軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

奇襲のあとに

「突っ込むぞ、雷鳴剣を放て!」

深夜に陣地を飛び出したバルカ騎兵団がメメント軍に対して奇襲を仕掛ける。

最初に攻撃を仕掛けたのは雷鳴剣をもたせたバルカの騎士たちだった。

アーバレスト家に勝利し、賠償請求した折に支払の一部として受け取った複数の雷鳴剣。

それを使ったのだ。

警戒していたメメント軍の兵たちが【照明】を使って出した明かりの中に紫電の光が飛び交う。

広範囲に拡散するように伸びる電撃による攻撃。

その攻撃によって騎兵の侵入を防ごうとしていたメメント軍の守りにほころびが生まれた。

「よし、突っ込むぞ。食料庫を燃やすぞ!」

相手の守備にわずかに空いた穴を押し広げるように突入していく。

俺はその先頭をヴァルキリーに騎乗しながら駆けた。

右手には氷炎剣、左手には聖剣を握る。

斬鉄剣から聖剣へと名前を変えた俺のメインウェポンのグランバルカはすべてが上手くいけば教会のものとなってしまう。

が、今はまだ俺のものだ。

硬い竜の骨すら断ち切ってしまった剣の切れ味は今だ健在であり、実は先のメメント軍当主級を討ち取ったのもこのグランバルカだったりする。

豊富な魔力を高い防御力としてしまう当主級を相手にするには、やはりこのグランバルカの存在はありがたかった。

今更ながらにこれを教会にわたしてしまうというのが不安になる。

はやいところ、第二の斬鉄剣を作らなければならないだろう。

そんな聖剣グランバルカを振るいながらも、右手には氷炎剣を持ち、攻撃を加えていた。

この氷炎剣グランドアルスには不思議な性質が存在する。

魔力を通すと氷精剣のように氷の剣が伸びるのだ。

この氷には実体があり、相手を切り裂くことができる。

しかし、氷炎剣の効果はそれだけではなかった。

剣の形をした氷が炎へと変換できるという変わった特性を持っていたのだ。

そのため、この氷の剣で切り裂くと同時に、その氷が灼熱の炎となって相手を燃やし尽くしてしまう。

しかも、それだけではない。

氷炎剣から伸びた氷の剣が他の氷と触れ合うと、その氷すら炎へと変えてしまうのだった。

だが、この氷炎剣には第三の能力が隠されていた。

それはなんと、遠距離攻撃を可能とする、というものだったのだ。

炎鉱石から作り上げた氷炎剣はすでに複数作り上げて、バルガスなどの信頼できる相手に預けている。

その際、俺がすぐには気が付かなかった新たな氷炎剣の使い方を他のものが発見したのだった。

それは、氷炎剣を右手に持ちながら【氷槍】を発動する、ということだった。

通常であれば右手の平から発射される氷の槍。

それが、氷炎剣を手にしながら呪文をつぶやくことによって新たな現象を引き起こした。

氷炎剣の先から氷の槍を放ったのだ。

だが、それは通常の【氷槍】とは違った。

氷炎剣が持つ特性である、氷を炎へと変換するという能力。

その能力が追加された氷の槍だったのだ。

つまり、氷炎剣を持ちながら【氷槍】を使うと、氷の槍が魔法剣から発射されて、着弾と同時に人を消し炭にするほどの炎へと変わるのだ。

これがなかなか面白い効果を発揮した。

普通に【氷槍】を使ったときと同じ氷の槍が飛んできているのだ。

つまり、フォンターナの魔法を使える騎士が手のひらから放つ【氷槍】と氷炎剣を使った【氷槍】は見かけ上、区別することができないということを意味する。

バルカ騎兵団からたくさん飛んでくる【氷槍】の中の一部が、氷炎剣による炎効果のあるものだったとしたらどうだろうか。

相手は飛んできた氷の槍を防ごうとしたら、実はそれが氷炎剣によるものであり、着弾と同時に炎へと変わってしまう。

すなわち、盾などで防ごうとしたら盾ごと燃やされてしまうのだ。

しかも、質が悪いことにひと目見てどれが炎に変わる氷の槍なのかは判別できない。

以前、飛行船から氷を落として燃やしたことも関係しているのだろう。

攻撃を受けたメメント軍の兵は炎に変わる【氷槍】を見て、恐慌状態に陥っていたのだ。

もはや、まともに防衛する落ち着きすら保てていなかった。

「そこまでだ。これ以上、貴様らの狼藉は許さぬぞ。アルス・フォン・バルカ、貴様はこの私自らが討ち取ってみせようぞ」

メメント軍の中を突っ切って、食料庫や倉庫などに氷槍を放ちながら放火していくバルカ騎兵団。

だが、いつまでもそれを見逃すほど相手も甘くはない。

ついに出てきたその男は他の誰をも圧倒する魔力量を持つ筋骨隆々な男だった。

【照明】の明かりと食料庫の燃える炎の明かりを受けてキラリと光る立派な鎧。

その鎧に相応しい美麗な装飾が施された西洋剣。

そんな装備を身につけた男こそ、おそらくはこの軍を任された当主級その人だろう。

「我が名はジーン・メン・ブラウン。メメント家にこの人ありと歌われる万夫不当の豪傑とは俺のことだ。メメント家に仇なす匹夫アルスよ。この俺が貴様を剣のサビにしてくれよう」

