軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

入国管理

(な、なんだ? ここはどこだ?)

(ここはバルカニアの出島だね。さっきのバリアントから一瞬で移動したんだよ)

(乗り物の下にあったあの魔法陣を使ったのか。むう、とんでもないな)

魔導飛行船がバリアントに設置されていた転送魔法陣によって一瞬で移動を終えた。

ノルンがそのことに驚いている。

まあ、初めてこの転送魔法陣を経験すればだれでも驚くと思う。

周りの景色が一瞬にして変わってしまうのだから当然だろう。

それまでは、空に浮かぶといってもさらに高い大雪山がそばにあったバリアント。

しかし、そこから移動した先は山が一つもなかった。

出島の周りには雲ばかりだ。

雲海が周囲に広がっていて、明らかにさっきまでいた場所とは違うことが誰の目にも明らかだった。

(ここがアルフォンスの生まれ故郷ってことだな?)

(ちょっと違うかな。ここはさっきも言ったけど出島なんだ。よそからバルカニアに来る人は一度この出島について、それからバルカニア行きの別の魔導飛行船に乗り換えるんだよ)

(なるほど。関所とかいうやつだな。空の上に浮いた関所を通らないと行けない国か。かなり攻め込まれることを気にしているんだな。強いわりに慎重な性格みたいだな、あの化け物は)

なんか、ノルンのアルス兄さんの評価がすごいな。

頭がおかしい変人だとか、化け物とかそんなことばかり言っている。

意志を持つ剣もたいがい変だと思うんだけどな。

そんなことを思いながらも、僕たちは一度魔導飛行船を降りた。

留学生たちも全員降りて、この出島から転送魔法陣を経由して今度は地上のバルカラインへ向かうことになる。

そこから、フォンターナの街に移動してそれぞれの家に戻ることになる。

ただ、僕とアルス兄さんは魔導飛行船を使ってバルカニアへ向かうことになる。

バルカニアと出島は転送魔法陣ではつながっていない。

あそこへまでは空を飛んでしか行けないようになっているからだ。

その魔導飛行船の操縦も人間ではなくアイの別端末が任されていて、不法入国できないように徹底している。

確かに、外部からの侵入にはかなり気を配っているなとノルンの言うことに頷いてしまった。

「おい、アルフォンス。これをつけとけ」

「何これ? 腕輪?」

「ああ。天空王国の民にたいして全員に配っている腕輪だ。身分証になる。これをつけてないと入国できないようになっている」

「へえ。こんなのあるんだ。でも、腕輪しているだけで身分証になるの?」

「その腕輪をよく見てみろ。魔法陣が刻み込まれているだろう? ただの腕輪じゃないのさ」

「あ、本当だ。なにか変わった機能が付いているってこと?」

「そうだ。その腕輪をつけている者の情報がすべて閲覧できるようになる。名前から年齢、両親の名前や住所、職業や財産までほとんどの情報がそれで管理できるんだよ。ついでに、その腕輪があればお金を持たなくても買い物もできるぞ」

「え? 買い物もできるの? お金なしに?」

「ああ。その腕輪の情報の中にはバルカ銀行の預金残高まで入っているからな。商取引をその腕輪を介して行うと、いちいち現金を持ち歩かなくても済む。まあ、天空王国内限定の話だけどな」

すごい。

何それ、便利すぎない?

僕がブリリア魔導国に留学している間にバルカニアがよく知らない制度に変わっていた。

「ステータスオープン」

そこで、とりあえず腕輪の機能を試してみた。

アルス兄さんに言われたとおり、腕輪を起動する鍵となる聞いたことのない単語をつぶやく。

別にこれは呪文ではないはずなのに、その言葉を告げた瞬間に腕輪に変化が現れる。

一瞬にして硬化レンガでできた薄い板が手のひらの上に現れていたのだ。

そして、その板は表面に凹凸がある。

どうやら、その出っ張った部分が文字となっているようだ。

僕の名前やそのほかの情報がそこに書かれていた。

聞いたとおり、いろんな情報が載っている。

ただ、そこで気になる項目があった。

両親の名前の項目だ。

僕の両親。

父であるアッシラ・バルカと母であるマリーの6番目の子ども。

それが僕であり、たしかにここにもそう書いている。

けれど、これは本当なんだろうか?

今までそんなことに疑問を持ったことは一度もなかった。

ただ、ノルンが言ったことが正しいのだとすれば、僕の親は誰になるんだ?

アルス兄さんによって造られたという話が正しいのであれば、父さんや母さんは別にいることになるのか?

……やっぱり聞いてみよう。

ただし、それはアルス兄さんにではない。

母さんだ。

あの優しい母さんならどんな質問にも答えてくれる気がする。

それに、アイと違ってアルス兄さんに口止めされている可能性はあっても、絶対にしゃべれないなんてこともないはずだ。

そう考えた僕は、バルカニアへと魔導飛行船が到着したら、すぐに母さんのいる家に向かったのだった。