軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話 護庭衆《ガーディアン》

「なるほど……つまりそのスーツの男たちにリリシア殿が 攫(さら) われた。そういうことだな」

魔物対策省、大臣室。

大臣としての仕事を普段行っているその部屋で、大臣の堂島龍一郎は真面目な顔でそう言った。

彼の前には星乃と凛、そしてダゴ助がいる。

ダゴ助にはまだ吸ったガスの効果が残っており、だらんとした様子で椅子に座っている。彼はその状態でなにが起きたのかを説明し、それが終わったところであった。

「ああ、俺が知ってるのは全部話したぜ堂島の旦那。あいつら 手慣れて(・・・・) やがった。素人じゃねえ、プロだぜ」

「……そうか」

ダゴ助の話を聞いた堂島の表情は暗く、険しいものであった。

それを見て疑問を持った凛は、堂島に尋ねる。

「堂島大臣。もしかしてそのスーツの男たちに心当たりがあるのではないですか?」

凛の質問にぴくりと眉を動かす堂島。

しばらく押し黙る堂島であったが、やがて重い口を開く。

「――――以前田中がリリシア殿をダンジョンから救出した際、何者かに拉致されそうになったのを覚えているか?」

「あ、そういえばそんなことがあったな。ガスマスクを着けちゃねえが、あれもスーツの男たちだった!」

ダゴ助が思い出したように話す。

彼らがダンジョンから脱出するその間際、スーツの男たちに襲われた。

その時は天月が助けに入ることで事なきを得ており、それ以降はちょっかいをかけられることもなかった。

「かつて幕府に仕えた『御庭番衆』。それを祖とする忍者集団が奴らじゃ。今はその名を捨て『 護庭衆(ガーディアン) 』と名乗っておる。もうリリシア殿は諦めたと思っておったが……まさかこのような強硬手段に出るとは」

「でも旦那、本当にそいつらなんですかい? 確かにどっちもスーツの男たちでしたが、それだけで決めちゃっていいんですか?」

似たようなスーツを着ていると言うだけで同じ組織だと決めていいのか。

ダゴ助はそう疑問に思ったが、堂島も思いつきで言っているわけではなかった。

「お主らの家は、厳重な警備プログラムで守られておる。侵入しようとする者がいれば、即座に感知され、いくつもの罠が作動し警備の者も駆けつける仕組みとなっておる。」

「あの家ってそんな仕掛けがあったのか……」

そんなこと全く知らなかったダゴ助は驚く。

堂島の説明は真実であり、今まで他国の者が何度か侵入しようとしたが、その罠によって即座に捕縛されていた。

魔物対策省の中とはいえ、完全に安全なわけではない。

リリシアやダゴ助は虎穴の中に入ってでも入手したいほどの価値があった。

「でも警備プログラムがあることが、今までの話とどう関係があるんですかい?」

「伊澄ちゃん、説明を頼む」

堂島がそう言うと、今まで彼の後ろに控えていた秘書の伊澄が前に出る。

彼女はタブレットを操作すると空中に 映像(スクリーン) を投影し、その画面を彼らに見せる。

「警備プログラムの作動履歴です。スーツの男たちが侵入した時も、そして逃走した時も警備プログラムは作動しませんでした。最初はプログラムを上手くかいくぐったのかと思いましたが……違いました」

「え、どういうことですか?」

星乃が疑問の声を上げる。

伊澄はそんな彼女の問いに丁寧に答える。

「少し解析に手間取りましたが、警備プログラムが いじられた(・・・・・) 形跡を発見しました。侵入された時間帯、警備プログラムは意図的に 止められていた(・・・・・・・) のです」

「え……!? そんなことできるんですか!?」

星乃の問いに伊澄は首を横に振る。

「警備プログラムは黒須博士も設計に協力してくれた強力なもの。そうやすやすと書き換えることはできません。考えられるとしたら一つ。内部に裏切り者がいるということです」

「そんな……」

星乃と凛の表情が曇る。

敵が内部にいるとは思いもしなかった。

しかしそう考えれば合点がいく。いくら厳重な警備でも、中から手招きする者がいるなら侵入は容易い。

「敵と通じている奴がいるってのは分かりました。でもそれがその 護庭衆(ガーディアン) って忍者たちとどう関係があるんですかい?」

「 護庭衆(ガーディアン) の主人、『 庭主(にわぬし) 』と呼ばれている男はとある資産家なのじゃが……そやつは政治家とも太い 繋がり(パイプ) を持っておる。それもワシも把握しきれんほどたくさんな。おそらく手先はこの魔対省にもいる。奴くらいじゃ、魔対省の警備プログラムを切り、リリシア殿を誘拐できる手練を用意できる者はの」

大臣室に静寂が訪れる。

それほどの力を持つものであれば、一筋縄ではいかないだろう。

モンスターであれば斬れば解決できるが、権力者となればそう簡単にはいかない。

みなが重い表情をする中、星乃は気になっていることを質問する。

「堂島さん。その資産家というのは、一体どなたなんですか?」

「そやつの名は『 継川(つぎかわ) 宗真(そうま) 』。日本有数の巨大企業、継川グループの総帥にして、幕府将軍の血を引く裏の権力者。奴と戦うなら色々と覚悟せんといかんな」