきましょうか」

「あぁ」