軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62.寺にいた猫又⑦

墓地ダンジョンへ入っていった4人は5階を抜けて6階に到達していた。魔王がふたりもいれば余裕である。

「へー、ここが6階なのね。画面で見てるよりも気味が悪いわね」

【裁き】【白鶴】を持った美奈子が墓石が続く地平を見つめている。今日は配信していないので高校の時のジャージの上着にミニスカートだ。スパッツもないので見え放題だがそこを見る者はいない。なお今日はピンクである。

「さっさとデュラハン倒しにいこーぜー」

「いくゾー!」

京子と葉子がせっつく。京子は高校のスケバン制服で葉子はジャージだ。防刃インナーくらいは着ている。

「グールが面倒なんだよね」

智がぼやく。彼女はえんじ色の作務衣だ。守とおそろいである。統一感がないが、人の目を気にしない&家の中の延長の意識しかないのだ。たるんでいる。

「走っていけばいいじゃない。邪魔になりそうなやつだけ斬っていくから」

「アーシは飛んでいくゾ!」

「オレも飛んでいくぜ!」

「ちょっと待ちなさい!」

ワンココンビが暴走して飛んで行ってしまったので智が慌ててて追いかけて飛んでいく。残された美奈子はため息をつきつつ墓石の合間を走った。低空でも苦手なものは苦手だ。タイミングよく出会ってしまったグールは一刀のもとに斬り捨てた。

「飛ぶ方が速いんだからこっちの身にもなってほしいんだけど」

墓地をかける美奈子がぼやく。飛んでいる後姿があるので迷うことはないがあっちは時速60キロだ。レベルの上がった美奈子が100メートルを世界記録で走っても時速36キロでしかない。だんだん引き離されていく。

飛んでいた3人が降りたのでそこがゴールだ。ゴールではなくそこから戦闘のスタートになるのだが。

「よっしゃー!」

「首無しに魔法ダゼ!」

「はいはい、ちゃんとラビットフットを持ってよね」

バンシーとそれに傅くデュラハンを前に3人が準備をしているところに美奈子も到着した。

「ふぅ、そんなに急がなくっても魔物は逃げないでしょ? 果報は寝て待てっていうのよ?」

美奈子がそう窘めるが魔物は果報ではない。

「揃ったゾ!」

「首無しは任せろ!」

「はいはい作戦会議よ。バンシーが厄介だからまっさきにアレをつぶさないと。あたしの【涅槃】で一発だけど、それだとデュラハンも巻き添えになっちゃってドロップがないかもしれないし」

「よーし、あの女はオレがやるぜ!」

「アーシはあの鎧に魔法撃ちたいゾ!」

「わたしはデュラハンと戦えればそれでいいわよ」

のんきに打ち合わせできるのも、相手はある距離まで近づかないと動かないタイプだからだ。ある意味フロアボスともいえる。そのフロアボスを前に緊張感もないのだがそれでいいのか?

「よしバフ行くよ! 【 幸(みゆき) 歌】【【 戦(いくさ) 歌】】」

智がバフをかけると4人からだが光る。脅威と察したのかデュラハンが立ち上がった。首無しの鎧は20体ほどいて、盾を持っているのが5体だ。

「イッケー!」

葉子が5本の矢を放り投げる。矢は空中に浮いたまま鏃をデュラハンの盾に向ける。

「ドーン!」

矢の先から火の玉や稲妻、炎のブレスが放射されるがデュラハンの盾に吸い込まれていく。吸引力は抜群だ。

「突撃! 【聖臨】ッ!」

体を輝かせた京子がデュラハンの群れに突撃した。と同時に美奈子も駆ける。智のバフに自分の【健脚】スキルもあって京子に引けをとらない。

「ハッ!」

美奈子が左手の【白鶴】で【闘刃】を飛ばす。その【闘刃】を追いかけるように盾持ちのデュラハンに突撃する。【闘刃】は盾に阻まれたがその隙に背後に回り込み【裁き】を振るう。

