軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

131話 捜索2日目の朝

次の日。変化した顔でホテルの朝食ブュッフェでご飯を食べた。席は特に決まってなさそうだったので、瑛士とは離れた席を選んだ。いくら顔を変えたとはいえ、急に気にしなくなるのも変だし、引き続き瑛士とはあまり一緒に行動しないようにするつもりだ。

朝食を終えると、歩いて奈那さん達の旅館へ向かう。

変化した顔で向かうか、そのままの顔で向かうか迷った末に、変化した顔で向かう事にした。北海道ではこの顔で過ごすつもりだから、覚えてもらっといた方が都合がいいかなって。あと、監視カメラとか人の視線を気にして顔を切り替えるの面倒。

奈那さんに事前に連絡して町田真の名前でも通してもらえるように頼んでおいたので、問題なく今日も入れた。

部屋には既に4人居て、俺が到着した数分後に瑛士と酒木が来た。

「よし、全員揃ったな。では早速昨日の報告をしよう。まず私達だが、17階層までの目ぼしいトラップを見たが、小嵜麻夢さんは見つからなかった。また、ダンジョン内に富良野ダンジョンマスターへ宛てたメッセージを残したので、今日は接触がないか待つ予定だ」

「私達は札幌市内の観光地を巡っていろいろ聞いて回ったけど、結果はイマイチね。観光地なだけあって、年中人の流れがすごいもの。175cmのどこにでも居そうな男なんて誰も覚えてなかったわ。今日はもう少し遠くの観光地まで行く予定だけど、流石にもっと情報がないと厳しいわね」

「我々は犯人の移動手段、特に使用車両に関する手がかりを精査しているところです。これまで観光地周辺についても調査を行いましたが、有力な情報は確認できませんでした。ただし今回は、富良野ダンジョンの駐車場を重点的に確認しています。あの駐車場は整備当初から出入口に監視カメラが設置されており、映像の保存期間こそ約三か月分に限られますが、最近も関連する誘拐事件が起きているため、充分に検証に使えると判断しています」

「ごめんよくわかんなかった。もうちょっと簡単に説明して?」

「ようは現時点でまだ誰も何も進展してないから、引き続き調査と捜索を頑張ろうって事だ」

「なるほど!」

やっぱり数日でどうにかしようってのは無理あるよなぁ。

誘拐事件の犯人に富良野ダンジョンマスターが候補に上がったのが先月。おそらく、そこから警察の調査がスタートしたのだと思うが、昨日の報告を聞いている限りではあまり進んでいそうにはなかった。

そこに素人が参入したからと言って、簡単に何か進展するわけがない。

明後日に帰りの飛行機とってるけどそれまでに小嵜見つかるかな。……無理そう。

「今日も頑張るって言ってもさぁ。流石に情報無さ過ぎてただ観光地で富良野ダンジョンマスターを探してる変な集団になってるんだけど」

「え、変だった?」

「瑛士がいるから何とかなってた部分はあったわね。瑛士が富良野ダンジョンマスター探してるって言っても違和感ないもの。向こうは冗談として捉えて色々話してくれることも多かったわ。ま、それで有益な情報が得られるかは別だけど」

「情報は得られずとも、意味はある。富良野ダンジョンマスターが観光地からの誘拐事件に関わっているとは世間に公表されていない。そんな中、自分が事件を起こした場所で他のダンジョンマスターが自分を探していると知ったら?流石にプレッシャーになるだろう。無視はできない。

そして私達は昨日ダンジョンを荒らして来た。こちらもなかなか無視はできないような事を起こしたつもりだ。ダンジョン内と観光地。2つの場所で富良野ダンジョンマスターにとっては無視できない事柄が起こっている。相当焦る筈だ」

