作品タイトル不明
第5話 天月、初コラボをする
「みなさんこんにちは、田中誠です。今日も配信に来ていただきありがとうございます」
"こん"
"こんシャチケン"
"こんにちは~"
"待ってた"
"今日はどこだろ"
"きた!"
"配信久しぶりだ~"
配信を始めるとコメントが勢いよく流れ始める。
そういえば最近は政府の仕事をやっていたので配信していなかったな。最後に配信したのはコラボカフェの時か、少し空いてしまったな。
「この前のコラボカフェではたくさんの人にお越しいただきました。来てくださった方々、ありがとうございます。また似たようなイベントを開けたらと思っていますので、その時はまた来てくださいますと嬉しいです」
"はーい"
"現地マジで楽しかった"
"キャストのファンサやばくて死ぬかと思ったw"
"絶対行く。来るなと言っても行く"
"次の抽選はガチるわ"
"唐突にメニューに追加されたリヴァイアサン肉美味かった"
"田中のコーヒーめっちゃ苦くて草だった。あれが労働の味……"
"メイドりりたそ見れただけでマジでガチで行く価値あった"
"今から楽しみ"
みんな口々にコラボカフェの思い出を語ってくれる。
これだけ楽しんでくれたら、やった甲斐があったというものだ。 店員(キャスト) として参加したみんなも楽しんでいたし、またやりたいもんだ。
……と、思い出に浸るのもいいが、今日の配信のことも忘れないようにしないと。
まずは今回の同行者を紹介しなきゃな。
「今日はここ奥多摩山林ダンジョンに潜ります。そして今回は同行者がいます」
"え"
"誰だろ"
"ゆいちゃんかな?"
"りりたそ~"
"三上くんでもいいのよ"
"ここは大穴で天月課長!"
"天月さんはないっしょw来たら木の下に埋めて貰って構わないよw"
"草"
"フラグかな?"
「えー、今日一緒に潜るのは私の幼馴染みで討伐一課の課長を務めている、天月奏です」
「えっと……こんにちは。天月奏です。配信は不慣れですがよろしくお願いします」
"えーーーー!?"
"ガチ?"
"天月課長キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!"
"ふつくしい……"
"最近仕事行ってないって聞いたけど元気そうでよかった"
"やはりフラグだったか。木の下埋まれよ"
"\ババーン/"
"埋まってて草"
天月が登場すると、コメントが大盛り上がりする。
こうして正式にコラボするのは初めてだから、盛り上がるのも当然か。普段は仕事が忙しくて配信に出るなんてできないからな。
"かなたそかわいいはあはあ"
"愛称はかなたそで決まりなの?w"
"かなたそに冷たい目で見られたい"
"反省文書けって言われたい"
"ネチネチとミスを詰められたい"
"視聴者にドMニキが多すぎる"
"ここにドMネキもいるぞ!!!!"
"誇るようなことではない"
"天月課長の部下になりたい人生だった……"
"てか顔色あんま良くないけど大丈夫?"
"たしかに"
"不安だ"
コメントの中に天月の体調を気遣うものがぽつぽつと現れ始める。
家にいた時よりだいぶマシになったが、それでも鋭い人は気づくか。俺は天月の現状と、今回の配信の目的について話し始める。
「実は天月は少し体調を崩してまして、今回はそれを治しに来たんです。この奥多摩山林ダンジョンには 秘湯(・・) がありまして、それに入ると様々な症状が一気に治るんです。ですので今回の目標はそこに行って天月の不調を治すことなんです」
"なるほど"
"把握"
"ダンジョンの秘湯ってどんなんだろ"
"怪しすぎわろた"
"シャチケンじゃなかったら信じられねえw"
"やっぱり体調悪いんだ、心配"
"良くなるといいね"
"かなたそ頑張れ!!!!"
"よくなってねー"
"田中ァ! しっかり守れよ"
「ほら見ろよ天月。みんな心配してくれてるぞ」
「……本当ね。まさか私がこんな風に応援してもらえるなんて思わなかったわ。ありがとう、感謝するわ」
自分を励ますコメントを見て驚いた天月は、カメラの方を見ながら微笑んで礼を言う。
世に出回っている仕事中に撮られた写真じゃ見られない彼女の素の表情。それを見た視聴者たちはおおいに沸き立つ。
"うおおおお!!"
"は? かわいすぎか?"
"推せるッッ"
"うぎぃぃぃぃぃ(尊死)"
"かなたそぉぉぉぉ!!!!"
"部下にしてください!"
"こんな綺麗でかわいい人を嫁に貰った社畜がいるらしい"
"マジかよシャチケン最低だな"
"かなたそトレンド一位おめでとうございます!"
"天月さん配信やってくれ、才能あるよ"
「え、え、なにこれ。なんか凄いコメント流れてるけど……」
怒涛のコメント量に戸惑う天月。
気持ちは分かるぞ。俺も最初は戸惑ったもんだ。まさか自分に興味を持ってくれる人がいるなんて普通は思わないもんな。
「みなさんに天月の良さの一端が伝わったみたいでなによりです。それではこれから温泉を目指して進みたいと思います。それじゃあ天月、行こうか」
「ええ。お願いするわ」
俺が手を差し出すと、天月はこちらに手を伸ばしてくれる。
俺はその手を取ると、二人で一緒にダンジョンの中に入っていくのだった。