軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

138話 消える

攻略ルートから外れた所にルートを設置してるんじゃないかと予想して、隅々まで1階層を探索したが、それらしいものは見つけられなかった。

ついでに2階層も探索したけど見つけられなかった。

奈那さんの目で見ても変な場所がなかったということは、やはりわざわざ使う時だけ設置して、それ以外の時は外しているのだろう。

「これ、明日はどうすんの?」

「導きの棒が反応した22階層の探索か、魔法陣の転移先を安全に偵察する方法を探すかのどっちかじゃないか」

「……いや、それよりも早く決着が付くかもしれない。今小田切さんから連絡があった」

「それって……」

「あぁ。野々山奏多が見つかった。ダンジョンから歩いて30分ほどの場所に住んでいて、富良野市に他に同じ名前の人物はおらず、免許証の写真と私が書いた似顔絵が似ている事からほぼ間違いないそうだ」

ずいぶんと見つけるのが早いな。さっき情報を渡してから2時間半くらいか。

ドラマとかでよく見る警察独自の情報網みたいなのがあるのかな。

「なら、後はもう小田切さんに任せるしかなさそうですね」

「いや、実際に見て本人か確認してほしいと言われている」

あー、まぁ何らかのスキルで誤魔化してたりする可能性あるもんな。

奈那さんが見るなら近くにダンジョンマスターがいないといけない。俺か蓮見のどちらかがいれば充分だけど、ここに来て別行動は違うだろう。

「わかりました。場所と時間は?」

「今からここまで迎えに来てくれる」

「それオレも行かなきゃダメ?」

「あぁ。ついてきてくれ」

ダンジョンから少し離れた道路沿いで3人で待っていると、黒い車が目の前で止まった。

ドアが開いて中から小田切さんが出てきた。

「お待たせしました。さっそく向かいたいのですが、よろしいでしょうか?」

「問題ない」

後部座席の1列目に奈那さんと小田切さんが、2列目に俺と蓮見が座った。

車を運転しているのはスーツを着て夜なのにサングラスをかけている人だ。運転しづらくないのかな。

「すぐ着きますので、簡単に説明します。野々山奏多、20歳。祖父母と三人で暮らしています。近くに車を停め、こちらで見える位置まで誘導しますので、奈那さんには、野々山奏多を直接確認していただきたいです。車に乗ったままで問題ありません」

小田切さんは奈那さんに無線機を渡していた。

流石に直接対面はさせないんだな。スキル使える状態なら、奈那さんが近くにいた方が便利だと思うんだけど。あーでもそうすると目の前でチェックして目の前でダンジョンマスターかどうかを伝えることになるから、遠くから見るだけの方が都合いいのか。

車は5分ほど走った後、とある民家の近くに停まった。周りに他に建物はなく、俺らの車はだいぶ不審な車に見えるだろう。

俺らが乗っている車以外にもおそらく小田切さんの同僚と思われる人が乗っていた車が2台近くに停まってるから逆に怪しくないか……?

いや、怪しいな。

運転手と小田切さんは出ていき、民家の方へと向かった。

他の車に乗っていた人たちは家を囲うように配置についている。

ここからじゃ詳しくは何をやっているかわからないけど、たぶん逃走されないように見張ってるんだろう。

少し待つと、家の門辺りまで運転手と小田切さんと男が来た。少し遠いが、奈那さんの視界に入っている。

「見えます?」

「あぁ。今回は最後まで見る。小田切さん、時間を稼いでくれ」

無線機に向かってそう言うと奈那さんは“水球”と唱えた。

小さな水の球が空中に2個現れ、奈那さんの目に入る。

相変わらずの技術で、ガチの乾燥対策をしている。

俺と蓮見はやっぱり今回も見ていることしか出来ない。俺たち2人とも居なくなると奈那さんのスキルも使えなくなるので居る意味はあるんだけど。

「……見終わった。ステータスに細工された様子は確認出来なかった」

思っていたより早く終わったな。

『ダンジョンマスターである事に間違いありませんね?』

無線機越しに小田切さんの声が聞こえてくる。

「ステータスにはダンジョンマスターと確かに記載がある。顔も昼に遭遇した時と同じだ。しかし何かがおかしい。レベルが1になっていて、能力値もそれに応じて下がっている。スキルもロクに持っていなかった。名前、種族、称号以外の部分が昼に見た時と異なっている」

『もう一度聞きます。野々山奏多さん、貴方が富良野ダンジョンのマスターですね?』

「申し訳ないが断言できない。私が言えるのはステータスにダンジョンマスターと記載がある、最初に見たステータスと内容が異なっている部分がある、最後まで見ても細工された様子は確認できなかった、の3点のみだ」

