軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヘイル・ミディアムからの手紙

「アルフォンスくん、ヘイル・ミディアム殿から手紙が来ていますよ」

「ヘイル・ミディアム? それって確かあれだよね。グルーガリア軍を率いていた【流星】の使い手の親父のことだよね、ローラ?」

「はい。そのとおりです。グルーガリア国からアルフォンスくん宛てに届いていますから間違いありませんよ」

ローラからそう言って手紙を渡された。

なにかようだろうか?

ヘイルとは以前国境付近で戦って捕虜にしてから、別に連絡を取り合っていたりしたわけじゃないんだけどな。

どれどれと手紙の中身を確認してみる。

「へー。なるほどな」

「どういった内容ですか? オリエント国にたいしてグルーガリア国からなにか要件があるのでしょうか?」

「いや。これは俺個人宛みたいだね。というか、バルカ傭兵団団長に宛てての手紙だったよ」

「バルカ傭兵団への手紙、ですか? そういえば、新バルカ街のほうではまだ傭兵団が健在でしたけれど、そちらにということですよね?」

「そうそう。ヘイル殿はどうやら傭兵を雇いたいってことみたいだね」

「ええっと、傭兵団宛てに用事というのならばそれはそうでしょうけど……。え、もしかして受けるつもりですか、アルフォンスくん?」

「うん。きちんと報酬は支払うと書かれているから、仕事を引き受けてもいいかなって思っているけど。なにか問題あるの?」

「ありますよ。アルフォンスくんは国防長官なんですよ? 他国に介入する気ですか?」

「もちろん。バルカ傭兵団はバルカ教会と密接に関係しているからね。信徒を助けるためには自ら血を流すことをいとわないんだよ」

俺の言葉を聞いて、ローラが困った顔をしている。

グルーガリアから届いた手紙の内容は、バルカ傭兵団と契約を交わしたいというものだった。

きちんと訓練された傭兵を五百人、二年契約でということだそうだ。

どうやら、グルーガリアは結構困った状況にあるみたいだ。

俺が指揮するオリエント軍と国境付近で戦ったグルーガリア軍。

その際は、五千人ほどの規模の兵がいたが、こちらとの戦いで多くの人が命を落とした。

俺がノルンを使ってたくさんの人間の血を吸い取ったのだからそれは間違いない。

そして、その大敗北のあとのことだ。

普通なら、そこまでの数の兵が壊滅するくらいの負けをしたら、国土も蹂躙されてしまうものだと思う。

が、グルーガリア国は荒らされはしていない。

というのも、その戦いが終わった直後にオリエント国は周辺国から次々と攻撃されたからだ。

そちらへの対処のためにグルーガリアまで攻め込むことはなかったのだ。

その後、オリエント国とグルーガリア国は代表同士が話し合い、講和を結んだ。

金銭的な保障はあれども、今後数年間は相互不可侵を決めたのだ。

が、それはあくまでも二国間の話でしかない。

オリエント国とグルーガリア国はお互いに攻め合わないことは約束したが、ほかの国はそれとは関係ないのだ。

つまり、今、グルーガリア国は他国から攻められそうになっているのだという。

そして、それに対して対処する力がグルーガリア国にはない。

そこまでの兵力が回復しきっていないからだ。

一騎当千の弓兵がいる国だが、その数を再び元に戻すには相当な時間がかかることだろう。

今、このまま攻められるとまずい事態になる。

そこで、どうしても他勢力にたいして救援を頼むしかなくなってしまった。

が、どこに助けを求めるかは重要だ。

下手に大軍を出してもらって助けられれば、それは借りとなる。

もしも借りが一度ですめばいいが、何度もそれが重なれば返しきれない大きな借りとなってしまう。

なので、他国に軍を出してもらうのは最終手段にしたかったのだろう。

で、白羽の矢が立ったのが俺の持つバルカ傭兵団だったというわけだ。

オリエント軍ではない。

オリエント国が持つ軍ではなく、俺が個人的にもつバルカ傭兵団に仕事として依頼を出す。

傭兵の仕事は頼まれ戦のような戦場に駆り出されることもあれば、数年契約で傭兵を借り受けることもある。

今回は二年間、五百人の傭兵を金で買い、いつでも使える戦力として置いておき、多分使いつぶすつもりだろう。

普通に考えると、オリエント国防長官であり、護民官でもある俺が個人的な私兵でもある傭兵を貸し出すことはない。

そう考えるのではないだろうか。

だが、そこは向こうもしっかりと調べてきたようだ。

それは、バルカ教会についてだ。

ヘイルは俺がバルカ教会をオリエント国以外にも増やしたいと考えていることをどこかで聞いたようだ。

そして、そのバルカ教会とはなにかを改めて調べた。

その教義もどんなものかは重要だったとは思う。

が、それよりもヘイルの注意を引いたのは、バルカ教会の信徒というのは魔法が使える者である、と規定されている点だ。

魔法、それはアルス兄さんが東方に広めたものだ。

呪文を唱えれば規格化された魔術が使える魔法。

それを使える者はすべてバルカ教会の信者であり、そして、バルカ教会は信者を助けるためには力を惜しまない。

つまりは救済のためには武力の行使も辞さないというわけだ。

ここに目を付けた。

きっと、今頃はハンナのもとにも手紙が届いているのかもしれないな。

グルーガリア国も魔法を使える者はすでにいる。

それだけの広がりがある。

なので、バルカ教会の教義上では信者にあたる我々を助けてくれというわけだ。

そして、ヘイルはこの傭兵団への依頼に際して、バルカ教会に入信する準備があるとも手紙には書かれていた。

面白い提案だと思う。

だって、オリエント国議長のアイは自国内の内政に注力する姿勢を保っているから、オリエント軍を積極的に外に向けて使う予定はないからだ。

だが、バルカ教会を通した傭兵派兵はオリエント国とは切り離して行動できる。

十分な報酬があり、グルーガリア国にも新しく教会を建てて布教活動ができるようになる可能性があるのであれば、断る理由もないだろう。

というわけで、俺はヘイルの手紙に了承の返事を送ることにしたのだった。