軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

882:フィノの成果

ワールドクエスト、《最果てに在りし王》。

エインセルとの決戦を示すそのワールドクエストは、期間こそ決められているものの、開始タイミングは自由なクエストであった。

つまり、エインセルとの本格的な戦闘状態に入った時点で、そのプレイヤーはワールドクエストに参加したことになるのだ。

そういう意味では、俺は既にこのワールドクエストに参加している状態であると言える。

だが――本格的な戦いは、まさにこれからだった。

「ふむ……結構集まったもんだな」

この忙しさの中、二日程度で準備を終えたのは流石と言えるだろう。

元は白の真龍たちが住処としていた湖――未だに白龍王の躯が横たわるそこには、数多くのプレイヤーが集まっていた。

ここからエインセルの拠点へと攻め込むことはアルトリウスより周知されている。

協力者にしろ、お零れ狙いの連中にしろ、この場に集まってくるのは自然流れだと言えるだろう。

「だが、結局要塞化はしなかったか」

「流石に時間が足りないわよ。そもそも、短期決戦である以上、ここを防衛するメリットが少ないわ」

俺の言葉に肩を竦めながら返したのは、久しぶりに穴蔵から出てきたエレノアであった。

流石に、本格的な作戦開始ともなれば、いつまでもあちらに掛かり切りというわけにはいかなかったらしい。

とはいえ、『エレノア商会』の面々も、トップメンバーに近い連中は十分なクエストを消化できたらしい。

彼らによって生み出されているアイテムの数々は、プレイヤーたちにとって大きな力となっていることだろう。

「白龍王の遺体のことは気になるけど……破壊不可オブジェクトになっている以上、放置せざるを得ないからね」

「だが、一応は色々と資材を運び込んでいるんだろう? 攻められてもいいのか?」

「補給物資については、うちのメンバーが持ち運んでいる分でも何とかなるわ。どちらかというと、拠点よりも私たちの護衛をしてくれた方が助かるわね」

「……インベントリってのも便利なもんだな」

どうやら、『エレノア商会』のメンバーは補給物資を抱えた状態で同道するらしい。

場所は取らないし、取り出しも一瞬。スキルを持っていれば枠も拡張されているため、その量も十分ということか。

この点については、向こうの 世界(サーバ) よりも優れていると言えるだろう。

ともあれ、防衛に戦力を割かれなくて済む点は助かると言える。

エインセルを相手に、余裕がある状況とは口が裂けても言えない。戦力は少しでも多く必要なのだ。

「それで、フィノの調子はどうだった?」

「まだあれこれと試行錯誤してるけど……とりあえず、形にはなったみたいよ」

そう告げて、エレノアはインベントリから、いくつかのアイテムを取りだした。

長大な刀と、二振りの小太刀。そして、黒と白の二色に彩られた篭手。

篭手は全員分、そして刀は俺の分だけか。

「龍王の素材で作られた刀と、エルダードラゴンの素材で作られた篭手。要望通り、右手は切断能力、左手は遮断能力を付与してあるわ」

「……流石、としか言えんなこれは」

注文全てを製造するには至らなかったようだが、俺たちが使う分については全て完成させたようだ。

赤龍王と銀龍王の爪で作られた小太刀、そして野太刀は赤龍王のものか。

黒と白二色の篭手は、右手は黒の比率が多く、左手は白の比率が多い。

そしてどうやら、緋真が預けていた篝神楽の改造も完了した様子であった。

■《武器:刀》龍炎爪『篝神楽』

攻撃力:98(+39)

重量:27

耐久度:180%

付与効果:攻撃力上昇(極大) 耐久力上昇(極大) 焔喰 龍爪(焔)

製作者:フィノ

「攻撃力は微増ってところか……だが、今回の肝はそっちじゃないんだろ?」

「はい、こっちの鞘の方ですね。覗き込んだら中で炎が燃えてるのは不思議でしょうがないですけど」

緋真が掲げているのは、先端が赤い宝石で形作られている鞘であった。

その内部には言葉通り炎が内包されており、篝神楽の刀身へ常に炎を供給し続けている。

際限なく炎を喰らい続ける篝神楽は、果たしてどこまでその力を喰らっているのか。

「こちらにも同じ仕掛けをしてくれたのは助かるが……流石に、小太刀の分は無かったか」

同じ精霊石の仕掛けについては、どうやら野太刀の方にしか付けられていないらしい。

まあ、精霊石も大量に手に入ったというわけではないし、氷の方はそもそも手に入れていないのだから、無理もないだろう。

鞘の強化については追々考えることとして――とりあえずは、今手に入った装備の性能か。

■《武器:刀》龍炎対爪『灼咆』

攻撃力:95(+38)

重量:27

耐久度:180%

付与効果:攻撃力上昇(極大) 耐久力上昇(極大) 龍熱

製作者:フィノ

■《武器:刀》龍氷対爪『銀嶺』

攻撃力:95(+38)

