作品タイトル不明
130話 変化スキル
ダンジョンを出る時、雑面は外して代わりに隠遁者スキルを使った。
本当は魔力消費するからこの旅では使わないつもりだったが、富良野ダンジョン内なら回復薬を出せるって気づけたので、遠慮なく使えるようになった。
看板に町田ダンジョンマスターの名前を出した以上、ダンジョンの外で俺を探しに来る探索者がいるかもしれない。なんか、SNSとか掲示板を見る限り、俺を特定しようとする輩が一定数いるんだよね。
素顔で瑛士や奈那さんと居るところを見られたらおそらく終わりなので、全力で隠れようと思う。
酒木については、なんかもういいや。一応俺がダンジョンマスターだと認めてなかったけど、瑛士とあそこまで仲良くなってるの見てると、警戒してるのが馬鹿らしくなってくる。後で俺のこと言いふらさないよう口止めしとこう。
奈那さん達とはまた明日の朝話し合おうという事で別れ、俺はホテルへと戻った。部屋に入ってから隠遁者スキルの効果を切って、レンタルした武器を返しに行く。そしたらまた部屋に戻ってルームサービスを頼んだ。
一応ここの2階にはレストランと複数のチェーン飲食店があるのだが、人目を避けた形だ。
SNSには早速町田のダンジョンマスターが富良野ダンジョンに来ているという情報が上がっていたからさ。ここは探索者が多く止まってるホテルだし念の為ね。
うーん……にしてもこうやって外で活動してるとやっぱり素顔を出さないってのも限界を感じてきたな。声でバレることもこれから増えてくるかもしれない。
新しくスキルとるか?
一応目星はつけてたんだよな。
顔を変えられるし動物にも変われる 変化(へんげ) というスキルがある。ただ、これを取得するには100万ポイントもかかる。
変装というスキルなら10万だが、こっちは顔を変えられないから、取るなら変化だなぁと思ってた。
ポイント的に今まで取らなかったんだけど、現在はポイントに余裕があるし取ってもいいのかもしれない。
……よし、取るか。
画面を操作してスキルを取得すると、早速使い方が頭の中に入ってくる。
なるほど。
変化している間は常時魔力を消費して、その消費量は元の自分と変われば変わるほど大きくなるのか。
目の色や髪の色を変えるくらいなら隠遁者スキルと同じく10秒に1魔力の消費。顔の造形を変えるなら3で、身長とか体型まで変えだすと5。猫とか鳥になりたいなら10秒間に100、200とどんどん魔力が必要になってくる。
俺の現在の魔力値は2734と人類と比べれば高い値だが、もし鳥になるなら約2分しか持たない。
顔の造形変えるだけなら……2時間と少しはいけるな。
ちょっとした外出や回復薬を飲んでいても違和感がないダンジョン内なら問題なく使えるが、回復薬を持ち込めない飛行機内だと厳しそう。帰りも瑛士と離れた席にするしかない。
さて、じゃあ実際に使ってみるか。
変化スキルは具体的にイメージを想像できないと姿を変えられない。1から架空の顔を想像するのは困難なので、リアルな顔を生成出来るAIサイトを使って、いくつか候補を出してみた。
……マジでどれでもいいな。髪はスキルじゃなくてセットで変えるつもりなので、顔は今の俺とは全然違うつり目のこれにしよう。
画像をジッと見つめながら唱える。
「“変化”」
あんまり変わった自覚ないけど、魔力が消費された感覚はあるのでたぶん成功してるな。
バスルームにある鏡を見に行くと、そこには画像通りの顔が写っていた。表情も問題なく動かせる。
俺の顔だと思うと違和感がすごいが、他人の顔だと考えると別に変なところはない。一応奈那さんに自撮り送って、違和感無いか確認してもらおう。
あ、早速返信が来た。
この短時間でどうやってこの長文を打てるんだよ。まとめると事前にスキルで作られた顔だと知っていて、尚且つ注視しなければ違和感を抱くのは難しいとのこと。あと変化スキルについての詳しい情報が欲しいそうだ。
情報は後で送っとくとして、奈那さんでも事前に知っていないと分からないなら、明日からはこの顔で過ごそうかな。あと名前も変えなきゃ意味ないか。この顔の時は前に使った町田真って事にしておこう。
さて、次はもうちょい変化する割合を増やしてみようかな。本当は動物に変化してみたいところだけど、スキルに慣れない内からやろうとすると上手くイメージ出来ていたとしても失敗するっぽい。
だから次は身長を変える……だけだとつまらないか。思い切って子供の姿に変化してみようかな。
今回は変化の練習だし、過去の俺の姿でいいか。たしか、SNSの家族グループに母親が急に送ってきた昔の俺の写真があったはずだ。
一回今の顔を解き、5歳の俺が写ってる写真を見つめる。
そして変化と唱えると、視界がじわじわと下がっていき、やがて止まった。服がものすごいぶかぶかである。隠遁者スキルは服ごと隠してくれるけど変化スキルは対応していないんだな。
今の身長だとバスルームの鏡に届かないので、スマホの内カメで自分の姿を確認した。写真の通りにはなっている。
昔はこの姿だった筈だが、特に懐かしさは感じないな。あんまり覚えてないし、この頃って普通そんな外見意識して生きてないからな。
身長があまりにも変わっているので、試しに部屋の中を歩き回ってみる。問題なく動かせるけど、服のせいで歩きづらいな。
そんなことをやっていると、部屋のドアが開いた。
「ただいま!ってあれ、俺部屋間違えた?」
瑛士が帰ってきたようだ。
「部屋はあってるから安心しろ。俺蒼斗。スキルの実験中」
「え、うそ!?スキルってこんなことも出来るんだ!ちっちゃくてかわいいー!なんてスキル?」
「変化ってやつ。年齢変えるだけなら年齢操作ってスキルもあるよ」
「へー、知らなかった。面白そうだね」
「その反応、取る気はないだろ」
「まぁね。見てる分には楽しいけど俺はいいかな!スキル取るならズバズバモンスター斬れるやつがいい。ねね、それ他の姿にもなれる?」
「なれる。あー、そうだ。変わってる最中どうなってるか確認したいから、動画取ってくれない?」
「おっけー!」
とりあえず元の姿に戻る。
動画を確認すると、人が急速に成長する様が映っていた。側から見るとなんか気持ち悪いな、これ。
次は1番最初に変えた顔に変化して瑛士に見せてみた。別人みたいって驚いてた。みたいじゃなくて、この顔の時は別人として扱ってほしい。
「この顔の時は真って呼んでくれ」
「わかった!」
次は動物に変化してみようとしたが、どの動物も上手くいかなかった。
瑛士にAIに確認させたら、変化スキルで人以外の姿になるには骨格レベルで理解していないと無理らしい。上手くイメージ出来ていたとしても失敗するってそういうことかと納得した。
今すぐには出来ないことに、何故か瑛士が残念がっていた。
まぁ、俺もせっかくなら何かしらの動物にはなってみたい。
変化しても短い時間しか保っていられないとはいえ、もしかしたらいつか役に立つかもしれないし。
試しに資料が多そうな犬あたりの骨格図を調べて覚えてみるか。