『わかりました』

別人である可能性は考えていたけど、これは想定していなかった事態だ。

まさか、昼と今じゃステータスが違うなんて。しかも奈那さんが最後まで見てもステータスを弄った形跡はなかったという。

「ダンジョンマスターのレベルが下がることってある?」

『回答。ありません』

まぁそうだよな。

人類が未到のダンジョンじゃ無い限り、ダンジョンマスターでレベル1なんてあり得ない。だからステータスを真識眼でもわからないような状態で誤魔化していた、くらいしか考えられないんだけど……

だとしたら今日の間に数値やスキルの内容を変える意味がわからない。普通そんな能力持っていたら名前と種族を変えるだろ。

あいつがダンジョンマスターじゃない、なんてことあり得るのか?

「……どう思います?」

「ここに来てわからなくなった。少なくとも私は真識眼を欺くスキルを知らないが、無いとは言い切れないからな」

「そうですよね」

「これ全部無駄だったってこともあり得るよね?」

「その可能性もある」

「マジかよ」

「今は小田切さんの尋問術にかけるしかない」

……真識眼に頼りっぱなしだったが、ここに来て信用できなくなるとはな。

もしかしてダンジョンマスター用のルートが見つからなかったのも真識眼を上回るスキルで誤魔化されていたのか?

AIに追加でスキルについて質問しようとした所、突然パーンッという破裂音が響いた。

小田切さんが片手をあげている。

野々山奏多は後ろに倒れた。

「は?」

状況を理解する前に奈那さんが車から飛び出た。

慌てて俺も後を追う。

「断言出来ないと伝えたのにどうして撃った」

「状況的にダンジョンマスターであると判断しました。それに……遺体が消えています。間違いないでしょう」

「違う。ダンジョンマスターが死んだ時はモンスターと同じく崩れるように消えるんだ。実際に見た者の証言だから間違いない。今のは消えるまで一瞬だった。消え方が合っていない」

「しかし、弾が頭部に当たったのは確認出来ましたし、遺体は消えています。ダンジョンマスターが死んだ以外に考えられません。証言も、奈那さんは実際に見た事がないなら間違いないとは言えないでしょう」

「いいや、絶対に消え方が不自然だった。君はせっかくの情報を得るチャンスを不意にしたんだ」

「しかし……」

「もういい。どうせ富良野ダンジョンの近くに部下を待機させてるんだろう。ダンジョンが消えていたのなら私が間違っていたと謝ろう」

状況を整理すると、不審な点があるのに小田切さんが野々山奏多を撃たせた。消え方も不審だったって所だろうか。

俺が見た時にはもう姿が見えなくなっていたからなんとも言えないけど、確か馬淵の死を間近で見た政府関係者の成谷さんがモンスターと同じように消えた、みたいな事を言っていたので、一瞬で消えたならなんか違う気がする。

それにしても奈那さんが声を荒げてるの初めて見た。

小田切さんは無線機に向かって「状況は」と問いかけている。

そして「そうか」と呟き奈那さんの方を向いた。

「富良野ダンジョンは現在も変わらず存在しているようです。……申し訳ございません。自分の判断ミスです」

「謝罪は不要だ。謝られても失ったチャンスは戻ってこない。ここで狙撃された以上、野々山が再度ここに姿を現す可能性は低いだろう。どう探すかよりは、ダンジョンで遭遇して消えた野々山と今消えた野々山はなんだったのかを考える方が先か」

うーん……思い返せばコカトリスを出現させた時も気づいたら消えていたな。

マスタールームに緊急避難したんだと思っていたが、それは違っていて、本当はコカトリスの目を見ていたんじゃないか?

なんだろう……あの時も今回も目の前にいたのは分身的なやつで本体は別に居た、的な。

でもただの分身なら奈那さんの目は誤魔化せないか。ステータスの内容が違うのも説明がつかない。

結局それっぽいスキルを特定するまでは消えた野々山がなんなのかわからないな。

人に見られているここじゃAIに質問するの嫌だから、ホテルに戻りたい。

「奈那さん、今日は一旦解散しません?」

「……そうだな。ここで話し合うよりは明日また仕切り直した方がいいだろう。小田切さんには引き続き野々山奏多の情報を集めてほしい」

「承知しました」

ということで、この場は解散となった。

小田切さんに車で送ってもらい、ホテルに戻ってきたんだけど……ふとスマホを見て気づいたのだが、瑛士からのメッセージが今日は途中で止まっている。

昨日は今から帰るよ!って来てたのに。

時間的にまだ小樽を観光中……なわけないよな?

瑛士なら楽しすぎて途中から送るのを忘れることもあり得るが、一応奈那さんに寧音からメッセージが届いてないか確認しておくか。