重量:27

耐久度:180%

付与効果:攻撃力上昇(極大) 耐久力上昇(極大) 絶凍

製作者:フィノ

■《武器:刀》龍炎爪『焔王』

攻撃力:115(+46)

重量:27

耐久度:180%

付与効果:攻撃力上昇(極大) 耐久力上昇(極大) 焔喰 龍爪(焔)

製作者:フィノ

「……フィノめ、緋真の方に全力を注いだな?」

「別に手を抜いたわけじゃないでしょう。出来がいいのがそっちだったっていうだけで」

「まあ、ブレがあるのは仕方のないことではあるがな」

篝神楽は、フィノにとっては会心の作ということだろう。

まあ、一つに全力を注ぎ込むことは悪いことではない。

俺はそこまで多く小太刀を使うわけではないし、それも仕方ないだろう。

「ところで、小太刀の方は能力が篝神楽とは全然異なるようだが?」

「しかも付与が一つ減ってますね。それだけ強力な効果なんでしょうか?」

「ええと、一応説明は聞いていたのだけど……斬りつけた敵の状態、耐性に関係なく、燃焼、凍結状態にする力のようね」

エレノアの説明に、思わず首を傾げる。

相手の耐性を無視する状態異常。アリスの魔眼がそうだが、それは確かに強力な効果であると言えるだろう。

しかしながら、龍王の素材で――しかも付与を一つ減らすほどの効果なのかはよく分からなかった。

「っていうか、名前に『対』って付いてるのは何ですかね?」

「双剣のように、セットで運用される武器だからのようね。燃焼と凍結は共存しない状態異常だから、敵はその状態を行ったり来たりすることになるわ」

「それは……」

ゲーム的にどのような効果があるのかは分からないが、物理的に考えるととんでもないことになりそうだ。

あまり詳しくはないが、金属疲労による破壊も狙えるのではないだろうか。

「一応、燃焼状態と凍結状態では、相反する属性の攻撃が通りやすくなるから。双剣として運用すればダメージも伸びやすくなると思うわよ?」

「ふむ……まあとりあえず、セットで運用を意識しろってことだな」

果たしてどの程度の効果があるのかは不明だが、長期戦ではそれなりに効果があるかもしれない。使い所があれば運用してみることとしよう。

野太刀の方は、純粋に篝神楽と似た性能となっているようなので、運用に困ることは無いだろう。

基本状態の攻撃力で言えば、既に餓狼丸を超えている。まあ、解放後の吸収完了状態と比べればその限りではないため、一概にどちらが強いとも言えないのだが、とりあえず普段使いの選択肢にも入る性能だと言えるだろう。

「篭手の方は、おおよそ聞いた通りの性能ね。でも、こっちは解放は使わずに作ったのかしら?」

「流石に、あれはそう何度も連発して仕えるものではないもの」

篭手の性能を確認したアリスの言葉に、エレノアは苦笑交じりにそう答える。

流石に、防具にまで解放を使うほどの余裕は無かったようだ。

まあ、俺たちの武器を作ってくれただけでも御の字であるし、文句はないのだが。

■《防具:腕》老龍の篭手・装甲付与(右)

防御力:66(+20)

魔法防御力:50(+15)

重量:8

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(大) 魔法防御力上昇(大) 攻撃力上昇(中) 次元切断

製作者:フィノ

■《防具:腕》老龍の篭手・装甲付与(左)

防御力:66(+20)

魔法防御力:50(+15)

重量:8

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(大) 魔法防御力上昇(大) 攻撃力上昇(中) 次元遮断

製作者:フィノ

シリウスの《 不毀の絶剣(デュランダル) 》に近い能力が次元切断、あらゆる攻撃を遮断するという能力が次元遮断か。

右手で能力を使うか、左手で能力を使うかは間違えないように気を付ける必要があるだろう。

「篭手の方については事前に説明が合った通りの性能だと思うけど、何か質問はあるかしら?」

「そうだな……この次元系の付与効果のクールタイムは?」

「十分ね。長期戦でもなければ、一つの戦闘で二度発動することは無いと思うわ」

長すぎるというほどではないが、何度も使えるほど短くもない。

使い所には注意する必要があるだろう。

どうやって運用するか、その考えを巡らせている間に、エレノアは肩の荷が下りたとばかりに息を吐き出して声を上げる。

「さて、これで私の仕事は半分終わりね」

「もうか? 本番はまだこれからだろうに」

「私たちは前線に出られるほどの能力は無いもの。後は後方支援に徹するわ」

「……まあ、了解。その代わり、補給物資は頼むぞ」

「ええ、勿論。だから遠慮なく戦って」

ひらひらと手を振って去って行くエレノアを見送り――それと入れ替わるように、アルトリウスがこちらへとやって来る。

どうやら、こちらの準備も完了したらしい。硬い表情でこちらへとやって来るアルトリウスを迎えながら、俺は小さく笑みを浮かべていた。