「浅い!」

攻撃は通用したが手ごたえが薄い。美奈子は【白鶴】を突き刺した。デュラハンが光に消える。

「よし、いける!」

「おらぁ邪魔だ!」

美奈子の横を光の塊となった京子がデュラハンを殴り飛ばしながらカッ飛んでいく。触れるものみな成仏の勢いでバンシーに突撃した。

「負けてらんないわね! 【剛毅】!」

美奈子がスキルを発動させる。美奈子の視界がモノトーンに変わり、世界から音が消えた。胸の奥が燃えるように熱いが頭は冴えきっている。

腕が、足が軽い。

向かってくるデュラハンの動きがスローにも見えた。

「遅いわ」

美奈子はあえてデュラハンの盾に斬りかかる。こいつの防御のほどを確かめるつもりだった。だが、振るった【裁き】は豆腐を切るがごとく、抵抗もなくデュラハンの盾を切裂き、あまつさえ本体も斬ってしまった。

【裁き】は対魔物に特化した刀だ。威力だけなら零士の大蛇丸を超える。【白鶴】は相手の攻撃を受け流すためのもので、威力は【裁き】に劣る。

「雑魚は任せて!」

智のバフに【剛毅】も加わった美奈子は鬼神のごとく暴れ出した。なお、デュラハンは雑魚ではない。決して。

「くらえ【聖拳】!」

バンシーめがけて突貫した京子はスキルで拳を輝かせながら叫んだ。バンシーは何かをしようと動いたが、何もできずに京子の攻撃を食らい光になった。悲鳴を上げる暇すらなく。

京子がバンシーに向かった影響でデュラハンは美奈子が抑えていた。刀の間合いに入ったデュラハンは即座に斬られるため、美奈子を遠巻きにしている。当然、魔物は待っているわけはなく。デュラハンの隙間から【闘刃】が飛んでくる。

「はぁぁぁッ!」

【剛毅】によって研ぎ澄まされた感覚で、飛んでくる【闘刃】を斬り捨てていく。そして返す刀で近くにいるデュラハンを一刀のもとに斬り払う。無傷とはいかないが美奈子の動きは止まらない。20体いたデュラハンはすでに6体になっている。

「ミナ、スゲー! よーし、アーシも負けてランネー!」

葉子が金剛弓から矢を射る。【増速】スキルで加速された矢は一瞬でデュラハンの首の部分に侵入、内部でファイヤーボールが発動する。鎧が爆ぜ、炎が噴き出した。

「ッシャー!」

小さく跳ねる葉子は次々矢を射る。【サンダー】【吹雪ブレス】【炎の息吹】【フリーズスパイラルブレス】【フレアスパイラルブレス】】がデュラハンの内部で炸裂する。

残っていたデュラハンはすべて破壊され光と消えた。

「あたし何にもしてない」

智がうーんと伸びをした。

「……楽しかったわ」

体のあちこちから血をにじませた美奈子が歩いてきた。【自己治癒】ですでに傷は治っているのでご安心だ。

「石があったぜー!」

「ネックレスもトッタドー!」

葉子と京子も戻ってきた。盾と大剣も転がっているので目的の物はゲットできた。

「よーし、7階に行ってから戻ってくればまたゲットできるぜ!」

「ヤルゾー!」

周回が始まってしまった。

「ふー、そろそろお昼になるから戻らないと」

智のスマホのアラームが鳴っている。11:30にセットしていた。帰りの時間も考えるとそろそろ潮時だ。

「んーーー、久しぶりに全力が出せたわ」

美奈子が伸びをする。ジャージの上着は斬られた箇所が多く、もう使えないレベルだ。ミニスカートも同様で、このまま食堂に戻るのはいかがなものかという感じだ。

で、リザルト。

【討ち倒す騎士の大剣】×6

【護り抜く騎士の大盾】×6

【なにかの書】×18

【安産のお守り】×5

【魔封じのネックレス×1】

「やったー、レベルが上がったタ!」

「オレもだぜ!」

葉子と京子がぴょこぴょこ跳ねた。

「わたしも上がってるわね」

美奈子がレベル23に、葉子がレベル20に、京子がレベル24になった。智は変わらずだったが既に25を超えているので上がるとは思っていない。

「はらへったー、早く帰ろーぜー」

「アーシもー!」

「そうね。ぺこぺこだわ」

「あたしが魔物を一掃するからさっさと帰りましょ」

腹ペコ4人は超特急で地上まで戻ったのだった。