軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63.池袋アラグネシルク大作戦③

「あんたらが黄金騎士団かい?」

「騎士って恰好じゃないねぇ」

「作務衣がいるじゃん」

「インチキって噂だけどどうなんだい?」

「胸だけはデカいね」

【アマゾネス】のお姉さま方が絡んできた。背丈は俺と同じか低いくらいで。ただ、とても甘い匂いがするので香水を欠かさないっぽい。髪はちょっとぼさっとしてるけどお化粧はばっちりなあたり、わざと荒くれにしてるのかも。

「かっけーナー」

葉子ちゃんはキラキラさせて眺めてる。まぁ気持ちはわかるけどマネしないでね。

「お姉さん方、お綺麗ですね」

モブ顔な俺だけどにっこりしてやった。「うっ」って後ずさってしまわれた。あかんかったらしい。ちょっとショック……。

「先を急いでるんでね」

那覇さんお得意のさわやかスマイルでその場を辞した。【アマゾネス】のお姉さまたちを華麗にスルーしてダンジョンへ入る。去年見た森のダンジョンだ。もう1年たつんだな。

「今日は20階のフロアボスを倒して21階で宿泊する」

「了解!」

「あいよ」

那覇さんの言葉に軽く返す騎士団の面々。20階くらいは慣れっこだってわかる。

「那覇さんたちは、普段はどの階に行ってるんです?」

「スポーンサーの依頼にもよるけど、20階前後が多いかな。あまり先まで行ってしまうと踏破したくなってしまうし」

那覇さんが苦笑する。浦添さんら4人もうんうんと小さく頷く。うちからスキル書とか魔法書も流れててさらにパワーアップしてる那覇たちさんなら踏破もできちゃうだろうしね。やっぱり踏破の魅力はあるんだな。

「おっと忘れてた。ラビットフットです。みんな持ってください」

那覇さんたち5人に渡す。うちはみんな持ってるからね。20階に行かない2パーティ分は渋谷ちゃんに託してある。

「スパイダーシルクも求められてるが10階までは接触しない魔物は無視する」

という方針で歩きはじめる。歩くというか、小走りだ。最低でも葉子ちゃんのレベル20なので疲れはない。

なるべくほかのハンターの邪魔をしないようなルートで走ること1時間。10階に着いた。巨木に囲まれた広場があって、その中心に階段がある。

「あれがフロアボスか」

「でかいカブトムシ!」

10階フロアボスはナイトビートル+ポーンビートル5体だ。ナイトビートルはポーンビートルの上位で成人男性以上の大きさのカブトムシだ。あれが飛んでくるのは恐怖を覚える。

「時間も惜しいし」

そんなことをのたまう那覇さんの剣からビームが放たれた。光線はナイトビートルの頭を貫いて背後の大木も貫通してどっかに消えた。ポーンビートル5体は名護さんの矢と渡嘉敷さんの闘刃で光と消えた。

「鎧袖一触とはこのことか」

なんて言いたくもなった。圧倒的だわ。

「お、ポーションだ」

「珍しいな」

読谷さんがポーションを拾う。ラビットフット君の活躍かもしれない。

「ラビットフットがあれば、10階以降でポーション集めに班を割くのもありだな」

「2軍のいい仕事になる」

「坂場君、ラビットフットは買えるかい?」

「数にもよりますね」

騎士団全員分はキツイ。うちも各パーティーに持たせてるし。10個くらいならまぁ。

「優先はアラグネだ。無事に入手出来たら相談させてくれ」

「了解でーす」

毎度あり。

途中でお昼休憩をはさんで20階を目指す。10階を超えてからまともに戦闘をするようになったけど。

「アーシの出番がナーイ」

「暇ね」

「右に同じ」

戦闘は那覇さんら5人で終わってしまって俺らはついていくだけだ。楽ちんなんだけど暇で仕方ない。

時折背後から襲ってくる虫がいるけど名護さんの矢が飛んで倒しちゃう。

「名護姉ー、アーシにも獲物クレー」

「葉子はお客さんなんだから20階まで我慢して」

「エー」

名護さんも【投擲】スキル持ちだ。寺に来た時に葉子ちゃんが鍛えたスキルのコツを伝授してパワーアップしたらしく、ふたりは仲良しだ。葉子ちゃんは『名護姉ー』と呼んで慕ってる。

それにしても戦い慣れしてて強い。俺たちは完全におまけだ。まぁドロップ品が目的だからね。明日からが勝負さ。

休憩をはさみつつ20階に来た。10階同様に巨木に囲まれた広場がある。周囲の巨木に巨大な蜘蛛が張り付いてる。アラグネだ。単体なわけはないので木の陰にお供の毒蜘蛛が隠れてるんだろう。

「ちょっとやらせてもらっていいですか?」

「ふむ、じゃあ任せよう」

「はーい」

那覇さんの許可も出たので速攻で【鎮魂の鐘】をぶっ放す。痙攣したアラグネが木から落ちて、周囲の巨木からも毒蜘蛛がぼとぼと落ちてくる。30体はいるかな。

「……えげつねぇ」

「1歩も動かずにこれか」

なにか言われてるけどスルーして転がってるアラグネと毒蜘蛛を収納していく。

【収納:アラグネ×1】

【収納:毒蜘蛛×28】

さっさと経験値にしてしまう。

【アラグネの魔石×1】

【アラグネシルク×1】

【毒蜘蛛の魔石×28】

【スパイダーシルク×14】

【毒消し×28】

アラグネもシルクが出るんだね。

21階への階段を降りたのが16時。ダンジョンに入ってから5時間ちょっとだ。

階段近くにはスペースがあるのでここをキャンプ地にする。

「さて、夕方までは少し時間があるな。17時に21階の階段付近に集合としよう」

「じゃあ安全地帯を作っておきますよ」

【駆け込み寺】で5メートル四方の小さな寺を出す。狭い門と木の壁に囲まれた絶対防護結界だ。小さいながらも本堂がある。本尊はないんだけどさ。

「わたしと葉子はちょっと体を動かしてきます!」

「イックゼー!」

ふたりは21階の森に走って行ってしまった。俺は休憩場所のセットと夕食の準備だ。

収納から仮設トイレ、仮設シャワー室を設置。もちろん男女別だ。

水はトイレの上に大型の給水タンクを設置してホースでつなぐ。ポンプがあるので水圧もばっちり。シャワーは使い終わったら撤去してスペース確保の予定だ。電源は大型の充電バッテリーを5台持ち込んでるから余裕余裕。

排水?

穴を掘ってあとはダンジョンにお任せですが?

ダンジョンさんよろしくお願いします!

靴を脱いでリラックスできるようにカーペットをたくさん敷いて休憩用のテーブルとソファーとかをポイポイ出して適当に置く。作業台を兼ねたテーブル冷蔵庫を取り出せば準備完了。

「ここをキャンプ地とする!」

一度言ってみたかったんだよね。

「坂場君は移動要塞だな」

「先にシャワー浴びるねー」

「俺も」

黄金騎士団の5人はもう仕事終了だ。ここに来るまで戦いっぱなしだったし。

さ、俺は調理だ。

ガスボンベと大きな鉄板で焼きそばにする。食材は切って持ってきてるから炒めるだけ。冷凍餃子も持ってきたし。みそ汁も作るよ。

時間になって美奈子ちゃんと葉子ちゃんも帰ってきた。

「たくさん狩ってきたゼ!」

「アラグネも倒しましたがドロップ無しでした」

ふたりとも満足した顔なので日中の不満も解消しただろう。

「シャワー浴びちゃってー」

俺は片付けもあるし最後だ。