軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

458:霊峰を見上げて

聖女ローゼミアが住んでいた聖堂もそうだが、この世界の連中は何故山の高い位置に宗教施設を建てようとするのか。

まあ、日本でも山の中に寺を建てているところは多いし、この世界だからという話でもないのだろうが。

天に近い場所ほど女神に近づくことができると考えているのか、あるいは他の事情か――何にせよ、参拝するのが非常に面倒臭いということに変わりはない。

特に――

「……あれに登るの?」

「文句言うなよ、お前はどうせ自分じゃ歩かんのだろうが」

雲を突き抜けて空の果てまで伸びる巨大な山。

頂点が隠れて見えないため、その高さを推し量ることもできないが――まあ、富士山よりは高そうな雰囲気だ。

この世界の季節的に冬ではないとはいえ、あれほど高い山に登るのは中々に厳しいものがあるだろう。

尤も、まともに登る気など無いのだが。

「別に、山道を通って来いと制限されているわけでもないし、普通に飛んでいけばいいだろ」

「まあ、見た感じは金龍王の住処より低い位置にありますもんね」

いくら高い山であるとはいえ、流石に空を浮遊する金龍王の島よりは低い。

あれならば、特に問題なく頂上を目指すことができるだろう。

とはいえ、折角悪魔領に足を踏み入れるのだから、ただあの頂上を目指して飛んで行くだけでは芸がない。

とりあえず、多少は悪魔領の状況を確認しながら先に進むこととしよう。

「しっかし……悪魔が支配している領域だっていうから身構えてましたけど、正直あんまり変わりませんね」

「まあ、確かにな。もっとおどろおどろしい雰囲気を想像してたわ」

特に身を隠すでもなく堂々と道を進みながら、緋真の言葉には同意を返す。

悪魔に支配された領域と聞いて、思い浮かべるのは解放する前の聖王国の姿だ。

本当に酷い有様ではあったし、独特の雰囲気があったようにも思える。

とはいえ、それは街中の話であって、フィールドまでそんな様相になっていたわけではないのだが。

「しかしまぁ……悪魔に支配されていることは紛れもない事実だがな」

「お父様、来ています!」

上空で索敵を行っていたルミナから、警告の声が届く。

しかし、それが届くよりも早く、俺はその気配の接近を察知していた。

近づいてくるのは悪魔、その数はおよそ十体と言ったところか。

数はそこそこであるし、魔力量からしてアークデーモンも含まれていることだろう。

爵位持ちこそいないが、甘く見ることができる戦力というわけでもない。

ならば、さっさと潰させて貰うこととしよう。

「セイラン、先制攻撃を放て。敵が混乱したらシリウスが突っ込み、散り散りになったところ各個撃破だ」

「クェエエエッ!」

俺の指示に対し、セイランは即座に従い魔力を解放した。

直後、晴れた空から三条の雷が降り注ぐ。青天の霹靂は、やたらと目立つシリウスを目印に近寄ってきていた悪魔たちを頭上から打ち据えた。

流石にそれだけで倒れるような悪魔たちではないが、それでも足は止めざるを得ない。

そして動きが止まった瞬間――

「グルルルルルッ!」

鋭い両前足で叩き潰すように、シリウスが襲い掛かった。

超重量級のその体は、それ自体が凶悪極まりない武器だ。

避け切れずに叩き潰されたデーモンは、抵抗の間すらなく黒い粒子となって消滅してしまった。

そして、辛うじて回避した悪魔たちも、その衝撃に耐えきれずに陣形を崩してしまっている。

「【ミスリルエッジ】、【ミスリルスキン】、【武具神霊召喚】、《剣氣収斂》――『生奪』」

歩法――烈震。

無論、それこそがこちらの目的だ。

陣形も体勢も崩れた悪魔たちへと向けて、俺たちはそれぞれバラバラに襲い掛かった。

俺が狙いを定めたのは、片膝を突いた体勢となっているアークデーモンだ。

どうやらイベント時でなくても普通に出現するようになったらしい。

斬法――剛の型、穿牙。