「それで何かミスをするかもしれないって訳ね」

「あぁ。せめてどちらかの動向は近くで観察する筈だ。もしかしたら瑛士くんのファンを装って目的を探るために接触してくるかもしれない」

「えっ嘘!?俺見分けつかないよ!」

まぁあくまでも可能性の話だ。普通なら観光地のどこに居るかわからない瑛士よりも、ダンジョンにいるとわかってる俺達の方に接触してくる。

瑛士の方に行くなんて、たまたま近くに居たか、監視しやすい俺達よりも優先させたかのどちらかになるだろう。

「瑛士くんが見分け付かなくても寧音が見てるから安心してくれ。瑛士くんはいつも通り人と接していればいい」

「なら良かった!」

「結局今日もロクに情報ないまま聞き込みかぁ」

「ついでに観光できるんだからいいじゃない」

「それはそう。ご飯も大体奢ってくれるしダンジョン探索より全然良いよ」

ダンジョン探索の方が良いだろ。人との接触が少なくて。あと聞き込みしても聞ける情報少なくて可哀想。

情報か……

「一応確認なんですけど、ダンジョンマスターはダンジョンの外でスキルを使えるってのは知ってます?」

「その可能性を視野に入れてましたが、やはりそうでしたか」

「あれ、使えるのってみんなの共通認識だと思ってたわ」

「ダンジョンマスターで使えるって公言してる人今の所居なかったからな。瑛士にも黙らせてたし」

「へぇ。ならこの場で言って良かったん?」

「富良野ダンジョンマスターがスキルで姿を消して行動している可能性の方が高いのに、言わなかったら一生見つけられないだろ」

ただ、姿を隠せるスキル、例えば俺が使ってる隠遁者スキルは人やモンスターを隠せても、流石に車までは隠せない。その他のスキルで車を見えなくさせていたとしても、存在を無かった事にはできないから、うっかりしていると普通に事故る。駐車場に車を長時間停めているならその時は流石に隠せないだろう。

つまり、徒歩やものすごいポイントが必要な転移といった車を使わない方法をとっていない限り、富良野ダンジョンの駐車場には何かしらの手がかりは残っている。

3ヶ月分の映像をどれくらいの期間で確認し終わるかは知らないが、小田切さん達に任せていればいずれ富良野ダンジョンの正体に近づくと思う。

だから別にいらない情報だったかもしれないけど、証拠不十分とかで富良野ダンジョンマスターじゃないって判断されても困る。

それに、もし富良野ダンジョンマスターを見つけることができたとしても、警察関係者には絶対捕まえられない。だって捕まるか、捕まりそうになったらマスタールームに戻ればいい話だし。あとは俺と同じく変化スキルでも取れば別人に成り代われる。俺はAIで顔を作ったけど、別に現実に存在する人の顔になる事だってできるのだ。

俺はマスタールームの存在は公開するつもりはない。実は奈那さんにも言ってない。向こうの料理出せちゃったあたりで説明したら面倒な事になりそうだなと思って伏せてた。

蓮見あたりが奈那さんに言ってたとしても、今のスキルの件を小田切さんが知らなかったのなら、奈那さんはあまり小田切さんに情報を渡していないようだ。

そうなってくると探して捕まえようとしている側が不利過ぎて、今やってる捜索もマジで無意味になってくる。

可能性があるとすれば、マスタールームに逃げられる前に、手と口を拘束すれば捕まえられるかもしれないけど、なんの理由もないのにそれが出来るのかっていう話だ。

だからスキルで逃げられるかもという可能性の話をしてワンチャン捕まえられる可能性を上げている。これを聞いて実行するかどうかは別として。

「スキルで姿が見えなくなってたら一生見つからないじゃない」

「見つからなかった、で終わるならまだマシだな。街中でスキルで攻撃してくるかもしれない」

「周囲に警戒しながら聞き込みをする必要がある訳ね。昨日の時点で言いなさいよ、それ」

「昨日の時点ではスキル使えるってみんなが知らないこと気づいてなかったんだよ」

「本当かしら」

「えっと……とにかく、貴重な情報を提供して頂きありがとうございました」

「いえ、言うのが遅くなってすみません」

「他にも気になる点がありましたら、どうぞ遠慮なく言ってください。皆さんも同様に、どんな些細なことでも構いません。思わぬ形で手がかりにつながる可能性がありますので」

他にかぁ。なんかあったかな。

気になることを強いて言うなら何故富良野ダンジョンマスターは観光地から人を誘拐していて、誘拐した人をどうしているのかっていう根本的な所だけど、わかる筈ないしな。

後は、誘拐事件の始まりが去年の8月みたいなこと言ってたけど本当にそれ以前には誘拐事件は起こっていなかったのかって部分と、もし本当に8月からだとしたらなんでその月からだったのか。

やろうと思えば蓮見みたいにダンジョンが出来てすぐに人を無理矢理連れ込むことはできたのにさ。