作品タイトル不明
63.池袋アラグネシルク大作戦⑤
9時から配信開始としているのでその時間に合わせて準備する。俺はドローンのバッテリーを充電されたものに交換して、不要なものを収納して片付ける。【駆け込み寺】とトイレはそのままだ。休憩所に使えるからね。
時間になったのでドローンを飛ばす。
「渋谷ちゃんおはよう。今日は二手に分かれるから」
『了解でーす』
「ゆうべはお楽しみでしたね」
『ノーコメントです!』
渋谷ちゃんをいじりつつ配信用のドローンを操作する。1機はうち、1機は那覇さんへ。
おやつ代わりのおにぎりを持たせて俺たちは21階から下へ行く。いままでも森だけど、21階も森だ。大木と低木が合わさって、虫タイプの魔物が隠れるのは都合がいい。
「……来ます」
美奈子ちゃんが刀を抜いた。と同時に近くの木が揺れ、緑のデカいカマキリが飛び出してきた。よく切れそうな鎌がついてる腕が4本もあって、俺の身長よりも高そうだ。
「キラーマンティスですね。首をねらってくる 首(・) 狩(・) り(・) 族(・) です」
言うが早いか、突進した美奈子ちゃんの振るう刀がキラーマンティスの首を落とした。どっちが首狩り族やねん。
「まだくるゼー!」
葉子ちゃんが矢を3本放り投げた。矢は葉子ちゃんの顔あたりに浮かんで木の上部に雷撃を飛ばした。
ガサっと葉を揺らしてデカいカマキリが落ちてくる。
「っと俺の出番か」
金剛杖を突きさして収納。
【収納:キラーマンティス×1】
周囲の木からカマキリが降りてくる。ざっと10体ほど。すっかり囲まれたっぽい。さすが21階。
「【説法】」
カマキリどもが一斉に地面に倒れた。瞼がないからわからないけど動かないから寝てるはず。
「……相変わらず凶悪ですよねそれ」
「リフジーン」
「得たスキルだもんしょーがないじゃん」
文句はダンジョンへお願い。
「まぁ守さんなら悪用しないので、だからかもしれませんけど」
「悪用したらオシオキダー。ケツに矢をぶっさすゾー」
「ぞれ絶対やめて!」
思わずお尻を抑えちゃった。距離をとる振りしてカマキリを収納していく。経験値にしちゃえ。
【キラーマンティスの魔石×10】
【キラーマンティスの刃×10】
「ん? 刃ってなんだろ」
「何かドロップしました?」
「刃だって」
美奈子ちゃんが興味津々なので出してみる。普通の鎌の5倍くらいの大きさの刃で、反りはなくってまっすぐだ。重さ的にも鉄っぽい。
「加工すれば何かに使えるのかなぁ」
「持ち帰って京香先輩に見てもらう感じですかね。池袋で出すとひと悶着な予感がします」
ありえる。でも配信されてるんだよなー。
「早く行こーゼー!」
葉子ちゃんがやる気なので先へ行くことに。
「でけえクワガタ!」
『ぎゃーG』
「またカマキリだ」
「でっけえトンボって火を噴きやがった!」
21階から25階までのんびり移動する。日比谷の経験からするとここからはアラグネも複数出てくるはず。毒蜘蛛君も倍々ゲームだ。
「アラグネも複数出てくるし、その分毒蜘蛛も多いからね」
「昨日遭遇しました」
「殲滅してやったゼー!」
注意喚起になってなかった。
25階に行く途中でいろいろな虫型魔物に遭遇した。クワガタは【池袋クワガタ】といって池袋固有種らしい。そんなんいるんかい。ドロップはまたも刃だった。
ドラゴンフライという名のでかいトンボはブレスを吐いてきた。人間よりでかいんだぜ。こいつ。
ブレスはビニール傘で収納したけど、不意打ちされたら燃えてたな。葉子ちゃんの矢に貫かれた挙句、体内でファイヤーボールを爆発されて光になった。
25階へ向けて、アラグネがいれば俺が収納。アラグネ以外は美奈子ちゃんと葉子ちゃんが狩る。という役割分担だ。
そんなこんなで2時間もしないうちに25階についてしまった。アラグネとは30体以上遭遇しているが変異体には会えてない。
「まー、そう簡単に遭遇はしないよね」
26階への階段も見つけてしまった。お昼で戻るから行かないけどね。
いったん21階へ戻ると、すでに那覇さんらがキャンプチェアに座って珈琲を飲んだりしてくつろいでた。すっかりうちのやり方に順応してるな?
「お昼の準備しまーす」
お昼はかつ丼です。ご飯を炊きつつ料理だ。かつは冷凍の物があるので手抜きだけど許しておくれ。
デカい鍋に水と醤油みりん酒砂糖でたれを作って玉ねぎを煮込む。玉ねぎの刻みは葉子ちゃんに任せた。冷凍かつは電子レンジでチンだ。
鍋にかつをどさどいれて溶き卵をかける。ちょっと蒸す。
炊きたてのご飯をどんぶりによそって煮込んだかつを入れれば完成!
つゆだくはお好みで。
「食べる前には手を洗いましょー」
「……小学生な気分だ」
「浦添、手洗いは大事だぞ」
「うっす」
浦添さんがぼやいてる。すみません幼稚園児への対応でした。
麦茶を飲み物にしていただきますだ。
「うまっ!」
「ビール飲みたーい」
「それな!」
名護さんと読谷さんはお酒飲みなようだ。こっち見てもありませんよー。
「坂場君の方はどうだい?」
「アラグネは遭遇しますけどクイーンはまだですね。アラグネシルクはこれだけ出ましたけど」
ちょっと離れた場所にアラグネシルク10個を出す。2メートルの長さの巻物がどどどっと山になった。まだあるけどね。
クイーンシルクほどではないけど煌めきがあってとても綺麗だ。
「……これもレアなはずなんだけどねぇ」
那覇さんが遠い目をしてる。イケメンは遠い絵をしていてもイケメンなんだ。知ってた?
おっと、食事も配信されてるのでこれも映っちゃったな。
「いーなー」
「あたいのドレスにしたいなー」
「「ほしいー」」
名護さんと読谷さんの声がハモる。
「お前らは相手探しが先だろ?」
「うっさい、ムサマッチョ!」
「んだと?」
『団長。スポンサーから全部買い取れって電話が来たそうです』
ドローンから男の声がする。渋谷ちゃんの彼氏だな。
「……坂場君、聞いた?」
「聞きました」
「もっとあるよね?」
「……後でお話し合いですね」
「頼むね」
売るけどさ。ってかスポンサーも見てるのかよ。迂闊にものを出せない。
うちの配信なんて見る奇特な人がいるとは思わないじゃん。
『渋谷でーす。現在配信の接続数が5000超えてるんで、あんまし迂闊なものを出さないようにって京香先輩からおしかりが来ましたー』
今度は渋谷ちゃんの声だ。やべえ。
「サーセン」
土下座っすわ。
休憩したら午後の狩りに出発だ。また25階を目指して森を歩く。
「トンボ!」
「首置いてけー」
「カブトムシーカッケー!」
虫ばっかり見てるからか子供のころを思い出す。林は多かったからセミはよく見たけど近所にクヌギの木がなかったからカブトムシはいなかったんだよなー。がっかりした記憶があるよ。
「蜘蛛!」
「はいはい」
アラグネが出ると俺に回ってくるんだけどもう作業になってる。ゴーンと鐘を鳴らして転がった蜘蛛たちを収納してまわるって作業。
『ずるい!とか詐欺だ!ってコメントが来てますー』
「無視しといてー」
しらんがな。