軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動力鉄板船

「おっそ。結局、こんなかんじになっちゃうんだな」

「それはアルフォンス殿が速度を異常なほど出していたからでござるよ。拙者などからすればこれでも十分速いと感じるのでござるよ。なにせ、川の流れに逆らってこれだけの速度で走っているのでござるからな」

「とか言って、ガリウスももっと変わった船を作りたかったんじゃないの? 周りから言われて実用化には無難な形にすることになったけどさ」

「たしかにそのとおりでござる。拙者の中ではもっと面白いと感じる形の船がいくらでもあるのでござるが、なかなか受け入れられないのかもしれないでござるな」

「でも、確かオリエント国にはもともとそういう船があったでしょ? 確か、一回だけ乗ったことがあるよ。流れに関係なく進む魔法の船にさ」

「ふむ。あれは特別製で一艘しかないでござるからな。なにせ、迷宮産の船でござるから、量産できないのでござる。それにたいしてこの動力船は数を増やせるからこそ、作りやすく整備しやすいものにということでこうなったのでござるよ」

何度も何度も試作動力船を転覆させ続け、その情報からガリウスが作り、実用化した動力船。

それはかなり無難な物になった。

ものすごく大きいわけでもなければ、速度がすごく出るわけでもない。

ただ、動力がついて川の流れに逆らって進むことができるという点がほかでは見られないというだけだった。

職人たちはもっと奇抜な船を作りたがったが、商売などでも船を使いたいというクリスティナなどから現実的に使いやすいものを作ってほしいと言われてしまったのだ。

というのも、この動力船を開発したのが小国家群だというのが大きく関係している。

この地は九頭竜平野などとも呼ばれて、多数の川があり、しかも、それらは頻繁に氾濫する。

そのなかには大きい川もあれば、そうではないものもあるのだ。

オリエント国の都市国家に近い位置にあるグルー川での運用が基本となるが、そこから支流を通ってほかの川にまで行こうと思えば、あまりに大きな船では使いにくかったというのが理由だ。

そのため、各地の大きめの川でも運用可能なようにと考えた結果、無難な大きさのものとなったのだ。

そして、速度もあまり出せないようになっている。

この動力船が貴重だというのが理由だ。

俺は何度も船を転覆させたが、その時に一番気を付けていたのが沈んでいく船から動力機構型魔道具だけはなんとしても回収するということだった。

たとえ、船がすべて川の底に沈みながらどこかに流れていったとしても動力部分だけは絶対に無くしてはならない。

なぜならば、ほかでは手に入らないからだ。

が、やっぱりそれは普段使いするには大変すぎるだろう。

水の流れがある場所で水の中に潜って目的の物を見つけて拾うのは労力がかかりすぎる。

だったら、最初から船が沈まないようにすべしということになった。

なので、無理に高速船を作ろうとはしない方向になった。

そのかわり、荷物を積んでもある程度動けるようにという船づくりがすすめられた。

ちなみに、俺が発案の鉄の船というのはちょっと微妙な状態で完成となった。

というのも、船の基本は木で作られることになったからだ。

かわりに、船体を覆うように薄い鉄板を使うことになった。

見た目だけなら鉄の船だけど、中身は木だということだ。

これも面白さに欠けると思ったが、周りの連中にすれば別に鉄製にする必要がないんじゃないかという。

どういう想定で使うつもりなんだと言われてしまったくらいだ。

というのも、もしも動力船を戦闘に用いるのであれば、基本的には人や物の輸送が役割となる。

この船自体を戦闘に用いるのは、動力機構型魔道具が貴重すぎるので駄目だからだ。

けれど、もし万が一にも船が襲われたときに攻撃を受けるならば、弓矢での攻撃が一番あり得るだろう。

その場合、鉄で覆うだけでも弓の攻撃の大半は防げるので、すべてを鉄で船を作る合理的な理由というのはないだろうと言われてしまった。

もし、今後この鉄の覆いで防御力を高めた船では対処できない事態になった際には総鉄製の船を考えてもいいのではないか。

ということなので、現状では動力鉄板船とでもいうかたちに落ち着いたわけだ。

ちなみに、魔法陣による錆防止は実現できたので、この鉄板船にはそれが施されている。

「まあ、いいか。中身はともかく見た目はかなり異質で目につくしね。とりあえず、ガリウスたちにはこの動力鉄板船を量産してもらおうか」

「分かったでござる。あと、早めにバルカ製鉄所にも川を接続してほしいでござる」

「了解。工事を急がせるよ」

今、ものすごい勢いで川の工事をさせているから、ある程度期間が短くなっているはずだ。

まあ、船づくり自体は地上でできるし、同じ船を作るだけなら今の状態でも問題ないだろう。

「けど、いずれは海にまで船を持っていきたいな」

「海、でござるか?」

「そう。ガリウスは海ってみたことある? グルー川やほかの川も相当な水量があるけど、もっと広範囲が水だけでできているって話だよ。しかも、普通の水じゃなくて塩水らしい」

「見たことはないでござるが、知ってはいるでござるよ。しかし、海でござるか。もしそこまで動力船をもっていくならば、帝国の勢力範囲に入ってしまうでござるな」

「帝国か。海に面した土地を広く領土にしているんだったな。たしかに、海に行けば帝国とは関わることになりそうだね」

「そうでござるな。しかし、海での船は川とはまた少し事情が違うらしいというのを以前聞いたことがある気がするでござる。そうなれば、また新たな動力船を考える楽しみがあるでござるな」

いずれは海に船を浮かべてみよう。

俺はグルー川に浮かべたばかりの新しい動力船を前にして、ガリウスとそんな話をするのだった。