作品タイトル不明
124話 チーム分け
「ごめん、難しかったからもう一回説明してくれない?」
「富良野ダンジョンマスターが誘拐事件を起こしてて、事件の内容から富良野のどこかに住んでるんじゃないかと予想したってとこだよ。ただ手がかりは細身の男、身長は175cm、事件の日はコートを着ていたってことのみだ」
「……なるほど!」
さてはわかってないな瑛士。
おそらく小嵜をダンジョンで探すつもりで来たのに、何故か富良野ダンジョンマスターを探す流れになったからついていけなくなったんだろうな。
後で詳しく説明してやろう。
「とりあえず、富良野ダンジョンマスターを見つけるのは不可能ではないって覚えておけばいい」
「わかった!」
「不可能じゃないって言ってもさ、場所がある程度絞れてようと、今ってコートを着るような季節じゃないから、富良野のダンマスの特徴って実質黒髪の175cmの男って事だけじゃね?そんな奴なんてどこにでも居るよな」
「人相書はあります。逮捕した探索者たちの証言をもとに作成されたものです」
「おぉ、じゃあそれを元に探せばいいじゃん!」
「いえ、遭遇から時間が経過した後の供述を基にしているため、精度についてはあまり期待できません」
それもそうか。奈那さんみたいにすごい記憶力を持っていない限り、だいぶ前に1回会っただけの相手の顔なんて覚えていない。細身って情報もこの数ヶ月間で激太りとかしてたら役に立たない情報だし。
そもそもなんとか見つけられたとしても、相手は誘拐事件を起こし、目の前で起こる殺人行為を楽しそうに見る相手だ。話が通じるとは思えない。小嵜を解放するよう頼むのは無理があるだろう。
だからといって、富良野ダンジョンのどこで小嵜がトラップに引っかかったのか調べるのも難しいけどな。
「無いよりはマシだろう。ただ現状、不可能では無いというだけで、難しいことには変わりない。ダンジョンで小嵜麻夢さんを探すチームと外で富良野ダンジョンマスターを探すチームに分かれて行動しようか」
……まぁ、妥当かな。
どっちも可能性低いならどっちもやったほうが少しは確率あがる。もう少し情報があるなら他に作戦を立てようがあるけど。
ただ、問題はチーム分けだ。
人数的に3と4に別れるんだろうけど、より危険なのはダンジョン探索か?だとしたらこっちを4……でもうっかり転移トラップ踏んでどこかの部屋に閉じ込められた時に脱出できるダンジョンマスターでまとめた方が良いよな。ただ人探しなら奈那さんの目があった方が良いだろうから、スキルを使わせる為に1人は探索に向かわせた方が良いか?
難しいな。
「チーム分けだが、小田切さんは独自の伝手でさらになにか情報がないか単独で探って貰う。残りで3対3に分かれよう。何か希望はあるかな?」
「はい!俺ダンジョンの方行きたい!」
「俺はどっちでも良いよ」
小田切さんは単独行動するのかよ。まぁ警察関係者っぽい人なんて居ても扱いに困るけどさ。
俺はどちらかと言うとダンジョンの方に行きたい。いや、だって、捜索ってことは知らない人にたくさん話かけなくちゃいけないってことだろ?出来なくはないけど、ちょっと嫌というか、あんまり人の印象に残りたく無い。
蓮見も聞き込みとか出来そうに思えないしダンジョン側だな。
となると、俺、瑛士、蓮見が探索チームで、奈那さん、寧音、酒木が探すチーム?……なんか、すごくバランス悪い気がする。
もっとやばい奴が出てきた所為で霞んでいるが、蓮見も都合の悪い人間をダンジョンに誘拐した側の人間なのだ。瑛士のフォローをしながら蓮見の様子も気にするのはちょっと厳しい。
蓮見は弥竹姉妹のどっちかと組ませたい。
……なんかもう考えるの面倒になってきたな。能力重視でいこう。
ダンジョン探索を希望した瑛士には悪いけど、瑛士は知らない人に話しかけるのは得意分野なんだから捜索チームに入れた方が良いだろうし。