「タナトス、やれ」

「ウォオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!」

「な、なんだこのデカブツは……。くそっ!! お、重い……」

眼の前に現れて飛び出してきたジーン・メン・ブラウンなる男を見た瞬間、俺はタナトスに声をかけた。

ヴァルキリーの騎乗がそこまでうまいとは言えないタナトスだが、俺が声をかけた瞬間に即座に反応し、その背中から飛び降りた。

ズザザザザっと転げ落ちるようにしながら地面へと降り立ったタナトスが吠える。

そして、それと同時に魔法が発動した。

アトモスの戦士と呼ばれるタナトス。

その力は巨人へと変化することだった。

一瞬にして常人の3倍はあるかという巨体へと変化する。

鬼鎧という黒の防具を身につけたその姿が、そのまま大きくなる。

が、一番に目につくのはそんな大きなタナトスが頭上に振り上げた棍かもしれない。

これまた、巨大化したタナトスと同じように大きくなった如意竜棍。

それが5mはあるタナトスが頭の上に振り上げたと思った直後に振り下ろしたのだ。

わざわざ呑気に自己紹介してくれた万夫不当さんに対して。

だが、さすがに相手も当主級だ。

下手な城壁ならばその一撃で解体完了してしまうほどの威力があるはずのタナトスによる一撃を防いでみせたのだ。

その綺麗な剣をバーベルのように両手で支えて如意竜棍の攻撃を受け取ってしまった。

だが、それは悪手だ。

「バイト兄」

「おう」

事前にタナトスが攻撃するということを知っていた俺とバイト兄。

それがこんな好機を見逃すはずがない。

タナトスの攻撃を防ぐために足を止めて両手を使った相手の背後をとって攻撃態勢に入っていた。

バイト兄が雷鳴剣に【武装強化】を使った上に、過剰魔力を注ぎ雷撃の威力を底上げしながら攻撃した。

かつて、ウルクの当主級だったペッシに防がれたバイト兄の攻撃だが、そのときにはなかった【武装強化】のおかげか鎧ごとジーン・メン・ブラウンの背中を切ることに成功する。

グワッと声を上げて背中をのけぞらせるジーン。

そこへ俺がバイト兄に続いて攻撃を仕掛けていた。

ヴァルキリーに騎乗したまま聖剣グランバルカを振り下ろす。

こうして、俺は二人目の当主級を討ち取ったのだった。

「よし、メメント家の当主級ジーン・メン・ブラウンを討ち取った。目的達成だ。引き返すぞ!」

戦果は上々。

これ以上は無理をしない。

相手の当主級をうまくハメて倒したが、それでもここにはメメント家の騎士がたくさんいるのだ。

【鎌威太刀】などという物騒な攻撃魔法を使われるとヴァルキリーが負傷してしまう可能性がある。

未だ混乱中のメメント軍の内部を突っ切るように、自分の陣地へと帰還したのだった。

※ ※ ※

「やったな、アルス。やっぱりグランバルカはすごいな。あいつの鎧ごと真っ二つだったじゃねえか。俺もほしいぜ」

「残念だけど、こいつはやれないぞ、バイト兄。教会に奉納する予定になっているからな」

「ちぇっ、教会にそんな武器を置いといてどうするんだっての」

「まあ、そう言うなよ。聖剣ってだけでありがたがってくれるんだから有効活用しないとな。お、タナトスもおつかれさん。怪我はないか?」

「大丈夫だ、問題ない」

「そりゃよかった。けど、やっぱり【鎌威太刀】は厄介だな。こっちも何人も被害が出てるし」

「だけど、十分な戦果だろう、大将。相手の当主級をもうひとり討ったんだ。相手よりも圧倒的に少ない人数でな。いけるぞ、この戦い」

「ああ、そうだな、バルガス。けど、油断大敵だ。気を引き締めていこう」

奇襲によって一撃で相手の当主級を討ったおかげでなんとかバルカ騎兵団は陣地まで逃げ切ることに成功した。

陣地に入ってしまいさえすればとりあえず一安心だろう。

俺は被害状況を確認しながら、主だった面々と声を掛け合っていた。

そんなとき、帰還したばかりの騎兵団を押しのけるようにしてやってきたカイルによって、衝撃の報告がもたらされたのだった。

王を護送していたカルロスが死んだ、という報告を。