軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61.錬金で魔封じのネックレスを作ろう②

俺の目の前には清潔感あふれる 三十路(みそじ) 男が3人いる。

「当社比で3倍は頭がすーすーする」

「頭が軽いでござる」

「目の前が明るいなり」

うざったい髪はバリカンで刈られてツーブロックに。長髪はそのままだけど顔の横がすっきりしてるからさわやかだ。野田君みたいだね。

「うんうん、馬子にも衣裳じゃないけど、見られるようになったじゃないか」

涼子さんがふふっと笑うと、魔法使い3人が顔ならず耳まで赤くした。

涼子さんはたしか38歳で、見た目はそれよりも若い。年上のお姉さんに可愛がられた小学生な感覚なのかも。

「……さて、やっと落ち着いて話ができますね」

お茶と茶請けを用意して、やっとスタートだ。テーブルには俺、京香さん瀬奈さん。満足した涼子さんは家事をしに消えた。智らは船橋に買い物に出かけてる。

まずはペリドットをテーブルに置く。全部で15個だ。大きさもまちまちだけど、ドロップ品で選びようがないからしゃーない。

「そうだなぁ、これとこれと」

「これもいけるなりな」

「こいつもいけそうでござる」

3人がOKなペリドットを抜いていく。残ったのは小さい宝石3つだ。

「この12個ならばっちり錬金できるでござる」

秋山さんが太鼓判を押す。12個ってことは、確か【魔封じのネックレス】を錬金するにはランク20の魔石が2つ必要なはずで。合計で24個の魔石が必要なんだね。

まぁ余裕であるんだけど。

ゴトゴトとテーブルに魔石を置いていく。

「このクラスの魔石を普通の顔して大量に出してくるのはここだけだな」

「すさまじいなり」

「おかげで我らは錬金ができるでござるな」

桁が違うくらいは魔石を持ってるし。

「ともかく錬金なり」

「一気に12個はさすがに厳しい」

「ひとりあたり3つで9個がいいところでござるな」

3人の表情が硬い。嘘ではなさそうだ。

ふむ、急ぐわけでもないし。

「今日はうちに泊まっていきますか? 未成年が多いので酒は出せませんが食事は出しますよ? それに、他の宝石もあってですね、その宝石で何が錬金できるかも見てほしくってですね」

「ほぅ! まだあるでござるか!」

「恐るべし獄楽寺……」

「現物を見ればレシピが頭に浮かぶなりね」

オッケーみたいだ。寮の部屋も空いてるしトレーラハウスもあるし。浦河姉弟も新潟に遠征でいないのは都合がいい。人見知りの羅さんと魔法使いがばったり出会ったら大騒ぎになりそうだ。

「じゃあほかの宝石も出しますね」

俺が預かってるから中から各種ひとつずつ出していく。10個くらいかな。

「紫はアメジストか? これは毒属性のアイテムになる」

「オニキスなどの黒は闇属性でござるな」

「これはセレンディバイトなりね。かなり希少な宝石なり。特に精神系魔法に対しての耐性が強いアイテムになるなり」

へえ、色で違うんだね。

「大まかではあるけど」

赤い石は火属性。青い石は水、氷属性。茶色は土属性。緑は風属性。黄色い石は雷属性。紫色は毒属性。黒は闇属性(精神系)なんだって。ペリドットは特殊で、その他にも特殊な宝石はあるみたい。

「ペンダントは耐性、ブレスレットが属性付与、または魔法威力増幅となるでござる」

「武器にも埋め込むことはできるなりが、魔石のランクが最低でも30となるなり。錬金術師のレベルも要求されるのでおいそれとはできないなりよ」

「われらのレベルがせめて15になれば」

「贅沢を言ってはいかんでござる」

「自由に錬金できる今に感謝するなりよ」

以前頼んだ武器の錬金で結構な量の経験値を得てレベル12になったそうだ。レベル10で覚えたスキルが【加工】:物の性質を変えないで形状を変化させるだって。レベル5では【蒸留】とのこと。