そうして体勢の崩れている悪魔の胸へと向けて、餓狼丸の刃を突き刺す。

心臓部を貫かれた悪魔はびくりと体を震わせ――けれど、完全なる絶命には至らない。

爵位悪魔もそうだったが、この位のレベルの悪魔になると、心臓も即死部位には当たらなくなるのだろう。

とはいえ、大ダメージを受けたことに変わりはない。動きの鈍った悪魔に対し、俺はそのまま強引に刃を振り下ろし、悪魔の体を深く斬り裂いた。

そしてその直後、援護するつもりであったのか、俺へと向けてデーモンからの魔法攻撃が飛来する。

「《蒐魂剣》、【因果応報】」

無論のこと、見えている以上は対処することなど容易い。

こちらへと飛来した水の魔法を斬り裂いて刃に纏わせ、俺は返す刀でそのデーモンの方へと刃を振り抜いた。

「《練命剣》、【命輝一陣】」

相手の魔法を纏わせた生命力の刃は、水の飛沫を飛ばしながらデーモンへと襲い掛かる。

元より崩れた体勢のまま無理に放った魔法だ。その状態では、俺の反撃など避け切れる筈もない。

俺の放った一撃は悪魔の首へと直撃し、その首を斬り飛ばした。

「流石に、強化を入れた状況では大した威力だな」

【武具神霊召喚】の効果もあってか、これだけでもかなりの攻撃力だ。

格落ちのデーモンが相手とはいえ、まさか【命輝一陣】だけで相手の首を切断することができるとは。

ここ最近の強化の中では、最も有効な効果であったと言えるだろう。

(……そろそろ考えんといかんな)

今回のイベントでも、稼いだポイントは例によってスキルオーブの取得に費やした。

残りについては成長武器の強化素材と交換したため、 強制解放(リミットブレイク) を使う余裕も生まれてはいるが――まあ、それについては今はいい。

問題は、新たなスキルの取得だ。イベント時はスキル枠が解放されてすぐであったため、レベルの低いスキルを使うぐらいならば《聖女の祝福》の方がいいと、新たなスキルの取得は行わなかったのだ。

まあ、近々スキルオーブが手に入りそうだった、ということもあるが……何にせよ、今は新たなスキルを取得できる状況である。

のんびり考えながら進めばいいと思っていたが、敵との戦いが頻繁に起こるのであれば、スキルを取っておかないのも勿体ない。

「さて……何のスキルを取得したもんかね」

俺が二体の悪魔を片付けている間に、ルミナたちテイムモンスターはそれぞれ一体、緋真とアリスはそれぞれ二体片付けたようで、悪魔たちはあっさりと全滅してしまった。

アークデーモンを含んでいたとはいえ、名無しの悪魔が相手ではこの程度のものだろう。

せめて、倍ぐらいは数が無ければ苦戦には至るまい。

『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

「ふぅ……やっぱり、普通に悪魔が出てくるんですね。しかも、結構なレベルでしたし」

「確認してたのか?」

「そりゃまぁ。やっぱり、アークデーモンは皆レベル90を超えていますね。普通に強いですよ」

「そんなもんかね。思考が単純だからか、ペースを崩してやればあっさりと倒せる程度の相手でしかないだろ」

「まずそこまで上手く先制攻撃ができるもんでもないですから……まあでも、私たちなら進む分には問題無さそうですね」

確かに、多少敵は強いが、大きく苦戦するほどのものではないだろう。

素材稼ぎはできないが、経験値稼ぎにはなる。こいつらを聖王国に入れるのも面白くないし、見かけたらその都度駆除していった方がいいだろう。

「さてと……それで、どうするんですか? 山に直で向かいます?」

「ああ、だが麓までは歩いていくとしよう。そのあと、飛びながら周囲を確認しつつ山頂を目指す」

「様子を見るだけなら空からでも十分だと思うんだけどねぇ」

嘆息するアリスの言葉も尤もであるが、そうあっさり進んでしまっても面白くないのだ。

どうせ、しばらくはこちらも攻勢には移れないし、適当に悪魔の戦力は削いでおきたい。

この調子で先へと進みつつ、スキルの取得を考えることとしよう。