軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アルフォンス・バルカライン

現実に存在している神アイシャ。

その神の存在は聖光教会により、西方ではだれもが認知していた。

六歳になった子どもは例外なく洗礼式を受けて生活魔法という生きていくうえでこれ以上ないほどに便利な魔法を授けてくれるのだ。

神の御業として行われるそれがなによりも神の存在を身近に感じ、しかも、その神と同じ現身をしているのがアイだ。

つまりは西に住む一般人にとってみれば、ほとんどの人が神に信仰心をささげている。

そして、それを体現している身近な存在としてアイがいるというわけだ。

神という存在を信じているが、それはあったこともない存在であり、ごく普通の人間にとっては身近なアイこそが信仰をささげる相手になっていたということなのだろう。

その信仰心が忠誠と同じものだと忠誠紋が認識したことで、アイは絶大な魔力を得ることになった。

もちろん、忠誠紋により全員が忠誠の証として紋章が手の甲に浮かび上がったわけではない。

が、それでも全国各地で行ったことで母数の桁がオリエント国とは比べ物にならない。

そして、それはおそらくは今後も変わらないだろう。

ゆえに、ほぼ無限の魔力を今後も手にすることができる。

そのアイの魔力を利用して、俺が皇帝になる。

だが、小さな魔道具を一つひとつ便利で長年使えるものにしたところで、俺の名が挙がることはないだろう。

できれば、一目で誰の目にも分かるものとして、作り上げたい。

「ってなると、やっぱりあれを作るのが一番いいかな?」

「あれとは何でしょうか、アルフォンス様?」

「列車だよ、アイ。今まで俺たちは氾濫防止のために川の工事をしてきて、その川を運搬に使ってきた。けど、そろそろ陸路も開拓していこう。そのための列車を作って、それに俺の名前を付けるってのはどうかな? 魔導鉄船と対をなす、魔導列車って感じにして、そうだな、アルフォンス・バルカラインってふうにでも名をつけてみるとか」

「それはいいかもしれませんね。アルフォンス様に忠誠を誓い、帝国内に組み込まれた土地は魔導列車で行き来できるようになる、とすれば忠誠を誓う際の利益として映るでしょう」

東方では列車というものはまだない。

アルス兄さんによってもたらされた魔法の中に【線路敷設】というものがあるにもかかわらずだ。

【線路敷設】は硬化レンガで線路が一瞬で作れるのだが、それはあくまでも線路だけだ。

その上を走るものは自前で用意しなければならない。

そして、列車と呼べるようなものがなければ、たいていの者は馬などの動物に車を引かせるようにしようと考える。

だが、線路は意外ときちんと引くのが難しかったりする。

まっすぐな線として、最初から高低差までもを計算して作らないといけないからだ。

ぶっちゃけめんどくさい。

それならば、【道路敷設】のほうがはるかに簡単で使いやすい道ができるから、ということでそれほど線路が活用されていないのだ。

また、動物を使うというのも疲労や食料、排便の兼ね合いで意外と大変だったりするからな。

だが、動物によって車輪を付けた乗り物を運ぶだけのものよりも、動力機関をつけた列車ならば効率ははるかに良くなる。

多少の高低差をものともせずに、大量の重い荷物も、たくさんの人も乗せて走れる列車を作ろう。

その材料は魔導鉄船のように鉄製にしてみようか。

鉄は錬銀術に必要な材料として集めているが、錆防止の魔法陣が開発されたことで、耐用年数がかなり高い便利な素材となっているからな。

一度作れば、かなり長い期間運用していくことができるはずだ。

それに、地面の上を圧倒的な存在感で走る魔導列車は、見る者に衝撃を与えられるはずだ。

その列車の名前に俺の名を冠する。

ほかの国では作れない、俺だけのものだ。

神への信仰心が忠誠紋に利用できたように、列車に対するあこがれや尊敬、畏怖の心が忠誠の基盤となったりする、かもしれない。

まあ、ぶっちゃけそうならなくても問題はないのだけれど。

俺の魔力は忠誠紋を介さずとも、いずれ増えていくのは間違いないし。

魔法の発生起点の一つとして、東方で名付けされた者が増えれば必ず魔力量は増大するからだ。

なので、これはある意味小国各地の権力者に対しての示威行為とも言えるかもしれない。

お前らでは作れない圧倒的なものをこちらは作れるのだと、主張できる一品だろう。

「最初はオリエント国や新バルカ街と一直線にぺリア国やグルーガリア国、イーリス国をつなぐ線路にするか。けど、後々はぐるっと一周してつなげたりもしてみたいね。環状線とでもいう感じにして、利便性をあげたい」

「列車の駆動に精霊石も用いるということであれば、運行時間に制約がなくなりますね。動物ではどうしても休む時間が必要になりますが、夜を徹して走ることができるでしょう」

「そうだね。じゃ、さっそく作っていこうか。見る者を驚かせる、大地を走る圧倒的な魔導列車を作り上げよう」

こうして、帝国を目指した最初の一歩として俺はアルフォンス・バルカラインの建造に着手したのだった。