軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

失敗は成功のもと

「どうでござったか、アルフォンス殿? 拙者の受けた報告では、さっそく転覆したようでござるが」

「ああ。どこまで速くなるかをみてみたくて加速したら失敗したよ」

「ふむふむ。それはアルフォンス殿の感覚でどの程度の魔力量や速度だったのでござるか? 水の流れと船の角度はどうでござったか? 舵を切っていたのか、そうでないのか、あるいはほかにどんな失敗をしたか聞きたいでござるな」

「なんかずいぶん俺の失敗談に興味津々だね」

「もちろんでござるよ。アルフォンス殿には気を付けて乗るようにとは言ったでござるが、そういう失敗自体は貴重な情報でござるからな。なにをどこまでやれば失敗するのかというのは大切な情報なのでござるよ」

「へえ、そんなもんなのか。いいよ、じゃああの試作動力船で数えきれないくらいやった失敗を一から十まで説明してあげる」

「心して聞くでござるよ」

ガリウスが作った動力船。

アイの用意した動力機構型魔道具の性能を確かめるためにも作ったそれで、俺は遊び倒した。

そうして、最終的にはぶっ壊してしまった。

バラバラに大破した試作動力船を回収して、それを持ち帰った俺にたいしてガリウスがどのくらい怒ったり悲しんだりするかと心配したが、どうやらそういう感じではなさそうだ。

壊れたことも別に怒るようなことではなく、それ自体が重要な研究資料になるのだという。

俺が話した船の操縦について聞くガリウスの顔は真剣なまなざしだった。

まあ、あまりにも乱暴な運転だとは言われたのだけれど。

「しかし、なるほど……。まさか、そんな使い方をするとは思いもしなかったでござるよ」

「ん? どれのことを言っているんだ?」

「アルフォンス殿が魔力で船を覆って急旋回したという話のことでござるよ。計算上と拙者の試運転時には、あの動力と回転羽の動きではそこまでの急旋回はできないはずでござったが、まさか船体に魔力を与えることで、通常時よりも旋回性能が上がるとは思いもしなかったでござる」

「そうか? 自分の肉体を魔力で満たせば身体能力が上がるんだから、船に魔力を与えたらそういうこともあるんじゃないかな」

「なるほど。魔力量が多く、魔力の扱いに慣れているアルフォンス殿だからこその発想でござるな。拙者などではそのように魔力を使うことすらできないでござるからな」

「まあ、普通の人には無理かもね。ていうか、これがなにかの参考になるの?」

「そうでござるな。役に立つかどうかは分からぬでござるが、発想自体が面白いでござるからな。旋回性能は別にして、船体に魔法陣を追加することも検討してみるのもいいかもしれないでござる」

「魔法陣? 船にそんなのを描く気なのか。けど、性能向上とは別ってどういうことだろう?」

「たとえばの話でござるが、以前話していた錆止めに使えるかもしれないでござる。実はオリエント魔導組合の加入者のひとりがそういう金属に使える魔道具の研究を前からしていたのでござるよ。魔石と魔法陣を船体にも組み合わせることで、鉄の船が錆びることを防げるかもしれないでござる」

なるほど。

そういう方法もありか。

っていうか、そんな研究を前からしているやつもいたんだな。

オリエント国に魔道具作りの基礎を教えてからは職人たちが独自で自由にいろんなものを作っていたからそういうのもあったようだ。

魔道具だったら実用性があろうがなかろうが高値がついて売れる状況だったからこそ、好きに研究していたんだろう。

ガリウスがその金属に対する魔法陣について研究していた職人をバルカ製鉄所に呼び、さらにそいつの知り合いの職人たちもがこの地に来た。

そいつらも新しい動力船に興味を持ったようだ。

毎日のように船に動力をつけては、ああだこうだと言い合っている。

そして、俺はそいつらが作った試作機を実際に使って水上を走らせることが何度もあった。

ほかの人が試作動力船の性能を確かめるのと、俺が使うのでは多少違いがあるらしい。

やっぱり魔力量やその扱いが全然違うからだろう。

俺が無茶苦茶な運転で次々と試作動力船を転覆させ続けているが、研究者たちにとっては全く気にならなかったようだ。

というのも、動力機構は四枚羽のようにアイが観測し続けているというのがある。

俺がグルー川で船に乗るときにはアイに見てもらっていて、どのくらいの回転数まで上げたら、どういう状況で船がどうなるのかを正確に把握することができたからだ。

きっと、今だけなのかもしれないな。

魔力を注げば注ぐほど、動力機構が働いて回転羽の回転数が上がるのなんて。

多分、実用化する段階になったら、回転数の制限でもついて、転覆する可能性のある危険な回転数にまでは上がらないように設定されたりしそうな気がする。

なので、俺はしばらくの間、船で遊びまくっていた。

そうして、冬が終わり、春が来る時期にはそれなりに実用できそうな動力船が完成したのだった。