軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

分かれた理由

「うさ耳ピョンピョン」

それぞれの赤の騎兵に分かれてついていく傭兵たち。

その傭兵が魔法を発動した。

【うさ耳ピョンピョン】だ。

ゼンの奥さんの妹で、俺の妻予定のユーリが作り出した魔法。

頭に兎の耳が、お尻には尻尾が生えるのが特徴ではあるが、もちろんそれだけではない。

身体能力も劇的に上がる便利な魔法だ。

それを傭兵たちが使うことで、身に着けていた鎧にも変化が現れた。

体に変化をもたらす獣化の魔法だが、これまでは唯一の欠点が存在していた。

それは兜や鎧などで金属製の防具を使用していると、その体の変化がものすごく邪魔になるのだ。

固い金属の鎧の中で、頭からぴょこんと立つようなうさ耳が出てきたらどうなるか。

それは、これまでにも何回も話を聞いたので俺もよく知っている。

どうやら、あのうさ耳にはしっかりと痛覚もあるようだ。

まあ、そうじゃないと聴覚がよくなるなんてこともないだろうからしかたがないのだろうけれど、それでも鎧の中で押しつぶされることになるうさ耳は結構な痛みを伴うらしい。

そんなわけで、これまでは【うさ耳ピョンピョン】や【にゃんにゃん】といった身体変化がみられる魔法を使う者は、防具を付けないか、帽子などの防御力の弱いものに限られていたのだ。

それが、今では違っている。

魔法陣技術の本場であるブリリア魔導国のヴァンデンブルグ家からは本当にいいものをもらうことができた。

【自動調整】の魔法陣によって、それが描きこまれた金属鎧は獣化する際の変化にも柔軟に対応することができたのだ。

バルカ傭兵団で揃えられた赤の金属鎧が、【うさ耳ピョンピョン】を発動したことで変化する。

頭のうさ耳に合わせるように伸びたのだ。

これはうさ耳も猫耳も頭の同じような位置から飛び出すことが分かっていたので、金属が耳を完全に包み込むように伸びるのではなく、獣耳の前面は隙間が空くように作られている。

おかげで、飛び出たうさ耳が痛むこともなく、音を聞くのを遮ることもなく、後方からの攻撃は防ぎやすくなっている。

もちろん、お尻の尻尾も金属の形がそれにあわせて変化してくれている。

こうして、戦場に突如赤い兎の耳をした金属鎧の集団が現れることとなった。

それが、六つの赤の騎兵について移動する。

聴力だけではなく、走力も向上されていて、ヴァルキリー型となった鮮血兵ノルンについて走り続ける。

「逃すな。落ち着いて、赤い馬を攻撃しろ。少数がばらけたのだから、各個殲滅するんだ」

こちらの動きを見て、ぺリア軍の指揮官らしき男がそう叫ぶ。

まあ、それは確かにそうだろう。

こっちはもともと千五百ほどの傭兵を連れてここまできていたのだ。

それが、教会を救うために攻撃中の軍を背後から襲った。

そのために、俺のそばにいた兵数は減っていたのだ。

それをあえて分散させるのは、普通に考えれば愚の骨頂だろう。

圧倒的な差の数の前には多少強い程度では押しつぶされてしまうからだ。

だが、俺はあえてその危険な選択をした。

それには当然、理由がある。

というのも、そばにヘイル・ミディアムらのグルーガリア兵がいたからだ。

彼らは俺たちバルカ傭兵団がぺリア国に来るまでの途中で合流してきた援軍だ。

だが、もともとこちらは援軍など頼んでいない。

ヘイルが教会襲撃の情報を得たと言って、独自の判断でやってきたのだ。

その狙いは、おそらくはバルカ教会での評価だろう。

高い評価を得ることで、エンを貸す特権を手に入れる。

そのために、押し掛け援軍として来たのだと俺はこれまで考えていた。

が、はたしてそれは本当だろうか。

もしかしたら、別の狙いがあるのかもしれない。

ヘイルの狙いがぺリア国と同じだと考えるのは、不自然ではないと思う。

教会を攻撃するぺリア軍を攻撃するバルカ傭兵団。

その中に、普段オリエント国を離れない俺がいる。

俺のそばにいた副官のエルビスは目の前のエサにつられて突撃したために離れており、俺のそばには俺を守る兵が減ることとなった。

そして、そんな状況で、攻撃をしているこちらの後ろから大軍のぺリア軍が押し寄せてくる。

後ろから急に攻撃されたとき、どうするだろうか。

とっさにとる行動としては、やはり守りの行動ではないだろうか。

となれば、一番考えられるのは【壁建築】によって壁を出現させて、身を守ること。

それは先ほどヘイルたちから弓の攻撃を受けて壁を作ったぺリア軍も行った行動だ。

多分、ほとんどの人が同じような対処になる。

【流星】などの超強力な一撃を与える攻撃手段がなければ、【壁建築】の守りはものすごく頼りがいがある。

が、それが油断にもつながるかもしれない。

目の前を守る壁を作り出したことで、ほっと一息ついてしまう。

その隙をつかれたら、多分攻撃を避けることはできないだろう。

だれが、その隙をつくのか。

当然、後ろから近付いてきた真打のぺリア軍ではない。

俺のそばにいて、一緒に弓を射ていたヘイルやそのほかのグルーガリア兵たち。

守りの壁のこちら側、俺たちと同じ位置にいる者からの攻撃がこの場合、一番危険だった。

だからこそ、俺は壁を作るのではなく【黒死蝶】を発動した。

周囲一帯を黒い蝶で覆うことで、敵味方ともにこちらの状況を把握できなくさせる。

それはぺリア軍への対処でもあり、同時にそばにいたヘイルたちへの対処でもあった。

「くそ。どれがあの小僧だ?」

「わ、分かりません、ヘイル殿。どういたしましょうか」

「っち。かまわん。赤い騎兵を全部狙え」

「承知」

どうやら、とっさに取った行動は正解だったようだ。

ヘイルたちは味方じゃなかったみたいだな。

この感じだと、最初からぺリア国と共謀していたのか。

ま、それならそれでいい。

グルーガリアの弓兵から鋭い矢の攻撃を受けながらも、赤い騎兵とそれに付き従ううさ耳傭兵たちは走り続ける。

もちろん、逃げるわけではない。

六つに分かれて走る俺たちは、ぺリア軍の周りを守るように走りながらも、弓の攻撃を受けてからは急激にその走る方向を変えて、ぺリア軍の中央へ向かって突撃を敢行したのだった。