軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新魔法剣

「いいでござるか、アルス殿。これから拙者が研究した炎鉱石についてを話すでござる」

「炎鉱石についてか。九尾剣の素材だって言っていたのに武器にするには軟らかかったんだよな。なにかわかったのか?」

「炎鉱石の硬度について新しい発見があったのでござる。それはアルス殿の持つ既存の九尾剣にあったのでござる。九尾剣の方が炎鉱石に含まれる不純物が少ないのではないかということでござるよ、アルス殿」

「不純物? 狐谷でとってきた炎鉱石には不純物が多く含まれていたのか」

「もしかしたら、一度九尾の狐が体内に取り込んだ炎鉱石を九尾剣の素材としたのが関係あるのかもしれないのでござる。とにかく、同じ炎鉱石という素材でも採掘しただけのものでは、そのままでは武器としては使い物にならなかったのでござるよ」

「なるほど。そういうこともあるかもしれないな。じゃあ、その不純物を取り除くことが重要になるってことだよな。それはできたのか、グラン?」

「まだでござる。事前に試した感じでは不純物を取り除くには極端な温度差が必要なのではないかと拙者はにらんでいるのでござる。それを今から拙者とアルス殿で行うのでござるよ」

「温度の差、か……。もしかして、炎鉱石に焼入れでもしようっていうのか、グラン?」

「そのとおりでござるよ、アルス殿。拙者が作った炎高炉によって超高温で炎鉱石を熱し、アルス殿が冷やすのでござる。フォンターナ家の当主級だけが使えるという氷精の力を使って」

「おまえ、俺に氷水でも作ってろって言いたいのかよ」

「そのとおりでござる。おそらくは超高温で熱した炎鉱石は普通の水では一瞬で蒸発してしまうのでござる。それを氷精の力を使って、なんとか冷やし続けておいてほしいのでござるよ」