このスキルは自ら未知のアイテムを作り出すときのスキルで、決まったレシピに対してではない。ただ、レシピがある錬金も難易度によるレベルの 足(・) 切(・) り(・) がある。受験資格みたいなもんらしい。

彼ら錬金術師は魔物と戦っても経験値を得られないのでひたすら錬金しないといけない。

「武器だけ強くなってもー、ハンター自身の実力が追い付いてなければ宝の持ち腐れよー」

「急ぐ必要はありません」

瀬奈さんと京香さんに窘められてはっとした。

「『始めに我が身のほどを信じ』だ。自分が 凡夫(ぼんぶ) であると自覚せよ、だ。慢心は慎むべき」

あぶないあぶない。何でもできるとか思い上がるなんて、50億年くらい早いって。

「守君、それは仏教の教えですか?」

「あーうん、浄土宗の法然上人の言葉でね『自分は自らの力では悟りにたどり着けない程度の器なのだと理解しなさい』って言葉。仏教における『身の程』の意味なんだ」

「増長ダメ、ということですか?」

「簡単に言えばそうだね」

あ、この後には「後には仏の願を信ず」って続くんだけど、「凡夫なのだから仏さまを信じて念仏を唱えなさい」ってこと。

スキルのせいで強いとかなんでもできるとか思い上がってたな。反省反省。後で本堂で座禅しよう。

「ブレスレットで攻撃にバックアップが付くだけでもすごいこと。クランのハンターが集まったときに説明しましょう」

「ぽんぽん強くなちゃって慢心につながらなければいいいけどー。美奈子に葉子あたりは大丈夫そうだけどー」

「自身の強さと心の強さのバランスも大切ですね」

京香さんと瀬奈さんもいいストッパー役だ。大人だなあーって。

見習わねば。

「まずはペリドットの錬金が優先でござる」

「強い魔石を使うと疲労も強いなり」

「急がば回れだ」

『水平太閤』の3人も「んな早くはできねーぜよ」って警告してきた。

「そんなことができるんだよってわかったんだし、それでいいんじゃないかな。最初は小さくやっていこう」

小さくやって育てていく、でも、そのまま小さく慎ましく、でも良い。継続は力なり、だ。

そして実際に錬金していくことに。

必要な魔石を取り分けて、ペンダントの紐はダンジョンの林から蔦を適当に失敬してきた。

「まずは拙者がやるでござる」

秋山さんがペリドットと魔石と蔦をひとまとめにする。お互いを触れさせておくのがみそなんだとか。

「ほぉぉぉ!」

秋山さんが手をかざせばまとめた素材が輝きだす。

「【錬金】」

まぶしくて目を閉じたけど、瞼の向こうに光が見える。かなりの光量だ。

「ふぅ、無事にできたでござる」

秋山さんの声で目を開けた。秋山さんの額には玉の汗が光ってる。息も荒くなってるし、かなり大変っぽい。

テーブルの上には、俺が持ってる【魔封じのネックレス】と似たようなネックレスがあった。宝石の大きさは同じくらいだけど形がちょっと違う。

「確かに【魔封じのネックレス】ですね」

京香さんが鑑定したようだ。

「【錬金】は、創ることはできるが形を同じにすることは、不可能ではないがしないでござる。錬金術師の能力、素材たる宝石そのものの形と質、触媒たる魔石の質も関係するでござる」

「もしかして、魔石のランクが高ければ品質もよくなる?」

「この【魔封じのネックレス】の場合、耐魔法性能が上がる可能性はあるでござるが、それは錬金に使用する魔石のランクが明らかに変わった時でござって、例えばランクが3変わったところで出来上がるものは同じでござるな」

「へー。より効果の高いものを作ろうとしたら、素材の選別とエネルギー源の魔石の質も上げないとって感じかー」

何かを作る時もそうだよなー。

ダンジョンへ行く通路に雨除けで屋根を作ったけど、屋根材も透明で日の光が入るようにしたりとか、紫外線で劣化しにくい材質にするとか、考えるもんね。で、性能がいい材料は高い。

お財布状況と出来上がりを天秤にかけて、ってのは生きていく上で必要なスキル。ダンジョンでもゲットできない。経験値は自分でためるしかない。厳しい。