「希望じゃなくて、能力を見て決めた方が良いじゃないですかね。瑛士は外で聞き込みやってもらった方が活かせるし、逆に蓮見にそれは無理でしょう」
「ふむ。一理あるな」
「瑛士、今回はダンジョンじゃなくても良いか?」
「えー」
「聞き込みとかのついでに北海道観光ができるぞ」
たぶんだけど。
「ほんと!?」
「それに、ダンジョン探索がしたいなら、富良野のダンジョンマスター見つけられた後でもできるだろ?」
「……たしかに!なら俺ダンジョンマスターを探す方で良いよ!」
「じゃあ瑛士は決定で、蓮見はダンジョン探索側でいいか?」
「別に……勝手に決めたらいいよ」
「ならダンジョン探索側で」
ライセンス持ってない事考えると本当は捜索チームの方が良いんだろうけど、蓮見ってあんまり表に出せない人間だし、ライセンスを確認する人いないから探索チームにいれても良いだろ。
「で、俺もできれば探索側が良い。てなると、人数的に探索も捜索も向いてそうな酒木は捜索チームでいいか?」
「おっけー」
「ありがとう。あとは2人で決めたらいいよ」
「ちょっと。急に雑になったわね」
仕方ないじゃん。どっちでも良かったんだから。
奈那さんのスキルはどっちに対しても役に立つ。デメリットはテンションが上がると話が通じなくなるところだろうか。
寧音のスキルはどっちにあっても大して変わらない。代わりに細かい攻略情報を持っているし、知らない相手でも常識的な感じで話しかけられる。
まじでどっちでもいい。
「どっちがどっちに配置されても対して変わらないから好きな方にしたらいいと思う」
「私はどちらでも構わない」
「そう。酒木さんは車運転できるかしら?」
「ごめん俺免許持ってない」
「なら私は捜索側に行くわ。車運転できる人が居ないと移動に困るでしょ」
……移動に車が必要なこと忘れてたわ。寧音は絶対捜索側だな。
ということで、俺、蓮見、奈那さんチームと、瑛士、酒木、寧音チームに分かれる事になった。
最後に小嵜弟から改めて姉をお願いしますと頼まれて、その場は解散する。
ここに来る前にダンジョンに行く準備は終わらせて来ている。
早速歩いて富良野ダンジョンへ向かうことになった。
「なぁ、さっきの小田切って人絶対警察かなんかだよな?オレ、ライセンス持ってないけどこっちのチームでよかったのか?」
「バレて不味いのは武器を所持しているのにライセンスを携帯してなかった場合だ。今の蓮見は武器持ってないから平気だろ。ダンジョンの中にさえ入れば声をかけられることも無いしな」
「ほんとかよ」
「奈那さんが俺らの情報を向こうに全く共有していないとは思えないし、あの場で止められなかったんだから黙認してくれるって認識でいる」
「ふふ。大体合っている。小田切さんは富良野ダンジョンマスターを捕まえる事しか興味がない。捕まえるためなら多少の事は気にしないだろう」
「……ならいいけど」
まぁもしライセンス持ってないのにダンジョンに入っている事がバレても、大した罪にはならない。蓮見は未成年だし厳重注意くらいで終わるだろう。
どちらかと言うと、ダンジョンに入った時にダンジョンマスターに行く通知をどうするかなんだよな。
今回は瑛士という身代わりがいない。
通知が行った時、俺、奈那さん、蓮見の誰かがダンジョンマスターであることが向こうにバレる。
いつもみたいに顔を隠しておいた方がいいか?
それだと町田ダンジョンのマスターであることはバレるけど、小嵜と俺が繋がってることは別に隠していない。むしろ俺だとわかる事で、小嵜を探しに来たのだと思われるんじゃないかな。
その時、接触してくるのか放置されるのか……
考えてもどうなるのかわかんないし、とりあえずやっぱり顔はバレたく無いから雑面被って行くか。布で出来ているから荷物に紛れ込ませて持って来ていたんだよな。
ダンジョンに入る直前、ウエストポーチから雑面を取り出してサッと顔に着ける。蓮見にはなんかギョッとされたけど無視だ。
そして俺たちはダンジョンの中に足を踏み入れた。