軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

134話 攻防

せっかく挑発に乗ってノコノコやってきたんだから、逃げられたくはない。

そのための手段は思いついたけど、通じるかはわからないんだよな。

奈那さんは確実に相手のステータスを見てる筈なので、情報共有してもらいたいけど、この状況でそんな事をしたら向こうは警戒するだろう。

一度向こうと俺らの間の通路を完全に塞げば少しくらいは話せる時間が作れるか?

いや、まだ奈那さんが有利の状況で壁なんて作ったら怪しまれるか。

ここはあいつのダンジョンなんだから、強いモンスター出せばいいのにやってないし、なんだかんだ表情は余裕そうでまだまだ本気を出しているように見えない。

……少し挑発して、もっと攻撃を過激化させ、追い詰められたフリして壁を作れば違和感はあんまり持たれないかな。ちょっとリスキーだけども。

こっちからも攻撃をするか。

「“ 風刃(ふうは) ”」

「チッ、“ 土壁(どへき) ”、“ 穿雷追弾(せんらいついだん) ”、“|雷槍の乱”、“地割れ”」

そりゃ雷属性以外のスキルも持ってるよな。

地割れというスキルでダンジョン地面にヒビが入る。

ヒビはこちらに向かって広がり、大きな亀裂となった。このままだと落ちるし、避けても雷魔法の攻撃が来る。てか魔法スキルってここまでダンジョンの地形に影響を与えられるんだな。剣で傷つけた時と一緒で、そのうち自動的に戻るんだろうけど。

とりあえず飛翔スキルを使って落ちないようにして……

「“跳躍”“氷弾”“氷槍の乱”」

奈那さんが雷魔法は相殺したな。

横を見ると蓮見もなんとか亀裂に落ちないように避けていた。

……まだ不利な状況になったとは言えなさそうだ。

「“風刃”“風刃”“風刃”“風刃”“風刃”」

手軽に出せる風魔法スキルを連続で出しておく。向こうは土壁で大体防いだが、1つだけ防ぎきれずに頬をかすった。

「俺らはただあんたと話したかっただけなんですけど、なんで攻撃してくるんですかね。3対1です。自分が不利なのわかりません?」

「不利?何言ってんの?ここは俺のダンジョンだよ」

「誰のダンジョンかは関係ありませんよ。モンスターの召喚もアイテムの出現も俺らはできる」

「そうだね……なら、マギアゴーレムをここに」

現れたのは黒いゴーレムだ。真ん中には青い核がある。大きさは東池袋ダンジョンにいるやつより少し小さい。

とはいえ、2mほどはあり確かに俺には出せないサイズである。

「君らはあんまり大きいサイズは出せないんだよね?あと3体出して」

4体のゴーレムはこちらに向かって来た。

奈那さんが氷槍の乱を撃っているけど、わずかにスピードが遅くなった程度であんまり効いているようには見えない。

普通のゴーレムならすぐ砕けてるはずなのに。

これは流石にピンチと言えるよな。

「“隆起”」

昨日取った超級の土魔法スキルだ。

ダンジョンの廊下の横幅名いっぱいの地面が盛り上がり、天井まで届いた。

本当は分厚い土壁を作ろうと思ったが、さっきダンジョンにも影響を出せるレベルで魔法を使えると知ったので、せっかくならより効果の強い方を選んだ。

ただ、ここはダンジョンなので、向こうが何もしなくてもそのうち元に戻ってしまう。地割れで大きく裂けた地面もじわじわと元に戻ってるしな。

それにこの状況でも、向こうはここにモンスターを配置して送り込むことができる。

待っていればいずれ隆起した地面が戻る状況でわざわざポイントをかける意味はない……んだけど、絶対あり得ないとは言い切れない。むしろ俺たちの後ろは壁と危険察知が反応した魔法陣があって前も塞がれてるので、閉じ込められてる状況とも言える。

油断はできない。

話はさっさと終わらそう。

「奈那さん、ステータス見ましたよね?俺みたいに改竄されてる様子はありましたか?」

「いや、少なくとも出鱈目さは感じなかった。それに、ステータスの内容をわざわざ変えておくような性格とも思えない」

「なるほど。なら、見れたスキル全部教えてください」

「火、水、土、風、雷の上級までの魔法スキル、血液魔法の初級スキル、薬草採取、調合、サイレント、拘束、身体強化、隠遁者、隠蔽だ」

よくその量を見れたな。スキル欄はステータスの最後に書かれてるから余計見るまでに時間かかるのに。しかもスキルは何を取っても統合されないから初級火魔法、中級火魔法、上級火魔法と全て個別に表記されている。

何個分見てたんだこれ。普通無理だろ。

もしかしてずっと瞬きをせずに、あいつから目も逸らさずに攻撃を凌いでいたのか?やっば。

まぁでもおかげで、知りたいことは知れた。

少なくとも奈那さんが確認できたスキルの中に、状態異常を防ぐ感じのスキルは入っていなかった。

俺も、人類がダンジョンマスターに対して状態異常スキルを使ってくるなんて想定してないから取ってないんだけど。それは向こうもおそらく同じだろう。

「ありがとうございます。さっき割れた地面の修復具合を見るに、この隆起した地形が下がり始めるまであと数分くらいだと思います。タイミングをみてとあるモンスターを召喚するので、2人はそのモンスターを見ないようにしてください」

