軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40.獄楽寺の年末年始は忙しい コケケケ大繁殖②

現在【いわきダンジョン】【備後ダンジョン】【日比谷ダンジョン】の階段は墓地ダンジョンの1階に出しっぱなしにしてる。零士くんが美奈子ちゃんを連れて頻繁に鍛錬に行くからその都度出してるのが面倒になったからではあるんだけど。

もしかしたら【いわきダンジョン】から抜けだしたコケケケが【日比谷ダンジョン】に入り込んだのかもしれない。それが零士くんの報告につながったと。

さらに数日。その間、【いわきダンジョン】の他にも【備後ダンジョン】【日比谷ダンジョン】の1階にもカメラを設置して観察を続けた。

「コケケケの生態としては、普通の鶏に近いですね。ダンジョンに生えている草を食べてます。少々確認したいことがあるので酒田ギルド長に聞いてみましょう」

京香さんは秋田のおばーちゃんギルド長とも頻繁に連絡を取り合ってる。コケケケがいるダンジョンで伝手があるのはあそこだけだし。

それから少しして、京香さんが報告書をまとめた。ギルドの中心メンバーである俺、奥様ズ、零士くんが集まった。

「ダンジョン発生後に鶏が入り込んで魔物化した可能性が高い?」

「はい。ダンジョンができた直後は人目につかないことが多いので、そのすきに野生の生物が入る可能性は否定できません。海外では飼い犬が入り込んで魔物化した例はありました」

飼い主も一緒に入ったんだけど、スキルは得たものの戦闘系ではなく、魔物化した飼い犬に噛み殺されてしまったという痛ましい事件があったそうだ。魔物化した犬はハンターに退治されたけど魔物化した理由は不明だとか。

秋田城跡ダンジョンは酒田おばーちゃんが見つけたあともなかなかギルドを設立できず、管理が野放しだった期間があるらしい。その間に入り込んだのではないかと。ほかのダンジョンはどうか知らないけど。

「元が生命体ならば、繁殖する可能性が高いと思われます」

「確かに、ダンジョンで繁殖してないとあの量のコケケケは出ないはずなんだよね」

そもそも9個の卵しかなかったんだし。

「ダンジョンの草や葉などを食べている映像もあります。餌となるものは無限にあるわけです。数の力で安全地帯を確保できれば繁殖もしやすくなるでしょう」

メイドさんはフンスと鼻息が荒い。

結局、その報告書はそのまま提出された。秋田城跡ダンジョンの酒田おばーちゃんにも送ってある。

そしてギルドを統括する総務省では騒動が起きたらしいが知ったことではない。あそこはもう信用ならん。

それから数日後、船橋の大多喜さんが訪ねてきた。

「ママ、久しぶりー」

「わたしはいつも元気さ。あんたも元気そうで何よりさ」

瀬奈さんが大多喜さんに抱き着いた。大多喜さんも瀬奈さんの背中をポンポンしてる。親子に見えなくもない。瀬奈さんにとっては精神的な「ママ」だったのかも。

俺も久しぶりに会うなと思いつつ寮の食堂へ案内する。適当なテーブルについて、お茶とお茶請けを出す。

「面白いことを思いついてねぇ」

大多喜さんは、冬だというのにアイスキャンデーを齧りながらそんなことを言う。ダウンでモコモコの癖に、無理して食べてるんだろうか。

冬に食べておいしいのはバニラアイスだけだと思うぞ。

「船橋は市船のホームダンジョンだけど遭遇数が少なくてレベルが上がらなくてハンターコースの意義が薄いんじゃないかって話が挙がっててね。なにも市船だけじゃないけどさ、でコケケケを半家畜化したらどうかなってね」

「そんな話があるんですか。確かにせっかくハンター育成のためなのに普通にハンターになるのとあまり変わらなんじゃ「それってどうなの?」と思われても仕方がないかもですね」

「魔物の数はどうにもできないからねぇ。でもコケケケの繁殖力ならある程度の数になるんじゃないかい? ランク1で攻撃も突進しかない。ドロップ品が出る確率も高い。学生の小遣い稼ぎにもなると思ってね」

なるほど。失敗しても問題ないし、船橋の魔物はウサギとゴブリンだ。試す価値はあるね。

「でも船橋にはどうやって持って行こう?」

有精卵は結構な数を収納しないとゲットできない超レアなんよね。

「守君には便利なスキルがありますよ?」

「あぁ、【説法】で眠らせちゃえばいいのか。【鎮魂の鐘】で麻痺させてもいいし」

想定とは違う使い方なんだろうけど。

「10羽ほど連れて行って様子をみましょうか」

「どうせならすぐにやっちゃおう」

ということで、【いわきダンジョン】に入ってコケケケを探す。ちょうどゴブリンと喧嘩しているので両者眠らせてゴブリンは消滅させる。コケケケを12羽確保できた。

「コケケケはどうやって運ぼうか」

「見られたくないから箱にでも入れたいねぇ」

いろいろ試したらホームセンターに売ってる引っ越し用のダンボール箱がジャストフィットだった。買い占めて寺に戻り、眠ってるコケケケを詰め込んでいく。

出荷よー!

と叫びそうになった。

俺が運転してハイエースで船橋まで運ぶ。瀬奈さんが大多喜さんと話をしたそうだったので一緒に行く。もちろん大多喜さんも一緒だ。ギルド内は職員さんに手伝ってもらってダンジョン内へ運ぶ。職員さんらは「なんですかこれ?」と聞くけど大多喜さんが「後でわかるさ」とかわした。

「大多喜さん、どこで放します?」

「うちには魔物も出なくてハンターが来ない場所があるだろ?」

「ありますね」

物置があるところか。

段ボールを抱えた隊列はえっちらおっちら草原を歩いて物置が見える場所まで。

周囲にはハンターの姿もない。

「さてコケケケを出そうかねぇ」

「「「コケケケ!??」」」

職員さんらびっくり。段ボールを開けて「ほ、ほんとうだ」と二度びっくり。

「寝てるんで大丈夫ですよ」

「ほほほほんとうですかぁぁぁ」

寝てて大丈夫なはずだけど職員さんは恐る恐るコケケケを取り出す。弱いけど魔物だしね。

12羽をひとまとめにしたところで【説法】を解除して起こす。

「コケ? コケーコケー!」

「コケケケケ!」

コケケケ12羽は「コケーコケー」と草原に消えていった。

「どうなるかなぁ」

「果報は寝て待てって言うじゃないか。うまく行ったらラッキーくらいで待ってるさ」

大多喜さんはペロペロキャンディーをかじりながらカカカと笑った。

半月後くらいには船橋ダンジョンはコケケケの一大産地になっており、数が多く倒しやすいので新人ハンターにもおすすめなダンジョンになったがそれはまた別な話で。