作品タイトル不明
61.錬金で魔封じのネックレスを作ろう③
「では我らも」
「錬金するなりね」
秋山さんに続いて北国分さんと矢切さんが錬金する。ふたつ同時なので先ほどより強い光で、視界に黒い点ができちゃって消えてくれない。太陽を見た時と同じだ。見ちゃダメ!って言われると見たくなっちゃうよね。
これって【カリギュラ効果】っていうらしい。
人間は本能的に、自分の行動を自分の意志で選択したいと思っているものらしくって。その自由を奪われると強い「ストレス」を感じて、 自由になりたい(いやだぁぁぁ) !って考えちゃうからなんだって。
俺も人間だけど、人間てわがままだよね。
「ふぅー、できた」
「疲れるなりね」
ふたりも、やっぱり額に汗いっぱいだ。でもやり切ったいい顔をしてる。
髪も切ってさっぱりしてるからか、なかなかイケメンに見えちゃう。
充実してるときって表情もいいんだよね。
父さんも、普段はぼけぼけな時もあるけど、祈祷してるときはすごく凛としてるんだ。
「明日もあるし、なんなら明後日でもいいしで、無理しないでくださいね」
「いや、家を空けるわけにもいかないから錬金は明日で終わらせる」
「猫が待っているでござる」
「ちなみに、我らは3人で一戸建てをシェアしてるなり」
猫ちゃんとな?
いいなぁ。ペットは飼ったことがなくってね。
でも、家族も一緒にいる仲間も増えたし、いまさら犬飼うとかもねぇ。
「猫ちゃんですか。それでは長く家を空けられませんね」
「猫、いいわねー」
おっと、うちに奥様ふたりは猫派か。
「猫かー。野良猫ならよく本堂前で寝てたりするけど」
「真っ黒な猫ですよね」
「京香ちゃんがよく餌付けしてるわねー」
「先輩、それは内緒なはずでは!?」
ほうほう、餌付けまで。本堂下を住処にしてるのは知ってた。雨に濡れなくって出入り自由で、猫にとっては理想のお宅って感じ。
「ということで、明日で終わらせるでござるよ」
そのあとは、3人が2回ずつ錬金して終わった。
夕食までの時間、寺に泊まることになった【水平太閤】の3人はトレーラーハウスの床に倒れ、ぐったりしていた。錬金で疲れたこともあるが、涼子と瀬奈に風呂に連行されたのが効いていた。
涼子も瀬奈も服こそ脱がないがTシャツになり、しかもお湯で濡れているので体の線がまるわかり状態だった。瀬奈など凶悪な【たゆんたゆん】が隠せるわけもなく。
そして男たる3人は前かがみで隠そうとしたが、彼女らにはお見通しで、元気なままで強制ウォッシュの刑に処されたのだ。何度悲鳴を上げたことか。
さっぱり す(・) っ(・) き(・) り(・) してしまい、さらにいたたまれなくなっていた。
「人生で最も過酷な時間でござった」
「西方浄土へ連れ去られるかと思ったな」
「しかし、魔法使いは死守したなり」
魔法使いだけは意地でも死守するつもりだ。
「しかし、我らを嫌わず、あそこまでやってくれた女性は初めてでござったな」
「昔から臭いとかキモイとしか言われなかったからな」
「まぁ、我らにも原因はあるなりが」
オタク気質で風呂キャンセル勢なので女性から避けられがちで、結果として魔法使いになっただけだ。それは彼ら自身もよくわかっている。
拷問だとか口にするが、3人とも嬉しかったのを隠しているだけだ。
「あのような女性と出会っていれば」
「瑠偉、みなまで言うなでござる」
「我らには過ぎたる女性なり」
3人は口を強く結んだ。
とはいえ、母親以外で世話を焼いてくれた初めての女性は、彼らに鮮烈な爪痕を残したのだった。
その夜。智らが帰ってきて、クランの子たちも集まってきた。食堂が一気ににぎやかになった中、錬金術師の魔法使い3人は居心地悪そうにしてる。慣れない女の子が、しかも無防備にも露出度高めな恰好でたくさんいるからねぇ。肌色成分が多いよ、まったく。
みなも錬金術師3人が気になってちろちろ見てるけど話しかけられない中、怖いもの知らずな京子ちゃんが空の皿を回収するついでに突撃した。
「おっちゃんたち、錬金術師だろー?」
「「「おっちゃん……」」」
京子ちゃんの攻撃で3人が 撃沈した(項垂れた) 。32歳と18歳じゃーおっちゃん扱いも仕方ないよね。年齢も倍くらい違うしさ。
「事実ではあるが」
「直撃はつらいでござるな。ぐっさりキタでござるよ」
「しかしこれに耐えねば賢者にはたどり着けぬなり」
どこに行くつもりですかあなた方は。
「すげーよな! だってちっさい宝石が魔法のペンダントになるんだぜ!」
京子ちゃんがキラキラした目で見てる。葉子ちゃん同様に純粋で、おっさんだからと色眼鏡で見ないんだよね。
「ハ、ハンターのように強くはないが、役に立ってる自負はある」
北国分のお兄さんが口を震わせながら答えた。苦手な女の子だし緊張してるんだろう。
「強いハンターだってクソみてーなやつもいるしよー、おっちゃんらはすげーよ」
京子ちゃんがニカっと笑顔を残してキッチンに戻った。3人が顔を見合わせる。
「ここには天使がいたでござるな」
「寺に天使はないだろ。しかして獄卒ではない」
「獄楽ではなく極楽浄土の間違いなりか?」
その天使は、あなた方を恐怖のどん底に落とした涼子さんの一人娘だぞー。
それが切っ掛けだったか、まずは成田君が話しかけた。
「あの、成田と申します。お伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「む、何を聞きたいなりか?」
「黒い宝石からは精神魔法に対抗するペンダントを錬金することができると聞きました」
成田君はそう言うと、マジックバッグから黒い宝石を取り出した。
「これでそれを作っていただくには、どのくらいの魔石と金額が必要になりますか?」
「……精神関係の魔法なりか?」
「穏やかではないな」
「それは、何故でござろうか」
3人が成田君に胡乱な目を向ける。悪用するのではないかと疑う目だ。
「実は、僕を含めた5人が【魅了】の魔法で操られてしまったことがありまして。その時はそこにいる仲間が僕らを助けてくれました。と同時にクランにも迷惑をかけてしまってます。僕らがいるこのクランは、強さ、厳しさ、優しさそして所持する武器やアイテムがこの国でも屈指のクランです。今後もそのような悪意を持った人物が、弱い僕らに手を伸ばしてくる可能性があります。残念ながら僕らは ま(・) だ(・) 悪意に対して脆弱です。できれば対抗する手段を持っておきたいのです」
成田君の目は真剣だ。自分がそうだったからこそだろう。【リーダーズ】の4人も顔を向け聞いている。
「……そんなことがあったでござるか」
「【魅了】の魔法。そんなものがあるのか」
「確かに、 こ(・) こ(・) がそう言うなら、真なりね」
3人は腕を組んで目を閉じた。
「そのオニキスは小さめだ。カバーするために魔石はランク15が5つは欲しい」
「錬金するには30万といったところでござるかな」
「そこまでしても精神魔法に対抗できるのは20%程度でしかないなり」
「それでも結構です。ゼロよりはるかにいい」
成田君の真摯な声に押されたのか、3人が目を開き「うむ」と首を縦に振った。
「ただ、連日ここに来るわけにもいかない」
「それでは、僕らがお邪魔すればいいですか? 足(車) はありますので」
「それなら可能でござるな」
ということになった。