作品タイトル不明
40.獄楽寺の年末年始は忙しい コケケケ大繁殖①
クリスマスも終わり、もはやこれまでと年末まで数日となる期間。世間も寺も忙しくなる。
「守、ちょっといいか」
ダンジョン巡回から戻ってきた零士くんに捕まった。横には美奈子ちゃんもいる。鍛錬なのか、ふたりでダンジョンにこもることが増えた。まぁいかがわしいことはしてないと思うけど。
「わかりました」
母屋のちゃぶ台で話を聞く。
「日比谷ダンジョンにコケケケがいる」
「は?」
俺の聞き間違いだろうか。耳をとんとんする。
「日比谷ダンジョンの1階でコケケケの群れと遭遇した。1階でオオトカゲと集団で喧嘩してたぞ」
喧嘩て。どこの不良だ。
「ってか集団?」
「10羽以上いたぞ」
マジですか。
「京香さんを呼んできます」
食堂でお茶してたはず。呼びに行くがてら、事の発端を思いだす。
あれは秋田から帰ってすぐだ。コケケケの有精卵(3日で孵化)9個をどうするかで、試しに孵化させてみようということになった。コケケケが弱いから孵化しても問題ないと判断したからなんだけど。
墓地ダンジョンは骨がいるので【いわきダンジョン】で孵化させることになった。
三脚にカメラをセットして地面に卵を置く。孵化の瞬間をカメラで撮影して記録に残すつもりだ。京香さん的には資料をまとめて報告書を作成してギルド本部、つまり総務省の外郭団体に提出するつもりらしい。
有精卵が孵化するまでは【いわきダンジョン】に魔物は出さないようにした。卵を置いて3日経ったので見に行ったらすでに孵化したのか、卵の破片が落ちてるのみだった。
「映像を確認しましょう」
カメラを回収し京香さんと映像を確認する。
「食事をするのですね」
孵化直後のコケケケのひなが殻を食べてた。ひよこみたいな黄色で、でもくちばしの中には歯が生えてもいる。ガチョウかよ。
ガチョウはくちばしの縁が細かい歯状になってて、すげー怖いんだ。かまれると痛いぞ。
なお、同じように見えるアヒルにはこんな鋭い歯のようなものはない。ちなみに首の長いのがガチョウだ。
「【いわきダンジョン】は雑木林で逃げ込まれると探しきれんぞ。まして2階に行かれたら厄介だ」
零士君が腕を組んでる。救いなのはコケケケが弱いこと。墓地にあるビニールハウスを鉄の頑丈な箱にしてしまえば突破はできないだろう。
「様子見しかありませんね。秋田のおばあさまに前例があるか聞いてみます」
【いわきダンジョン】の複数個所にカメラを設置して観察を続けることに。映像は母屋から見ることができるようにした。その際、魔物は出るようにしておいた。
数日経った結果。
「ゴブリンがコケケケを敵とみなして攻撃しています」
【いわきダンジョン】のリアルタイム映像で、ゴブリン2体とコケケケ7羽が喧嘩している。ゴブリンはハンター相手くらいに殺意が高そうに見える。突進しかなく動きが単純だからよければいいんだけどゴブリンはそれをしないで真っ向戦ってる。そんなわけでコケケケが圧倒している。
「すごいな、コケケケ」
子供くらいのゴブリンと白鳥くらいのコケケケで、体格差はさほどでもないせいかな。
「ゴブリンがここまで戦うのはコケケケが【いわきダンジョン】にいない魔物だからでしょうか」
京香さんが画面を見つつ高速メモ取りをしている。
「2階のカメラにもコケケケが映ってますね」
「1階と合わせると、10羽超えてる!? 有精卵って9個だったよね?」
「3階のカメラにも映っています。合計すると18羽です。増えているのは何故でしょうか」
孵化したコケケケだがなぜか個体数が増えてる。しかも数日しか経っていないのに。
【いわきダンジョン】の設定を確認する。出現する魔物の一覧にコケケケはいない。ランク1の魔物はゴブリンだけだ。
「まさか、繁殖してる?」
「卵の殻を食べていたのは食事をするからだとしたら、繁殖の可能性もあります。魔物は食事をしません。活動エネルギーを外に求めるのは生物なのですが、コケケケは魔物です」
京香さんが難しい顔をしている。
不思議な存在は零士くんという前例はあるんだけどね。言わないけど。
「もはや総数の把握は不可能かもしれません」
京香さんは「ミスったなー」という顔をしてる。顔に出すなんて珍しい。報告書を優先するために安全をおろそかにしてしまったからかな。
「でも、コケケケの肉が定期的に入手できるようになったね」
喜ばしいことだよ。