作品タイトル不明
63.池袋アラグネシルク大作戦①
ジューンブライドは女の子の夢。
なんて聞くけど、これってローマ神話がもとになってるんだよね。
瀬奈さんと京香さんの出産も終えてちょっと落ち着いてきた7月半ば。寺で結婚式を挙げた。たまたま晴れの日で、本堂前で式を挙げたよ。メイクさんとカメラマンさんを呼んで、でも身内だけでひっそりとね。
呼んだのは智のご両親と、ギルド、クランのみんな。たまたま寺に来たご近所さん檀家さんたちも参列してた。
奥様3人は妖精のようだった。俺の脳みそに永久保存されたのは言うまでもない。
「もうもうもうすごいわぁぁぁぁ!! ぬれちゃうぅぅぅぅ!!」
カメラマンが木更津さんだったのは驚いた。変わらずのマッチョオネエで、クイーンシルクのウェデングドレスが3人もいて号泣しながら写真を撮ってた。腕前は仏さまも納得の出来栄えだったぞ。
配信はせず、アーカイブを残すことにした。結構な騒ぎになってしまったけど。
寺での結婚式を挙げた数日後。食堂で一休み中に黄金騎士団の那覇さんから電話が来た。京香さんではなく俺なのが珍しい。
『こんにちは、那覇だけど』
「坂場ですー。俺に電話は珍しいですね」
『坂場君に用事があってね』
俺に用事とな?
「なんでしょ?」
『実はね。先日の坂場君らの結婚式をみた英国のやんごとなきご令嬢が、年の離れた姉のウエディングドレスにしたいと、日本のやんごとなきお方に相談したらしくってね』
「……すでに胃が痛いんですけど?」
『僕も胃が痛くってさ。それで宮内庁経由で国内のアパレルメーカーに話がいったらしくってね』
「その先を聞きたくないんですがー」
取って来いってことでしょー?
『スポンサーから泣きつかれてね。ライバルメーカーに先んじて持って帰って欲しいってね』
那覇さんの声からして向こうで苦笑してるな。無茶を言ってるのはわかってるんだろうなー。
那覇さんの頼みは断れないよなー。いまみたいにみんなが強くなかったころ、俺の不在を守ってくれてたしなー。俺の一番の心配をつぶしてくれたのが那覇さんだから。
「わかりました。とりあえず詳細を教えてもらえます?」
『メールを送るよ』
通話は終わった。さてクラン会議だ。
俺、奥様方3人、師匠、美奈子ちゃん葉子ちゃん京子ちゃん。うちのトップ戦力が集合した。
「黄金騎士団からのメールですが」
京香さんからメールを印刷した紙を渡され説明が始まる。
「私たちの結婚式を見た英国公爵の5歳の孫娘が来年結婚予定の21歳の姉に送りたいという話を交友のある皇室のお嬢様にされたようで。共感したお嬢様が独断で宮内庁経由で、国内のアパレル全業者に お(・) 願(・) い(・) をされたそうです」
京香さんが頭を抱えてる。リアルに。
「あたしがモデルで着た時も大騒ぎになった記憶があるけど、今回はなんで?」
「ハリウッドのセレブ 程(・) 度(・) が騒ぐなら無視しても日本にとって影響はないのですが、英国の王室関係となると我が国との友好の歴史が物を言います。セレブは金しかない存在ですが、王室は歴史ある大英帝国で最高の 権(・) 威(・) を持っています。そして同じく歴史が長い我が国の最高権威とも長い間友好関係を結んでいるわけでして」
「断れないってこと?」
「ぶっちゃけてしまえばそうです。セレブなど 一時(いっとき) の存在でしかありませんが、王室は数百年の歴史と、そして今後も続くわけで」
「コンゴトモヨロシクってこと?」
京香さんが黙って頷いた。
「うちが原因なのは間違いないしさ、やるしかないと思うんだ。何より、那覇さんには借りが多くってさ」
悪者は俺にしておけば丸く収まる。責めるなら俺を。
「やるしかねえんだ。話を先に進めろ」
零士くんからも催促が。可愛い後輩だもんね。
「求められているのは【クイーンシルク】です。これは以前守君が倒したアラグネクイーンのドロップ品ですが、アラグネクイーンがアラグネの変異タイプでレアなのが問題です」
「めったに遭遇しないってこと?」
あの時はスタンピードだってことで行ったからね。
「アラグネは20階のフロアボスです。そして20階以降の公式記録がありません。過去には黄金騎士団含めいくつかのパーティが20階の先へ行っているはずですが、情報を隠しています」
「日比谷を参考に考えると、アラグネは20階以降では普通に魔物として出てくるよ。しかも複数ね」
池袋ダンジョンはランク3だったはず。はず?
