軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔剣誕生秘話

「契約ってなに? どうなるの?」

ノルンに対して声を出して聞く。

強くなるための方法。

それを契約という言葉を使って提案してきた。

というか、こいつは剣じゃないのか。

ただの面白い、変わった武器だと思っていた。

けれど、違うのかもしれない。

自分の人格を持つ魔剣ノルンは、武器という分類には収まらないものなのかもしれない。

(そうだな。俺様は最強の剣だ。だが、それは一つの側面でしかない。というよりも、本来の目的は剣という兵器ではなく、もともとは儀礼用の剣として造られたんだよ)

(儀礼用の剣?)

(ああ。血を媒介に魔力を集めて力を高め、儀式を行う。それこそが、俺様の本来の使い方なんだよ)

(なんだそれ。それなら最初からそう説明しとけばいいのに)

(アルフォンスと出会ったばかりの時は言う必要がないと思っていたからな。そもそも、その段階に至れるほどの血を吸えるとも思っていなかった)

(あ、じゃあ、もしかして今はもうその契約ができるくらいになっているってこと?)

(そのとおりだ。アルスが血を提供したことによってな。あれほどの最高級の血をふつうは死ぬだろうというくらい吸うことができたからな。しかも、その血はお前と同一だ。これなら血の契約も成功するだろう)

そういえば、【回復】で治るからと言って大量の血を噴き出していたな。

あれで、魔剣ノルンの剣身は鮮やかな赤色に変わっている。

見つけた当初の赤黒い血痕のような色ではなくなって、確かに何かの儀式に使えそうな見た目になっている。

っていうか、こいつ戦闘用じゃなかったのか。

(えっと、それで結局どうなるの? 血の契約をしたらなんで強くなれるの?)

(そうだな。それを説明するために、まずは俺様の過去を話してやろう)

そう言って、ノルンが話し始めた。

もう、どれくらい昔の話になるのかはわからないけれど、かつてノルンが造られたときのことにまでさかのぼった、かつてあった話を僕に聞かせてきたのだった。

※ ※ ※

東方にはいくつもの国がある。

ブリリア魔導国や教国、あるいは帝国などといった国々だ。

その中の一つである帝国は海という大きな湖のようなものに面している。

その海を渡ると別の土地があるらしい。

魔大陸。

そう呼ばれる大きな大陸があり、そこでノルンは造られたそうだ。

魔大陸の奥にはかつて、吸血鬼と呼ばれるものがいた。

血を吸うことで糧を得て、魔力も増える。

そして、その吸血鬼は長生きだったらしい。

人よりも圧倒的に長く生きる、と言われていた。

もっとも、その吸血鬼が実際にどのくらい長生きできるのかは誰にもわからなかったそうだけど。

その吸血鬼に目を付けた人がいたという。

といっても、吸血鬼に恋をしたとかそういう話ではない。

その寿命の長さに惹かれたのだそうだ。

そして、その人はこう思った。

自分も吸血鬼になれば、長生きできるかもしれない、と。

そんなことを考えて、研究し、そしてついにその妄執は現実のものとなった。

儀礼用の魔剣が完成したのだ。

それこそが、ノルンだった。

魔剣は血を吸って魔力を高める。

そして、その魔力を使って儀式を行うことができた。

その儀式を受けると、吸血鬼の特性を得ることができる。

すなわち、血を媒介にして生と魔力を得ることができるのだという。

そして、それを使ってその人物は吸血種になり、国を作った。

かつて、吸血種の大国が存在したらしい。

ただ、もうその国はない。

いろんなことがあり、内部からも、外部からも問題が起こって滅ぶことになったからだ。

その動乱によって、魔剣は持ち出され、その後さまざまな人の手に渡ることになった。

といっても、魔剣を手にした人が全員吸血種になったわけではない。

血の契約は必ず成功するわけではないからだ。

多くの血を吸い、魔力を集めて儀式が行えるようになるが、その際に集めた血との相性が悪ければ失敗する可能性があるという。

要するに、相性が合わなければ血の契約は成功しない。

だけど、その厳しい条件を僕はすでに満たしているという。

普通ならば多くの人の血と魔力を混ぜ合わせて条件を満たすため、儀式の適応者となれるかどうか、相性が合うかどうかは運しだいになるはずだった。

なのに、アルス兄さんというある意味で斬っても死なない人から豊富な血と魔力を受け取った魔剣ノルン。

しかも、その前は数百年ほど放置されたことで魔剣には一滴の血もない空っぽの状態だった。

つまり、魔剣は現状、僕とアルス兄さんの血しか得ていない。

そのためか、儀式の成功のカギとなる相性はばっちりなのだという。

(どうする、アルフォンス? 今ならお前は生まれ変わることができるぞ。かつて、最強と呼ばれた吸血種の王になれる。そうなれば、アルスを追い抜くことすらできるだろうな)

(……アルス兄さんを追い抜く? アルス兄さんに勝てるようになるってこと?)

(もちろんだ。可能性は十分にあるさ。もっとも、吸血種になった後でも、それだけの魔力を集める必要があるだろうがな)

アルス兄さんに勝つ。

あのアルス兄さんより強くなれるかもしれない。

それはこれ以上ないほど魅力的な提案に思えた。

だから、僕はうなずいた。

この儀式を行うならば今しかない。

条件を満たして、かつ、ほかの血が一切混じっていない今しかできない。

この機会を逃せば、もう二度と血の契約が成功しないかもしれないのだ。

こうして、僕はノルンの提案を受け入れることにしたのだった。