「貴族家の上位魔法をそんなことに使おうって考えるのはお前くらいだろうな、グラン。ただまあ、言いたいことは理解した。さっそくやろうか」

「では、アルス殿はここで、この水を冷やしておいてほしいのでござる。そう、氷精は水の中にいれたままで。その間、拙者は火入れするのでござるよ」

そういって、グランが炎高炉に取り付けた小さな扉を開けて魔石を投入する。

どうやらそこから魔石が内部の炎鉱石とつながるようになっていて、炎高炉に使用されている炎鉱石に魔力を供給するようだ。

普通ならば炉の内部に空気を送らなければ火の勢いは上がらないだろう。

以前、初めてグランと一緒に炉を作り、カイルにふいご踏みを手伝わせたことを思い出した。

だが、今回グランが作った炎高炉にはふいごは必要ないようだ。

魔力に反応して高熱の炎を吹き出すという炎鉱石の特性によるものなのだろうか。

俺も従来の火をつけた炉の前にいたことがあるが、それよりも明らかに周囲の温度が高い。

いったい炎高炉の内部は何度くらいになっているのだろうかと思ってしまう。

そして、その燃え盛る炎高炉の中に焼入れをしたい素材としての炎鉱石を入れる。

超高温状態で熱せられていく炎鉱石。

俺も汗だくになりながらそれを見ていると、その炎鉱石からドロリとしたなにかが溶け出していた。

横目でグランの顔を見ると、まだ炎鉱石をしっかりと見つめている。

とすると、あの溶け出したのが採掘した炎鉱石に含まれていた不純物なのだろうかと推測する。

そして、ある程度時間が経過したところでグランは炎鉱石を取り出した。

それを金床の上において愛用の槌で叩いて伸ばしていく。

カンカンと甲高い音が響き渡る。

ある程度叩いたら再び炎高炉内に戻して再び熱して再度叩く。

そんな作業を数回繰り返していた。

グランの動きは非常に洗練されていた。

見ているだけだとただ叩いているだけに見えるが、おそらくはムラがないようにまんべんなく叩きながらも形を整えているのだろう。

そして、そのまま剣の形にまでしてしまうようだった。

標準的な剣の形に整えて、いよいよ焼入れの作業に入った。

グランの横に設置していた水の入った容器。

それを俺はずっと【氷精召喚】で呼び出した青く光る丸い玉のような氷精によって冷やしていたのだ。

そこにグランが剣の形にした炎鉱石をつける。

一瞬にして大量の蒸気が立ち上る。

というか、怖い。

あまりにも超高温の金属を水の中に入れたのだ。

一瞬で水が沸点に達して火山の噴火のように飛んでくるのではないかと思った。

だが、そうはならなかったようだ。

氷精の力だ。

水を冷やしていた氷精が急上昇するはずの水の温度を抑えてくれたのだ。

蒸気が出たのは最初の一瞬だけだった。

その蒸気が宙へと消えるとあとには冷水で冷やされている炎鉱石があった。

だが、その様子がおかしかった。

炎鉱石に異変が生じる。

水につけられていた剣の形をした金属の色が変化していたのだ。

最初は超高温で熱していたためマグマのように真っ赤だった金属が、氷精により冷やされた冷水の中で青く変わっていく。

しかし、青色になってきたかと思うとすぐまた赤く戻っていき、そして再び青くなる。

そんなふうに赤と青を何度も行ったり来たりしながらゆっくりと色の変化が落ち着いてくる。

「おい、グラン。お前、こうなることを予想していたのか?」

「いや、これは拙者も予想外でござるよ、アルス殿。驚きでござる。びっくりでござるよ」

色の変化が完全に止まった。

そこで水の中から剣を引き上げるグラン。

そこにはなんとも妖艶な輝きを放つ薄い紫色の剣が出来上がっていたのだった。

「アルス殿、使ってみるでござるか? この新しい剣を」

「怖えな。なにが起きたのかさっぱりわからないからすごく怖いぞ、グラン。でも、面白そうだ」

そう言って、俺はグランの手によって剣を受け取る。

先程まで炎高炉で超高温まで熱せられていたはずの金属だが、今はひやりとする金属独特の感触がする。

今までグランが作ってきた一般的な西洋剣のような形をしており取り回ししやすい感じだ。

グランが用意していた柄を新しい剣にはめ込む。

俺はそれを持ったまま、試し切り用に置いてある丸太のところまで移動した。

その丸太に向かって剣を振る。

切れ味は聖剣グランバルカのほうがいい、がそれはいいっこなしだろう。

だが、当初の問題だった炎鉱石の軟らかさという欠点は解消されていた。

丸太を切ったあとの剣身には傷一つ無く、歪みもなく、何度でも丸太を切っても大丈夫そうだったからだ。

一応武器としての炎鉱石の利用はこれで十分ではないかと思う。

が、やはり問題はそれだけではなかった。

この剣で一番重要になるのは魔力を通したときのことだろう。

普通に考えれば炎鉱石を使った剣なのだから九尾剣のように炎の剣が出るのではないかと思う。

しかし、焼入れをしたときの光景を見て、そうはならないだろうという予感がしていた。

どうなるのだろうか。

おそるおそる、新型剣に魔力を通す。

「な、なんだこりゃ? 氷か? 氷精剣になった、のか……?」

だが、驚いたことに魔力を通すと剣身から現れたのは氷だった。

フォンターナ家が持つ氷精剣。

魔力を注ぐと氷の刃が伸びる魔法剣。

それと同じように新型剣からは氷の剣が伸びていたのだ。

しかし、それは氷精剣とは全く別物だった。

「おお、すごいぞ、グラン。氷の剣で丸太を切ったら丸太が凍ってから燃えたんだけど……。なんだこりゃ?」

「……どうやら、氷の剣で斬りつけると一度凍らせてから燃えるようでござるな、アルス殿。この剣は氷精剣の特徴と、九尾剣の特徴を持つ全く新しい魔法剣になったようでござる」

「氷と炎の特性を併せ持つ魔法剣か。さしずめ、氷炎剣とでもいった感じかな」

「いいでござるな、アルス殿。拙者とアルス殿の二人で作った剣ということで氷炎剣グランドアルスというのはどうでござろうか」

「な、なんか自分の名前が使われているっていうのはこっ恥ずかしいな。まあ、グランがそれがいいって言うならそうしようか」

試し切り用の丸太は新たな魔法剣によって切りつけられると一度その表面が凍った。

丸太全体を氷が覆い尽くしたのだ。

そして、次の瞬間、その氷が炎へと変わった。

理屈はさっぱりとわからないが、氷そのものが炎へと変換されているのではないかと思う。

こうして、俺は新たな魔法剣である氷炎剣グランドアルスを手に入れたのだった。