軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

459:スキルの考察

悪魔を倒しつつ、スキルの習得について考察する。

昨日のワールドクエスト――否、グランドクエストでは、正直スキルに困るということは無かった。

まあ、相手との相性には悩まされることになったものの、何らかのスキルが足りていないという実感はなかった。

攻撃力の不足については【武具神霊召喚】によって十分補えているということだろう。

やはり、あれだけのコストを支払うのに見合うだけの効果は有ったということか。

と――プラチナのスキルオーブを眺めながらぼんやりと考えていた俺に、隣を歩く緋真が覗き込むようにしながら問いかけてきた。

「次のスキル、まだ考え中ですか?」

「ああ。お前の方はどうなんだ?」

「私は《聖女の祝福》を外して《見識》を戻すだけです。戦闘系は足りていたと思いますし」

そういえば、緋真は悪魔から手に入れたスキルオーブのお陰で、スキル取得のタイミングが早かった。

その影響もあって、スキルの枠を一つ無理矢理に開けている状態だったな。

それならば、これで元に戻すことはできるだろう。

「それで、何か考えはあるんですか?」

「いや、それほどは。だが、あまりMPを使うスキルは取れないと考えていたところだ」

【武具神霊召喚】は大変強力な魔法ではあるが、MPの大半を封印されてしまうデメリットがある。

それを行うだけのメリットがあることは事実だが、他のスキルの運用に影響が出てしまうことはどうしても避けられないのだ。

だからこそ、今回は更にMPを消費するようなスキルは取得できない。

「MPを使わないスキルとなると、《練命剣》みたいなHP消費型か、 常時発動(パッシブ) のスキルぐらいしかないですね」

「だろうなぁ……まあ、今は攻撃系スキルはあまり考えていないんだが」

公爵級はともかくとして、侯爵級までであれば現状のスキルでも十分に戦えることは分かった。

強制解放(リミットブレイク) を使えば公爵級悪魔にも十分通じるだろうし、攻撃面は足りていると考えてもいい筈だ。

であれば、この状況で取るべきスキルは攻撃以外――防御や補助、回復系になるだろうか。

「今更防御系は要らんしなぁ……」

「そもそも耐える様な構成じゃないですしね。回避系もスキルで補助されるのは嫌いでしょう?」

「それもそうなんだよな」

回避系のスキルは、発動と同時に勝手に体が動くようなものが多い。

中にはアリスの持っているような短距離転移などもあるが、どちらにせよ俺には使いづらいスキルになってしまうだろう。

正直、回避については歩法を使えば何とかなるだろうし、やはり防御や回避は必要ないという印象が強い。

となると、残るは補助や回復スキルだ。

(補助は……まあ、現時点で色々と使ってるしな)