「わかった。なら一歩後ろに下がっておこう」

「お願いします。あとは今のうちに魔力回復させておきましょうか。蓮見、回復薬だしてくれ」

「はぁい」

カバンから出してもらった回復薬を受け取る。

超級スキルって本当に魔力の消費量大きい。あんまり闘いには向いてないな。土魔法だからかもしれないけど。

回復薬を飲みながら、次の話題にいく。

「ダンジョンマスターは8割くらいの確率で何とかなります。問題なのは奈那さんの上級魔法スキルが通じなかったゴーレムの方ですね。土魔法で穴を開けて落とそうにもご覧の通り地形はすぐ戻ってしまいますし」

「全てのゴーレムを穴に落とせれば逃げるくらいは出来るだろう。しかし、本来この階層にいない筈のモンスターを放置するのは気が進まないな」

「え、別にいいだろ。ここダンジョンなんだし」

蓮見の言いたいこともわかる。

ダンジョンでは何が起こるかわからない。

その階層に特定のモンスターしか出ないのはわざわざ変更するのが面倒だったり、異なるモンスターを出しまくると探索者が寄り付かなくなる危険性があったりと様々な理由があるからだ。別にルールとしてダメな訳じゃない。今はもうない渋谷のダンジョンみたいに、探索者の背後に急にモンスターを出現させても、それはそこのダンジョンマスターの自由だろう。

ここは富良野ダンジョンなんだし、このゴーレムを放置したって問題はあんまり無い筈だ。

ただ、奈那さんの気持ちもわかる。

このゴーレムは俺らが居なかったら出現しなかった。だから俺らに責任はある。

それに、奈那さんの上級氷魔法スキルで全然ダメージを与えられなかったモンスターを他の探索者が倒せるとは思えない。ここ、21階層はそこまで探索者の数が多くないとはいえ、うっかり遭遇でもしたら大変なことになるだろう。

それを知らんぷりしてもいいけど……俺の名前出ちゃってるんだよなぁ。

富良野ダンジョンマスターと町田ダンジョンマスターのイザコザに巻き込まれたなんて噂がたったら俺の評判が下がるか。

「ゴーレムも倒せるか試してみましょう。危なくなったら仕方なく撤退ということで」

「えー」

「わかった。朝陽くんは草魔法スキルで足止めができないか試してみてくれ。あと、マギアゴーレムの情報を見てくれると助かる」

「……それくらいなら」

ふと隆起した地面を見てみると、10cmくらいの隙間が空いていた。もうダンジョンが修復を始めたようだ。1分くらいか。

下がっていく地面に合わせて俺らもしゃがみ、タイミングを伺う。

隆起した範囲は通路の幅いっぱいに、奥はおよそ10mほど。天井までの高さ3mまで競り上がった。それが毎秒1cmくらいのスピードで下がって来ている。

試しに出現させた手鏡で向こうの様子を見ようとすると、速攻で魔法を撃ち込まれた。判断が早い上にとても正確である。一歩でも手を離すタイミングがズレていたら、俺の手に当たっていたかもしれない。

とにかくこれだけの速度で魔法を使ってるなら、こっちのことを注視してるということだろう。

モンスターを出現させるチャンスではあるが、流石に1発目に目的のモンスターを出すのは警戒されるか。

そうだな……

「1階層で一番最初に配置したモンスターをここに」

『承知しました』

スライムが1匹現れる。

AIに意味が通じたみたいで良かった。

「あと10匹出して」

『承知しました』

合計11匹のスライムを横一列に並べ、隙間から進んでもらった。

が、すぐ全員やられる。

そりゃそうだ。スライムは遠距離攻撃の手段を持っていない。

「12階層で一番最初に配置したモンスターをここに」

『承知しました』

火に包まれた鳥が出現した。ファイヤーバードだ。この階層はどっちを先に出したかあんまり自信なかったけど目的のモンスターで良かった。

AIに追加でまた10匹出してもらい、隙間から向かわせた。

流石にスライムより生き残ったが、それでも全滅した。

「そろそろマギアゴーレムの詳細わかった?」

「えーと、基礎魔法が使え、魔法に耐性があるゴーレムだってさ。他のゴーレムと一緒で真ん中の核が弱点。1体30万ポイントだから結構強そう。てか基礎魔法ってなに?」

「火、水、風、土の属性魔法のことかな。魔法に耐性あるなら核を物理的に攻撃するしかないか」

「ふむ、剣で闘うのはあまり得意ではないのだがな」

「奈那が無理ならやっぱ無理だろ。諦めない?」

「核をピンポイントで狙えば魔法でも行けたりしないですかね」

「やってみないとわからないな」

「ですよね。22階層で最初に配置したモンスターを10匹だして」

『承知しました』

シャドウスライムが出現した。

シャドウスライムは物理攻撃に強いが魔法攻撃には弱かった。ファイヤーバードより早い時間で全滅した。

「それ意味あんの?」

「向こうを疲弊させられないかなって。蓮見はマギアゴーレムなんとかする方法考えてて。

「どうにかなるもんなのあれ」

「AIに質問しまくるといいよ。24階層に配置してるモンスターを3匹出して」

24階層に置いてるモンスターは女王種のシャドウビーだ。勝手に配下を召喚してくれる。

シャドウビーの群れは頑張って進んだが、向こうの雷系の魔法スキルで最終的に全滅した。

虫と雷は相性悪かったな。

……さて、そろそろ油断してる頃だろうか。

隆起した地面はもう半分ほど元に戻っている。

2人に手で後ろを向いてるよう合図した。

「33階層に配置しているモンスターを3匹出して」

『承知しました』

コカトリスが現れる。

俺はこいつを出したダンジョンマスターだから固まらないが、普通ならコカトリスの目を見たらダンジョンマスターでも石化する。これだけモンスターを送り出した後に、目を見ないなんてことは普通考えないだろう。

他のモンスター達と同じようにコカトリスを送り出した。