軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

132話 ルート

シンプルに8月まで誘拐に必要なスキルを取るポイントが溜まってなかったんだろうか。

それか、8月以前も誘拐は行なっていたが、まだ気づかれていないだけとか。

うーん……やっぱり考えてもわかる訳ないな。

「とりあえず今のところは特にないです」

他のメンバーも今すぐ確認しようとするようなことは無いみたいだった。

これ以上何もないならと話し合いは終わり、この場は解散となった。

小田切さんはレンタカーでどこかへ、瑛士たちは今日は小樽あたりを巡るようだ。また長時間運転して戻るのかと寧音が嘆いていた。

そして俺たちはダンジョンである。

装備を整えてダンジョンへ行く。顔を変えているとは言え、今日も雑面を被った。

最初の部屋を抜け、1階層へ降りる。そこに居たはずのゴブリンが消えていた。

「探索者と富良野ダンジョンマスターのどっちが殺したと思います?」

「どちらだろうな。進んで町田のダンジョンマスターに喧嘩を売るような探索者が居るとは思えないが、ここは町田ダンジョンではないからな……おや」

奈那さんの視線を辿ると、隅っこに何かが転がっているのが見えた。

「ちょうど、ゴブリンに持たせていた紙はどこに行ったのかと考えていた所だった。丸められて捨てられていたとはな」

「なぁ、それ中に何か入ってない?」

確かにただ紙が丸まってるにしては大きい。

拾って中を確認すると、魔核が入っていた。

「ゴブリンの魔核だな。どうやら殺したのは富良野ダンジョンマスターで間違いないようだ。探索者なら紙に包んでわざわざ魔核を置いていかない」

「これ、俺らの用意した紙じゃないです。書いてる内容が……20階層左→2右→1左→1右→3右?」

「なんの呪文だよ」

「富良野を拠点にしている探索者の間で伝わっている情報共有の方法だ。この通りに進むと転移トラップがあったり、宝箱があったりする。ただ、このルートは初めてみるな。おそらく誰にも見つかってないか、今回のために用意したかだろう」

「罠だとしても行く以外の選択肢は無さそうですね」

「えー、まじかよ」

「待ち望んでいた向こうからの接触だ。十分に注意して行こう」

「はぁい」

くしゃくしゃの紙は一応大事な証拠品となるので、蓮見の空間に突っ込んでおく。後で小田切さんに渡してもらおう。指紋とかは流石に残してないだろうが、手書きで書かれていたので何かに使えるかもしれない。

今回も奈那さんの案内の元、20階層へ向かう。

と言っても3階層に20階層へ行く魔法陣があるから、それを使うだけだ。前回より楽だな。

ただ、指定のルート通りに行かなきゃ辿り着けないから、一度階層の最初の部分まで戻らないといけない。

20階層は砂の環境変化がかかっており、床が細かい砂で埋まっている。歩き辛いしモンスターが砂の中から突然出てくるので油断はできない。

アルマジロっぽい硬めのモンスターを倒しつつ、探索者とすれ違い、最初の部分まで戻って来れた。

そこからまず左に進み、2回目の分かれ道を右に行き、と指定ルート通りに進んだ。

そしてたどり着いたのが行き止まりだ。

「何もないじゃん」

「いや、砂の下に魔法陣がある。危険察知スキルは反応していないからとりあえず乗っても大丈夫だな」

少し砂を払うと、中から魔法陣が出てきた。普通なら気付けないな、これ。

危険察知スキルが反応していないとはいえ、何があるかわからない魔法陣を使うのはとても嫌だ。けど、ここで帰れる状況じゃないので、3人揃って魔法陣を踏んだ。

視界が切り替わり、どこかに転移したことだけはわかるが、そこは部屋ではなく通路の行き止まりだった。行き止まりの隅には魔核と紙が落ちている。

「モンキッコの魔核だ。わざわざ魔核を持って階層を移動していない限りはここは12階層だろう。紙にはまたルートが書かれている。次はここに行けという事だろうな」

なかなか遠回りなことをしてくる。

今の俺たちはこれに従うしかないので、紙に書いてあった階層、18階層に向かった。

なお、今いる階層は奈那さんの予想通り12階層で合っていた。他の探索者がモンキッコと戦ってる所を通りかかったからだ。囲まれて少し苦戦していたようなので、奈那さんが少しだけ倒す手伝いをして、先に進む。

18階層のルートの先にも魔法陣があり、その先は4階層だった。次は21階層のルートが書かれており、その先にもやはり魔法陣があった。乗ったら9階層だった。これを4回繰り返した。

昨日足を踏み入れなかった階層で念の為導きの棒を使い、反応が無いか確認する作業も同時にやる。

一応22階層でそれっぽい反応があったが、結局小嵜のいる部屋に行く方法がこの階層にあるのか、それとも小嵜のいる部屋がこの階層にあるのかわからなくて保留になり、指示通りのルートを辿る方が優先された。

今は8階層らしきところにいる。もはや見慣れた紙も落ちていた。

「次はまた21階層ですか」

「はぁ?最初に戻んの?完全におちょくられてるだろ」

「体力を消費させに来ているのか、はたまた時間稼ぎをしているのか、どちらだろうな。一度ダンジョンを出て休憩するという手もあるがどうする?」

「そうですね……お腹は空いてますが体力的にはまだ余裕あります。携帯食食べて続行でも大丈夫です」

「さっさと終わらせたいから俺も進みたいかな」

あと何回この工程やれば終わるんだろうな。

もしかしたらずっと様子を見られてて、蓮見の言ってたようにおちょくられているのかもしれない。そもそも誘導したい場所があるならこんなあっちこっちの階層に行かせる必要ないし。

ただ、ルートが手書きで書いてあることから、ダンジョンに用意させたんじゃなくて、わざわざ自分で紙を準備し、ルートを書き、ダンジョン内に置くという作業をしている筈なんだよな。置くのは自分でやったのかモンスターに任せたのかはわからないけどさ。

とにかくそのうち終わりがあると予想して、今はただただ記載のルートに従って動いている。

一度3階層上がり、20階層へ行く魔法陣を使ってショートカットをして、また21階層に戻ってきた。

紙のルート通りに進むと、行き止まりで、今回も砂に魔法陣が埋まっているようだった。

「マズいな。危機察知スキルが反応している。今まで通りに踏むとその先で死にかねない」

「まじかよ」

「富良野ダンジョンマスターはここに誘導したかったんでしょうか。魔法陣から何か読み取れないですか?」

「分かるのは……27階層行きで定員1人名。つまり3人同時に乗っても1人しか転移しないモノということのみだな」

「27階層……富良野ダンジョンってまだそこまで探索者辿り着いてないですよね?」

「あぁ。だからどんな場所でどんなモンスターが出てくるかわからない。転移した先が針の上なんて事もあり得るわけだ」

「迂闊には進めませんね。かといって引き返すという選択肢も無いんですけど」

「俺絶対行きたくないんだけど」

俺も嫌だわ。何があるかわかんないところが特に嫌。転移先の罠で即死の可能性だってある訳だからさ。

ただ、最悪マスタールームに帰還すれば良い事を考えると、最初に行くのは俺か蓮見になるし、蓮見のダンジョンは広島で遠すぎるのと、蓮見を1人にさせられないという観点からまずは俺が行くべきだろうな。

しかし、だからと言って無策で突っ込むほど馬鹿じゃない。

何か対策を立てないとな。