「とすると、20階以降を余裕で巡回可能な戦力が必要となりますが」
「それに加えてドロップ品をゲットできるハンターねー」
京香さんと瀬奈さんの視線が俺に刺さってる。
「言い出しっぺの俺は確定だね」
行きますとも。
「ただ、行ったその日にゲットできるとは思えない。何日かは寺を留守にしちゃうから、こっちの戦力も考えないと」
「都合が悪いことに、来週から市船の期末考査で生徒がダンジョンへ入ってレポートを書く課題が出ます。その際のサポートハンターの依頼が来てて4パーティに振る予定となっています」
「あー、そんな時期なんだねー」
その課題をうちでやったときに武者幽鬼だった零士くんと会ったんだったね。とすると、クランのハンターはあてにできない。市船の生徒も大事だし、ダンジョンでの万が一に備えて複数ハンターがお供することになってる。うちでも万が一があったわけだし。
生徒には女子もいるのでポニーとカチューシャを交代で当てる予定。なので4パーティはすべて予約済み。
「あたし、蜘蛛苦手」
智が小さく手を挙げた。池袋の後にうちでアラグネクイーンスケルトンが出たときも悲鳴を上げてたよな。
「ふむ、寺の防衛が最優先としてだ」
零士くんが顎に手を当てる。コーユー時は優先度をつけて判断する。
「守は池袋で確定。アンデッド特化の智と京子は寺で待機。とすると、美奈子と葉子が池袋だ」
「墓地ダンジョンの防衛にはツンドラちゃんとスラキンちゃんも出れるわよー」
「最終手段ですが、スラキンで墓地ダンジョンを埋め尽くすことも可能です」
「俺もダンジョンにはいるから、まぁデュラハンがわんさか出てきても何とかなるだろ」
ハンターの配置についてはケリが付いた。俺と美奈子ちゃんと葉子ちゃんが池袋に行く。智と京子ちゃんが墓地ダンジョン防衛の主戦力だ。もちろん零士くんもね。
「オレも池袋に行きてー」
「京子ー、時期をずらしてなら良ーわよー」
「そーだゾ。今回は 仕(・) 事(・) だゾ。キョーコは寺を守るのが仕事ダ」
「むー。仕事じゃしかたねーなー」
京子ちゃんがぶーたれたけど瀬奈さんと葉子ちゃんに諭されて収まった。仕事ってワードが効いたみたいだ。
仕事ってのは、働きに応じた報酬が発生するけど、それとは別に責任も発生するんだ。今回は寺の防衛だ。責任を感じて京子ちゃんも従った感じ。
「仕事なのでもちろん報酬はだすよ。その辺は京香さんにお任せだけど」
「ドロップ品をゲットできるまで、なので定まった金額は出せませんので日割りとしましょう。1日5万でどうでしょうか。これに墓地でのスタンピードの具合で歩合をつけましょう」
「いーんじゃないかな」
「イーゾー」
ここにいるのはお金に困ってない面子なので返事もおざなりだ。足りないようなら追加すればいいやって考えてる俺もたいがいなんだろうな。