作品タイトル不明
39.秋田ダンジョン狂騒曲⑦
「私が言うのもあれだが、少々やりすぎではないのか?」
課長さんに言われた。
「うーん、因果応報ってご存じですよね? そもそも彼が動かなければこんなこともなかったんですよ」
「ちょっとした出来心ではないかね。もちろん良くはないことだが」
「第一次世界大戦は一発の銃弾で引き起こされました。1600万人といわれる犠牲者の数に比べれば些細な出来事でしょうけど、引き起こしたのは大戦争です。大被害の切っ掛けというのは事象の大小ではないんです」
背景には当時の世界情勢があったのは間違いないんだけど、その緊張をぶち壊すことをやってしまったが故の大戦争だ。
苦しんだ末にダンジョンの撤去を申し出る人がいて、俺は当事者の苦しみも聞いた。こいつにとってはどうでもいい些細なことなんだろうけど、閻魔様の前でそれを言うがいいさ。
「これ以上やるつもりなら、容赦はしません。俺にも守るべき人がいますんで」
手が滑って秋田県がなくなってしまうかもしれない。仏様も見逃してくださるでしょ。
公開処刑っぽくなって一部界隈が騒がしいようだけど、俺たちはギルドに魔石を売って撤収するつもりだ。お肉はお土産!
「その卵はどうするんさ?」
おばーちゃんに尋ねられる。気になるよね。
コケケケはいくつものダンジョンでみられるそう。でも有精卵というのは記録にないらしい。貴重なデータなんだとか。
「孵化させてみたいよね。コケケケはランク1の魔物で弱いから対応も可能そうだし」
「【いわきダンジョン】あたりで孵化させて生態を調べるのはどうでしょう。報告書を作成したらギルド本部とともに酒田ギルド長へも送りますね」
ということになった。まぁ問題ないでしょ。
「よーし、まーるく(?)収まったしー」
「秋田を満喫しましょう」
「いえーい!」
ということで。ここからは観光した。
翌日、秋田最終日。今日は雪もなく快晴だ。帰りは新幹線なので秋田駅に向かった。
「お土産買わなくっちゃ! 美奈とヨーコと綾子ちゃん!」
土産屋さんに突撃した智が買い物かごにアレコレ入れている。三島さんと意気投合して名前呼びになってるな。実家の分も買いなさいよ?
「10時台のこまち発車まで12分しかありません。急いで買いましょう」
京香さんも銀線細工を見つめてる。繊細で綺麗だ。芸術品だね。
ビッチさんと黄金騎士団のポニーテールズ奥様に買うんだとか。悩みまくった挙句半数を買い占めた様子。
「奥さん、これ食ってみ!」
「こっちもうめーぞ!」
「あらー、どれもおいしそーで迷っちゃうわー」
ほわほわおねーさんの瀬奈さんはお店の人に試食を勧められて困ってた。結局全部買ったみたいだけど。
「俺も選ばないと」
なまはげのお面はマストだし、お菓子は当然、きりたんぽ鍋セットも欲しいし。目につくもの全部ほしい。なんでこうお土産はおいしく見えるんだろう。
「手あたり次第買っていこう。あ、お昼のお弁当も忘れずにだ」
土産屋さんのはしごをして在庫一掃な勢いで買った。皆が買ったお土産はこっそり俺が収納しといた。
「急げー」
走っちゃだめな瀬奈さんを抱っこして階段を駆け下りて車内に入る。席に着いた途端に発車ベルが鳴り、ドアが閉まった。
「ふぅ、間に合った」
「もっとお土産見たかったー」
「車内は暑いですね」
「うふふ、抱っこされちゃったー」
席はグリーンを縦にとってボックス席にできるようにしてある。東京まで4時間。その間に寺に連絡しないと。
京香さんがタブレットを取り出してビデオ通話アプリを立ち上げて寺につなぐ。葉介さんあてなので必ずつながるはずだ。タブレットは窓枠に置き、みんなで見えるようにした。
ぱっと画面が変わり、葉介さんの上半身が映る。背景をみるに、寮の食堂だね。
「お疲れさまです、京香です。いましがた秋田を出ました。寺につくのは夕方になりそうです」
『お疲れ様です。そちらは無事に終わりましたか?』
「えぇ、何とか終わりました。寺はどうですか?」
『こっちは……パイセン!』
葉介さんを押しのけて葉子ちゃんが画面に入ってきた。画面の隅っこには美奈子ちゃんもいる。
「葉子。電車の中なので静かにお願いします」
『イエスマム!』
声が大きい。美奈子ちゃんにかわった。
『今朝がた鳥の骨の魔物がたくさん出てきたんですけど』
「あー、それコケケケの骨バージョンじゃないかな。こっちでたくさん出たんだ」
『そうなんですね。で、黄金騎士団さんが来てまして』
画面に那覇さんが映る。相変わらずさわやかな空気をまとってるなぁ。
『やあおはようさん』
「さわやかな挨拶ありがとうございますっていうか、黄金騎士団の予約って入ってましたっけ?」
『いやー、妻たちから坂場君らが揃って秋田へ行くって聞いてね。手薄になってしまうだろうからって来たんだ。君には借りが多すぎてね。返す隙を探してたんだよ』
パチンとウインクするイケメン。くそう、俺がやるとギャグにしかならないやつだ。
『日比谷ダンジョンに興味があったって下心もあったけどね、ははは』
それが本命か。
「お土産もあるし、時間が大丈夫なら夕飯も作るんで食べていってください。秋田ダンジョンのお肉を出しますよ!」
『お、それは楽しみだね。帰ってくるまでまた鍛錬をするとしよう』
そんな感じで通信を終えた。
「まさか那覇さんが来てるとは思わなかったな」
「貸しは作っておくものねー」
「向こうにとっても利があるWIN=WINですが、黄金騎士団とのパイプも強くなりますし、ありがたいことです」
「頼りになるおにーさんって、いいね」
「む、俺も頼られるおにーさんを目指して頑張るぞ」
「大丈夫よ、守はとっくに頼りになる旦那様だから」
やったぜ!