軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

裏の裏の裏

赤の騎兵とそれに付き従う八十ほどのうさ耳を生やした傭兵たち。

それが六組、別々の方向からぺリア軍へと突撃を敢行した。

ヴァルキリー並みの走力で走る騎兵が馬上突撃槍を攻撃に用いてぺリア軍に穴を開け、そこに走力のあるうさ耳傭兵が突入して前に進む。

勢いよく突破を図る傭兵部隊の勢いは止まらない。

どうやら、一人ひとりの兵の質でこちらがかなり上回っているのだろう。

毎日の厳しい訓練だけではない。

お腹いっぱいに食事を食べられる新バルカ街の生活水準はぺリア国をはじめとして、ほかの小国をはるかに超えているからな。

しっかりとした食事をし、【瞑想】を使って体を休め、そして訓練を行う。

そのほかにも、【いただきます】という魔法の効果が大きいのかもしれない。

【瞑想】などはほかの国でも使える者が多数いるが、俺が開発した【いただきます】は他国で使える者はいないからだ。

食事から効率的に魔力を得ることで、身体機能と魔力量に違いが生じている。

そして、【見稽古】の効果ももちろんあるだろう。

武器を振るって突撃をかけるというだけでも、その全員が剣と盾の使い手として達人級の腕前を持っている。

バルカ鋼による鎧をまとい、盾でも身を守りながらも攻撃を仕掛ける傭兵たちをぺリア軍の兵では止められなかった。

しかし、そこへ矢が放たれる。

ヘイルたち、グルーガリア弓兵からの攻撃だ。

正確無比かつ高威力な射撃が常にこちらを狙ってきている。

が、それは逆に言えば正確すぎる攻撃でもあった。

グルーガリア弓兵がいる場所は分かっている。

なぜなら、ついさっきまでそこには俺たちがいたからだ。

なので、そこから赤い騎兵を狙う際の直線上には常にぺリア軍の兵がいるように調整しながら移動を行う。

ぺリア軍への攻撃を行い、中央に向けて突破を図りつつ、後方から飛んでくる矢に当たらないように常に最善の位置取りを行う。

今は、弓兵たちの相手はできない。

ならば、それを利用してしまおうという考えだ。

正確に狙ってきているといっても、その途中に割り込むようにしてぺリア軍がいるおかげで、ほとんどの矢は騎兵に当たらずにぺリア兵へと当たっていた。

おかげで、矢が近くに飛んできたぺリア兵もグルーガリア弓兵に意識を裂かざるを得ない。

なんといっても、バルカ教会を攻撃していたもう一つのぺリア軍をついさっきまで攻撃していた相手だからな。

無視していい相手ではないとどうしても思ってしまう。

こうして、グルーガリア弓兵の攻撃を援護射撃として活用しつつ、徐々にぺリア軍内部へと押し入る。

だが、いくら小細工を行おうとも限界があった。

数十人程度の小勢で五千を数えようかという軍に攻撃を仕掛けても、それが成功するはずなどない。

目の前に人の壁ができることで、どうしても勢いが落ちてしまうからだ。

足が止まれば、囲まれて叩き潰される。

そこで俺が孤軍奮闘しようとすれば、六つに分かれた隊のどれに俺がいるのかがわかってしまうことになる。

だからこそ、位置が特定されるのであれば、それに見合うだけの戦果が求められる。

ここからそんな戦果を狙うにはこの五千の軍の総指揮をとっている者を倒すしかない。

それができなくとも、一時的にでもいいから混乱させないと離脱すら不可能だろう。

「無駄だ。ぺリア国を舐めるなよ。こちらにはオリエント国とは違い、名家が揃っているのだよ」

徐々に、しかし確実に俺たちの進みが遅くなっていた。

それを見て、こちらの狙いの総指揮をとっている男がそう叫んだ。

たしかに、いかに小国であろうとも代々血をつないできた貴族のような連中がぺリア国にもいるのだ。

実際、【黒死蝶】の使い手はぺリア国にいたわけだしな。

そこらの普通の兵ではバルカ傭兵団の面々には質では敵わない。

が、その傭兵たちであっても歴史ある家の出身の者と比べるとどうしても格が落ちるのは否めなかった。

けっして剣の技量では負けないものの、魔力の量が違う。

それはすなわち肉体的な強さにもつながっており、力負けしてしまうのだ。

技術で勝っていても力が負けていれば勝つことは難しくなってしまう。

ぺリア軍中央からこちらにあわせて六つに分かれた騎士たちが迎撃に当たってきた。

一人で何人もの相手をする傭兵たちであっても、騎士が相手では押し負ける。

そうして、こちらの足が止まってしまった。

ぺリア軍の内部で動きが止められた小部隊。

散らばったそれぞれの隊の動きを突破を図りながらも見ていた俺は、覚悟を決めて自分の居場所がバレたとしても全力を出すべきだと判断した。

【流星】を使った際の疲労が少しは回復している。

ここまでは血の鎧を使って動いていたからだ。

自分の体を成人男性が着ているような大きさの血の鎧で覆い、それを俺の意志ではなくノルンが動かしていたのだ。

それにより、少しだが休息を取れたことで体力が戻ってきている。

その体力を再び使い切る勢いで敵本陣まで突破を試みようと考えた瞬間、場が動いた。

「……来たか」

教会を攻撃していたぺリア軍を後方から攻撃したバルカ傭兵団。

そのバルカ傭兵団をさらに後方から襲ってきたぺリア軍本隊。

そして、そのさらに後方から別の軍が登場したのだ。

そいつらが俺に意識を集中させきっていたぺリア軍本隊に攻撃を仕掛けたことで、周囲に動揺が走った。

それは【にゃんにゃん】を用いて猫耳を生やした軍だった。

バルカ傭兵団でもぺリア軍でも、もちろんグルーガリア軍でもない。

本来、俺たちと途中で合流し、物資を補給する役割だったパージ街の軍がこの場に現れ、ぺリア軍へと攻撃を開始したのだ。

「全員、突撃しろ。今が好機だ」

敵の背後をついて絶対的な優位を得た状態で攻撃を行う。

そう考えていたぺリア軍がまさかの攻撃を受けたことで、動きが乱れた。

今だ。

ここで決める。

分かれた各部隊に指示を飛ばし、【慈愛の炎】によって体内に灯っている炎に魔力を注ぐ。

それにより、さらに身体機能が向上した。

ありったけの魔力を込めて、行く手を阻む騎士たちに攻撃を仕掛ける傭兵たち。

それを見て、俺もワルキューレの腹を蹴り、再度ぺリア軍中央に向かって加速していったのだった。