軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

守りのための攻撃

「よし、じゃあ行くか。準備はいいな、バイト兄、バルガス?」

「おう、準備万端だぜ、アルス」

「……なあ、大将。この前、守りに徹するとか言っていなかったか? なんでメメント家に奇襲をかける話になってるんだよ」

「そりゃあ、籠城するだけってのは性に合わないからな。たまにはこっちからもちょっかい掛けにいかないとだろ」

「そうだぞ、バルガス。アルスの言うとおりだ。戦は攻めてなんぼだろ」

「おいおい、バイトがこう言うのは想定内だがアルスまでそれに付き合うことないだろ。カルロス様たちが王を無事に送り届けるまでしっかりと守っていればいいじゃないか」

「いや、守ってばかりだと士気が保ちにくいという面もある。それにここの陣地に対峙するように陣取っているメメント軍は今も脅威だ。ただでさえこっちの数が少ないんだから、もう一つくらい戦果を上げて士気を高めるほうがいいと俺は思う」

「だけどな、大将。当主級のひとりを討ち取ったとはいえ、相手はまだ4人もの当主級がいるんだぞ? そんなところに奇襲を仕掛けるのか?」

「そうだ。むしろ相手に当主級が多いからこそ、奇襲じゃないと勝算がない。逆に言うと、バルカお得意の夜の騎兵団の奇襲なら戦果が上がると思っている」

「はぁ、わかったよ、大将。まあ、こないだまでと違って今はバイトもいるしな。騎兵だけの奇襲攻撃なら攻撃に失敗しても陣地に逃げ切ることもできるか」

「そういうことだ。じゃ、異論はなしってことでバルカ騎兵団、出撃するぞ。遅れるなよ」

「「おう」」

カルロスたちが王を護送してしばらくしたころ。

今もアインラッド砦の南部にある3つの陣地はメメント軍と睨み合っていた。

どうやら、大司教の尽力によって止まっていた三貴族同盟による話し合いが行われたことは間違いなく、それに伴ってメメント家はフォンターナへ差し向けた軍に停止命令を出したようだ。

だが、その軍は引き返していったりはしなかった。

陣地のさらに南部に仮設陣地を構築し、そこで逗留しているのだ。

こちらが得た情報によると、どうやら俺が当主級のひとりを討ち取ったことが関係しているらしい。

フォンターナに掣肘を加えるために派遣された軍が、フォンターナ領を見る前に一つの軍を任されていた当主級が討ち取られてしまったのだ。

これは軍を預かるものとしては大きな恥となってしまう、らしい。

このまま、おめおめと引き下がっていいものかとメメント軍内部で意見が紛糾したそうだ。

さすがに軍の指揮を任された当主級たる実力者たちはなにもせずに帰るという選択肢を持ち合わせていなかった。

が、かといってメメント家本部が他の三貴族同盟と会談を行い、外交でどこが覇権貴族にふさわしいかを話し合っている最中でもある。

その政治的な意味を推し量ることができるものであれば、メメント家本部から出された軍事行動の一時停止という命令を無視するわけにもいかない。

というのに、それに真っ向から反対する者もいたようだ。

一人の当主級は今もフォンターナの陣地に攻め入って攻略するべし、と息巻いているようだ。

本部の意向を無視した行動を認めるわけにもいかないが、かと言って無理にそいつを止める必要もない。

ほかの当主級はそう考えたようだ。

なぜそんな曖昧な対応になっているのかといえば、それはフォンターナを目指してきた軍が複数の指揮官によってそれぞれ率いられている5つの軍だったからだ。

しかも、メメント家の当主級といえどもメメント家の当主の家系に連なる者たちではなかった。

要するに、残った4人の当主級はそれぞれがメメント家という組織の中で出世争いをしているライバル同士だったのだ。

強硬派のひとりが命令を無視してフォンターナを攻撃した場合、それが成功すればすぐさま後を追い自分たちも手柄を立てる。

もしも、攻撃に失敗した場合は本部からの命令無視をしたとして責任を追及し、自分たちはそんなことはしなかったと言い張る気なのだ。

つまり、当主級がすでにひとり討ち取られた今になってもメメント家はお互いが連携することなく、バラバラに行動していたのだ。

この状況下であれば奇襲が通じるかもしれない。

俺はそう考えた。

狙うのは強硬派の当主級がいる軍だ。

夜、真っ暗になる日を狙って騎兵団で奇襲を仕掛ける。

相手がバラバラにしか行動できないのであれば、すぐさま他の軍が対処することも難しいだろう。

それに何より、メメント家の魔法は守るのに適していない。

遠距離攻撃として真空の刃を放つことができる【鎌威太刀】は味方をも攻撃する諸刃の剣となり得る。

それに上位魔法の【竜巻】にしてもそうだろう。

陣地を奇襲された当主級が相手を攻撃しようと【竜巻】を放ったら自分の陣地を味方ごと吹き飛ばすことになってしまう。

メメント家の魔法は相手を攻めるには強いが、守るには不向きなのだ。

正直なところ、俺としては相手の強硬派が主張するように4人の当主級がメメント家本部の命令を無視して陣地に【竜巻】を使ってこられたほうが怖かった。

だが、時間が経過するほど相手がそれをする可能性が上がる。

だからこそ、奇襲作戦を行うことにした。

こうして、今度は35000以上いるメメント軍に対して700騎ほどの騎兵団で突撃を仕掛けることになったのだった。