軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133話 襲撃

「最悪撤退することも考えつつ、まずはどうにか魔法陣の行き先を偵察する方法が無いか考えましょうか」

「そういえば随分前に魔法陣について調べてると言っていたな。世間では魔法陣は人にしか効果がないと言われているが、他にも方法があるのか?」

「さぁ。試してみないことには。とりあえず人しか反応しないってのは間違いですね。モンスターが魔法陣の上に載っていても反応しないからそう言われてるんでしょうけど、ステータス的に種族が違うダンジョンマスターでも魔法陣は使えるので」

「ステータスの種族表記が違うからと言って、姿形は変わっていないダンジョンマスターは果たして人ではないと言い切れるのかというところを詰めたいところだが、今は魔法陣の起動方法だな。やはり重要なのは魔力だろうが、モンスターにも魔力を持つ個体はいる。どうにかしてこちらで出現させたモンスターを送り出す事ができれば、向こう側の状況もなんとなくは掴めるだろう」

「そうですね」

昨日の実験で、他のダンジョンで出現させたモンスターの状況をAIが把握することはできなかったが、現在出現させているモンスターの数は種別ごとに教えてくれることはわかっている。

つまり、自分のダンジョンで使っていないモンスターをここで出現させ、魔法陣を使わせることができたら、AIに聞けば生死くらいはわかるということだ。

モンスターを送って即死なら流石に撤退。いつまで経っても死なないようなら、行ってみてもいいかもしれないという判断ができる。

問題はどうやってモンスターを送るかなんだけど……

「まずは現時点で魔法陣についてわかっている情報を共有します。魔法陣の模様はダンジョンマスターには設定できず、設置後も書き換えは不可能。魔法陣の上に何か覆い被さっていた場合、魔法陣は起動しない。ただし例外もあり、砂、薄い紙なら起動する。魔法陣を踏んだ上で発動させない方法があるみたいですが、こちらは詳細はわかっていません。あと、魔法陣の模様で行き先の階層がわかるってやつですね。これは奈那さんの方が詳しいでしょうけど」

「あぁ。真識眼や鑑定が無くても模様から27階層へ飛ばされる魔法陣だということはわかる」

「なんでそんな事わかんの?」

「簡単に言うと円の中の1番大きい三角形、または四角形の角の合計数からマイナス2した数が向かう先の階だと予想されている。角を作るのにも限界があるから、階数の増加でいずれ法則が変わるだろうがな」

まぁ、この27階層でもだいぶ図形が意味わからないことになってるし、100階層とかになったらもはや角や線が繋がって円になるだろう。だから記述の方法はどこかのタイミングで絶対変わる。何階から変更されるのかはまだわかんないけど。

他にも魔法陣について知ってる情報と言ったら、 魔粉(まふん) を 魔液(まえき) に溶いたもので陣が描くとか、作成する方法になってくる。いま必要なのは作成方法じゃなくて起動方法なので関係ないな。

とりあえず奈那さんの言っていた通り魔力が重要なのは間違いなさそうではある。

「うーん……パッと思いつく方法として、モンスターに魔力を魔法陣に向かって流すよう指示するとか、魔法陣に触れないようにしながら魔力を流してみるの2つですね」

「なかなか現実的な案だが、モンスターに指示を出すのはともかく、魔法陣に触れずにどうやって魔力を流す?」

「普通にスキルですが」

「ほう。なんというスキルでどう言う効果があり、何が出来るんだ?」

本当はスキルじゃなくて瞑想の末に身につけたただの魔力操作なんだよな。効果も何もただ魔力を動かすだけのものだ。

言い方間違えるとうっかりスキルを使わずに魔法を使う方法まで根掘り葉掘り聞かれそう。

「普通に魔力を動かせるだけのスキルですよ。奈那さんみたいに任意の位置で魔法スキルを出現できるようになりたくて練習用に取りました。効果があったかは微妙です」

「なるほどな。魔法スキルの発動位置を調整するには思い込みが重要だ。他のスキルは関係ない」

「あー、そうなんですか。無駄にスキル取っちゃいました」

「今そのスキルの話関係ある?」

「あぁ、すまない。気になる事があると確認せずにはいられない性格でな。早速実験を始めてみようか」

話題を逸らしてくれた蓮見に感謝したい。

このままだとボロが出そうだった。

「いえ、その前に場所変えません?うっかり失敗して俺らが飛ばされたら終わりですよ」

「それもそうだな。もう少し安全な魔法陣にするか。確か近くに……っ“ 氷壁(ひょうへき) ”!」

奈那さんが突然スキルを唱えて氷の壁を出した。直後、バチバチっという音を立てながら、何かが壁に当たる。

これは……雷で出来た矢?

飛んできた方向を見ると、少し離れたところに黒髪で少し微笑んでおり、どこか不気味な雰囲気のある男が立っていた。

「どうやら呑気に実験をしている場合じゃなくなったようだ……襲撃だ」

「楽しそうなことしてるね。俺も混ぜてよ」

富良野のダンジョンマスターだ。本当に姿を表すとは。てか見せてもらった人相書と全然雰囲気違うんだけど。

「混ぜて欲しいなら攻撃などせず、混ぜてくれと話しかけるべきだ」

「そっちが先に俺のダンジョンで好き勝手やったんだろ?だったら俺が何しようと文句言うなよ。“ 雷槍(らいそう) ”」

「“氷壁”。好き勝手やったつもりはないのだがな」

「探索者なら多少遊んでたってもいいと思うよ。でもその後ろの2人は違うだろ。“ 雷穿弾(らいせんだん) ”」

「“氷壁”。おや、種族差別か?ダンジョンを探索している以上、彼らも立派な探索者だよ」

「普通の探索者は人のダンジョンでモンスターなんて出現させないんだよ。“ 迅雷連弾(じんらいれんだん) ”」

互いに言い合いながらスキル発動させている。奈那さんは氷壁のみで防御することしかしていないが、壁は分厚く、また氷壁の一言で何枚の壁を出現させている。

これも本来なら一枚の壁だっただろうに、カスタマイズして強化されているのは奈那さんだからだろう。

向こうは雷系の魔法スキルを使っており、段々威力を上げているようだが、まだ氷の壁は破られていない。

「“氷壁”。私が彼らを連れてきたんだ。これでも私はダンジョンの研究家を名乗っていてね。色々調べさせていたんだよ」

「チッ……これもダメか。モンスターを出現させて、俺に会いたいって紙に残すのが実験?嘘つかないでよ。さっさと目的言ってくれる?“ 穿雷追弾(せんらいついだん) ”」

氷の壁を避けてこちらに向かってきた。

反射的に 水幕(すいまく) ”と唱えた。

攻撃のスピードが落ち、威力も落ちてるっぽいけど流石に水じゃ止められない。

飛翔スキルで飛んで避けようとしたところ、新たに俺の目の前に奈那さんが氷壁を出現させて攻撃を防いでいた。

「“ 雷槍(らいそう) の乱”」

雷の槍が上から降ってくる。

「“ 氷槍(ひょうそう) の乱”」

下から上の向きに発動させ、全て相殺させていた。

なんでそんなエグいことできるんだろう、この人。

「えー……だっる」

「そろそろ攻撃を辞めて冷静に話し合う気になっただろうか」

「そっちが素直にやられてくれればいい話だよ」

あくまでも富良野ダンジョンマスターは攻撃の手を止める気はないみたいだった。いくら奈那さんのおかげで全て防げているとはいえ、これじゃキリがないな。

一度、完全に動きを止める必要がありそう。

近くまで行ければ拘束スキルを発動させられるけど……いや、その必要はないか。