作品タイトル不明
129話 伝言
とりあえず色々出してみた。
流石になんでも出せるとはいかないようで、魔法陣は範囲外ですみたいなことを言われ、配置が出来なかった。また、俺の手の届く範囲を少しでも超える大きさの物体もスペースが足りませんと言われ無理だった。
要はゴブリンくらいの小型サイズのモンスターはいけてもオークくらいになると無理ということだ。
あと、罠だと絶対スペース足りている筈なのに、足りないってことで落とし穴やドアタイプのものなど、富良野ダンジョンの床と壁に干渉するものは置けなかった。干渉しない、ただ置くだけのトラバサミとかなら設置できる。
「ふむ。なかなか興味深いな。床と壁あとは天井もだな。そこは富良野ダンジョンの領域だから干渉出来ないと仮定すると、空間自体には所有権が発生しておらず、他のダンジョンマスターも使用可能ってところだろうか?」
「空間が誰のものでもないとすると、AIを通じて他のダンジョンの様子を見たりするのも可能になっちゃいそうなので、どちらかと言うと空間も本来はそこのダンジョンマスターのモノ。しかし他のダンジョンマスターが来た時の場合に限り、ダンジョンマスターがダンジョンと一心同体であるという前提を崩せない以上、所有権が上書きされるという認識の方が近いかと思います」
「ならダンジョンマスター同士が隣り合った時、重なり合った空間はどうなるんだ?あとはモンスターが至近距離にいた場合はモノを出せるのか。装飾は領域とされているだろうが、宝箱からでるアイテムやドロップアイテムの所有権がハッキリしてないモノがあった場合も試してみたい」
「蓮見、ちょっと俺に近づいて」
「奈那がやりたいなら従うけど、絶対おかしいだろ。なんで実験始めてんだよ」
俺も奈那さんも小嵜の捜索にはあまり気が乗らないから仕方がない。
とりあえず満足の行くまで調べてからでも遅くないし。ここで色々やった結果が後で何かに役に立つかもしれないじゃん?
「ドレッドスパイダーを俺の足元に出して」
『承知しました』
ドレッドスパイダーは出せるギリギリの大きさをしてるのだが、蓮見が近くに居ても普通に出せたな。被ってる部分の空間はどちらの物でもないと認識されているのか双方に所有権があると認識されてるのか。
「今の状態でモンスター出せるか?」
「やってみる」
そう言って蓮見はAIに話しかけたが、モンスターが出てくる事はなかった。
「スペースが足りなくて無理だってよ」
「何かが占領してるとダメなのか。なら鳥系のモンスターなら空中に出そうとしてみて」
「はぁい」
空中に鷹みたいな鳥が現れる。爪が鋭くて紫色をしている。知らないモンスターだな。
「おぉ!それならいけるのか。ならば陣地が重なっている部分はどちらの物でもあるのだな。ここのダンジョンマスターだとどうなるのか試してみたい所だが、まずは見つけないといけないか」
「あんまり変わらないような気はしますけど。まぁどうしても実験したいなら俺のダンジョンに来て試せばいいんじゃないですかね。少しくらいなら手伝いますよ」
ダンジョンマスターからの侵略を防げないと困るので、方法があるなら知りたい。
今の所率先してダンジョンマスターをモンスターに狙わせて追い返すくらいしか対処法が無いし。
「ふふ。それは助かるな」
「それ、俺も頭数に入ってる?」
「手伝いは瑛士に頼むから蓮見は別にいい」
「ならいいけど」
蓮見はこの短い間の実験ですでに嫌気がさしているようだ。些細な違いを知るために似たようなこと繰り返したもんな。そのせいでダンジョンの床がアイテムでぐちゃぐちゃになってるし、いろんなモンスターがそこら辺に待機してる。
……一応片付けとくか?いや、荒らす目的もあるからこのままでいっか。
別に大した物は出してないし、誰かに持っていかれても困らない。
「大体出来ることがわかりましたけど、どうします?その階層にいるのと同じモンスターを配置させてけば探索者には迷惑かかりませんけど」
「それだと弱いな。モンスター同士で戦わせよう。あとは入り口に紙かなんかを持たせたモンスターを立たせるのはどうだろうか?会いたいと記入しておけば、もしかしたら素直に向こうから会いにくるかもしれない」
「わかりました。じゃあまずは紙の用意ですね」
「さっき作った攻略図を持ってきている。その裏面に書けばいいだろう」
雑だなぁ。書ければなんでもいいけどさ。
ということで、ペンだけをポイントで出した。
地図を書くのに必要だから、普通の探索者ならボールペンくらい持ってる筈だけど、奈那さんは頭の中に全部攻略情報入ってるからな。俺も蓮見も奈那さん頼りになるって事前にわかってたので、誰もペンを持ってなかった。
あとは肝心の内容だな。
どうしようか考えている間に奈那さんが勝手に書き出した。
【直接会ってお話ししたいです。
町田ダンジョンマスターより】
「内容シンプルすぎません?あと俺の名前いります?」
「大夢くんがあまり大事にしたくないと言っていたので、小嵜麻夢さんの事は書けない。これくらいで丁度いいだろう。君の名前を出したのは、相手が誰かわかってた方が向こうも安心するだろうからだ」
「まぁいいですけど。せめて誰宛かと探索者に攻撃されないようにアピールした方がいいと思います」
「あぁ、それはそうだな。書き足そう」
富良野ダンジョンマスターへという文言と、空いたスペースに“攻撃しないで!”“悪いモンスターじゃないよ!”という表記が足された。
完全にふざけてるとしか思えないけど、意味は伝わるしもうこれでいいんじゃないかな。
実験で出したゴブリンにこの紙を持たせて、最初の部屋を降りてすぐのところに待機させる。もちろん人類に攻撃しないように命令はしてある。
そしてこのまま放置だ。
人類に倒されないといいな。
このあとは普通に階層を降りていった。
午前中に来た時は転移トラップを利用したショートカットをしたけど、今回はモンスターを出していくという目的があるので、転移トラップを使わない最短ルートを通っていく。
歩きながらAIに話しかけてモンスターを配置してもらい、モンスターには富良野ダンジョンに元々いたモンスターを攻撃するように命令する。これを俺と蓮見で階層ごとに交互にやった。
途中、他の探索者に遭遇したが、話しかけられることは無かった。この雑面のお陰だろうか。対応が面倒なので助かる。
9階層はオークがメインのモンスターで、俺らには出せないのでサクッと飛ばし、その後はモンスターを出し続け、あっという間に15階層まで来た。とは言っても、たぶん1時間はかかってると思う。体感だけどな。
15階層からは攻略ルート近くの転移トラップにあえて引っかかっていく。
導きの棒を使いつつ、それを17階層まで行ったが、小嵜は見つかることなく、富良野ダンジョンマスターからの接触も無かった。
たぶん階層が合っていない所為だけど、使えないなこのアイテム。
残念だけど、捜索は明日に持ち越しだな。