俺が持っているスキルの場合、《魔技共演》や《剣氣収斂》がこれに当たる。

効果は様々であるし、この中でもさらに細かく系統が分けられるだろうが――生憎と、これらもMPを消費するものが多い。

やはり、常時発動型の補助や回復のスキルにするべきだろうか。

「……回復か」

「先生、まだ回復を取る気なんですか?」

「いや、決めたわけじゃないが……別に悪い選択肢じゃないだろう?」

「そりゃまあ、そうなんですけどね。先生ってどんどん自分のHPを減らしますし」

《奪命剣》や自動回復系のスキルがあるとはいえ、俺のHPは頻繁に少ない状態になる。

《血の代償》のお陰でそれにもメリットがあることは事実だが、やはり上位の悪魔相手に余波だけで死にかねないような状態で接近するのはリスクが高い。

《練命剣》を連発するという意味でも、HPの回復は重要なのだ。

また、MPの回復もできるのであればそれも役に立つはずだ。

MPは戦闘開始時に一気に使った後はあまり使わないのだが、その状態から回復するためには少し時間が必要だ。

《奪命剣》を使うためにもMPは必要だし、MPが枯渇状態になると回復に手間取ることになる。

そのMPを回復するために《蒐魂剣》を使うのもいいが、あのスキルも発動にはMPを使用する。

多少なりとも残っていなければどうしようもないのだ。

「ふむ、回復ってのも悪くはないな」

「なんだか、またクオンがおかしな生き物になろうとしている気がするけど」

「ただでさえどんどん回復するのに、これ以上どうする気なんですかね」

「五月蠅いぞ外野」

何やらごちゃごちゃ言っている緋真とアリスを半眼で睨みつつ、スキルオーブで取得できるスキルのリストを確認する。

回復系のスキルであれば、あまりチェックしていなかったものもいくつか残っていた筈だ。

尤も、MPを消費しない常時発動型となると、殆ど数も残らないのだが。

その中でも目に付いたのは、俺が普段から使用しているスキルに関連するスキルであった。

■《 再生者(リジェネレイター) 》:補助・パッシブスキル

《HP自動回復》、《MP自動回復》の効果を上昇させる。

《回復適性》と効果は重複する。

また身体異常系の状態異常は、効果終了までの時間が短縮する。

回復量、短縮時間はスキルレベルに依存する。

「緋真、身体異常系の状態異常って何だ?」

「身体異常? それなら毒とか麻痺とか……あと部位欠損とかも身体異常に入りますね」

「ほう……あまり受けたことはないが、厄介なもんだな」

基本的に、アリスが使っているような毒で付与できるものが身体異常に分類されるのだろう。

そういった状態異常が、普通よりも早い時間で消滅するということだろう。

果たしてどの程度の時間削減になっているのかは分からないが、早く消えてくれるに越したことはないだろう。

それよりも重要なのは、このスキルが自動回復系のスキルを強化してくれることだ。

HPとMPの両方に影響を及ぼせるスキルは、この《 再生者(リジェネレイター) 》しかないだろう。

《回復適性》――いや、《回復特性》とも効果は重複するようであるし、更に回復力が高まることになるだろう。

「ふむ……これで決まりでいいか。緋真は新しいスキルは取らんとして、アリスはどうするんだ?」

「《偽装》辺りを戻してもいいんだけどね……貴方たちと行動していると、使うタイミングもないし」

どうやら、アリスも中々にスキルには悩んでいるらしい。

アリスは、戦闘の強みがはっきりしているタイプのプレイヤーだ。

今更他のスタイルを採用できるわけも無し、現状の戦いを突き詰める他ないのだ。

「で、何かいい感じのスキルはあったのか?」

「そうね……私が見つけたのはこの位かしら」

そう言ってアリスが示してきたのは、俺が一切チェックしていなかったようなスキルだ。

■《死神の手》:補助・アクティブスキル

発動後、直接触れた相手の即死耐性、および状態異常耐性を減少させる。

触れた数だけ効果が発動、重複する。

また、付与した状態異常の効果時間を延長する。

こうして見ると、プラチナスキルオーブで取るには少々地味なスキルであるように思える。

だが、効果が重複するのであれば、アリスにとっては中々に強力なスキルになるだろう。

アリスの攻撃には低確率ながら即死効果が付与されているし、運が良ければ発動するかもしれない。

「ほう……まあ、腐ることは無さそうだな」

「そこまで強力っていうわけではないけど、十分に使えるスキルのはずよ」

「確かに、アリスさんなら活かせそうですね。蓄積型の耐性減少なら、ひょっとしたらボスにも通じるかもしれないし」

「ボスの耐性を削り切るまでどれだけ必要なのかは分からないけどね。即死耐性なんて特に高いでしょうし」

「だが、状態異常を仕掛けられるだけでも有用だろう。緋真も状態異常付与は持っているわけだしな」

緋真は普段から炎上状態の付与を、紅蓮舞姫の効果では熱毒という特殊な状態異常付与も持っている。

相手の耐性を下げる効果はそれなりに有用だろう。

「よし、それじゃあスキルは決まりとして……そろそろ飛ぶとするか」

「もう山だからねぇ。そろそろ普通に登るのも面倒になってきた頃だわ」

「流石に、この高い山を徒歩で登るのは面倒過ぎる。目的地までひとっ飛びといくか」

さて、果たしてあの雲の上はどうなっていることやら。

スキルの効果を確かめつつ、先に進むこととしよう。