軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

線路の通り道

「それで、そのアルフォンス・バルカラインという魔導列車を拙者が作ればよいのでござるか?」

「うん。頼めるか、ガリウス?」

「もちろんでござるよ。このバルカ製鉄所には炎鉱石を用いて作った最上級の炉によって、日々質の高いバルカ鋼が作られているのでござるからな。それを用いて、誰もが驚嘆する乗り物を作って見せるでござるよ」

「よろしくな。一応、基幹部分の設計は渡しておく。これをもとに走らせるけど、当面の間は貨物用が主で、いずれは人を乗せて走る魔導列車にするつもりだから」

「人を乗せるでござるか。そうなると、快適性も必要でござるな。もしも、揺れるようなことがあれば長時間乗るのは大変かもしれないでござるし、これは意外と研究を重ねる必要があるかもしれないでござるよ」

「うん。ただ、実用化させるだけならそこまでしなくていいだろ。とにかく最初は陸路で物資を運ぶのに使うことになるから、重要なのは外観ってことになると思う。見た目が格好良くて見る人が『すごい』って感じるようなのにしてほしいんだ」

「分かったでござるよ、アルフォンス殿。拙者、こう見えてさまざまなものづくりに関わってきているでござるからな。全力で見た者が全員感動する魔導列車を作って見せるでござるよ」

魔導列車の造形などについて、俺はガリウスに丸投げした。

先頭部分が駆動車両となっており、その後ろからは連結した車両が引っ張られるものとなる。

俺が生まれた場所でもあるバルカラインではすでにその形式のものが作られており、実際に運用されていた。

が、最初は結構苦労したらしい。

機関部は精霊石で作られている。

魔装兵器などのようにその精霊石には魔法陣が組み込まれていて、魔力を注ぐと硬化レンガでできた部品が現れるのだ。

そして、それを使用者の任意で操ることができる。

が、意外とその操作は慣れが必要だったそうだ。

後ろに連結した車両の数。

それによって、列車の総重量は変動する。

さらに、地形の傾斜や状況によっても、どのくらいの強さで機関部を動かせば列車の速度が出るのか、かなりの経験がないと分からないのだ。

俺もそうだった。

魔導鉄船の試作品を作ったときには速度超過でグルー川の上で何度も横転してしまったしな。

だが、今回作るアルフォンス・バルカラインではそれらの心配はほとんどいらない。

全て制御装置がやってくれるからだ。

操縦者の魔力を必要とせず、速度調整なども自動でできる。

それはなんと言ってもその制御にアイの魔法陣が使われていることが大きい。

教会で配っている腕輪のように、運行中の列車の位置を常時把握できるから速度の計算などもお手の物だしな。

なので、ガリウスの仕事は本当に外観にこだわるだけで十分だった。

「しかし、大丈夫なのでござるかな?」

「ん? なにが心配なんだ、ガリウス?」

「いや、アルフォンス殿ならもちろん承知しているでござろうが、これから作るその魔導列車アルフォンス・バルカラインというのは非常にすばらしいものでござろう? それは見た者がだれでも分かるはずでござる。であれば、不届き者が現れないとも限らないでござるよ」

「たしかにそれが一番問題なんだよな。だから、線路を引けるのはこっちの影響力が及ぶ範囲内ってことになっちゃうし」

河川を用いた運送以外に、陸路でも物資を運ぶことができるようになる。

それは非常に素晴らしいことだ。

が、それ故に問題がある。

ガリウスのように列車が狙われることも考えないといけないのだ。

魔導列車そのものも貴重だし、積んでいる荷物も奪われるわけにはいかない。

それに気になるのは他にもある。

列車の運行の邪魔になるかもしれない物が線路上に置かれたりした場合だろうか。

線路の上を車輪が走るという構造上、どうしても足元が弱点となりえるのだ。

なので、線路の上に木が横倒しにでもなっていれば、簡単に脱線してしまうだろう。

これはわざとでなくても起こる事態だと思う。

というのも、線路なんてほとんどの人は見たことがないのだから。

地面の上に平行に並ぶ石の線。

それがどれほど重要な物か現状で理解しているものはほとんどいない。

なので、それにたいして何かをしたとして、どういうことが起きるかなんて想像もできないだろう。

そう考えると、魔導列車というのは意外と扱いづらいものでもあるかもしれない。

「最初は新バルカ街とオリエント国、それとこのバルカ製鉄所をつなげる線路からだろうな。その地域ならこっちの目が行き届いているし。でも、それ以上に線路を延ばす場合は、もしかしたら地上以外を走らせることになるかもしれない」

「地上以外でござるか? どういうことでござるか、アルフォンス殿? 【線路敷設】は地面の上で発動する魔法のはず。であれば、地上以外に線路を引くことはできないのではござらんか?」

「最近ラッセンが【地質調査】っていう魔法を作ることに成功したんだよ。で、次は新しい魔法開発に着手することになってね。地面を掘る魔法を作ることになったから、それを利用して地下に横穴を作って線路を通せないかと思ってたりするんだよね。地下線路ならそういう影響を多少減らせるだろうし」

「ほほう。ラッセン殿が魔法を……。それに【地質調査】でござるか。それだけでも面白うござるが、さらに新しいものをでござるか。地下に線路を通して魔導列車を走らせる。いやはや、なんとも夢の広がる話でござるな」

「だろ?」

魔力が使いたい放題になった。

それにより、魔石を使っての魔力補給も行いやすくなったのだ。

で、その潤沢な魔力を利用してラッセンがひたすら「地質調査」とつぶやいて魔術を発動し続け、魔法の開発に成功した。

地面の下の構造を把握できる【地質調査】があれば、さらに鉱石なども手に入りやすくなるだろう。

そして、その先の坑道掘りの魔法なんてものもあればさらにいい。

こうして、魔導列車アルフォンス・バルカラインは将来的には地下での運行も見据えて開発されることになったのだった。